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異世界転生の砦姫  作者: 姫都幽希
終わった世界の後日談
62/65

これが本当の最終回~最後は皆で一緒に!~


 ここは俺の創った世界。

 どこまでも広がる草原。

 そのなかに突如草のはえていない広場がある。

 置かれているのは長机。

 白いテーブルクロスが掛けられ、上には沢山の料理、飲み物、お酒何かが置かれている。

 まるで、これから宴会が始まるかのような用意である。


ーーーーーー


「お兄様、早く早く!」


 俺はシャルロットに手を引かれ、朝礼台のような台に登り、更に酒の注がれたコップを持たされた。


 回りを見渡す。

 あちらこちらに人がいて、皆が俺を注目している。

 その目からは乾杯はよはよ、と言うよりはオーラがすごく出ている。

 それはもう、人を殺せそうなほどに。


「お兄様、早く乾杯を!」


 そう急かすなシャルロット。

 懐かしい顔ぶれが多いんだから、少し位感傷に浸っても良いだろうが。


「えー、取り合えず紹介はしません!

 自分達で会話して仲良くなってください。

 それでは」


 皆でいっぺんに叫ぶ。


『乾杯!』


ーーーーーー


 懐かしい顔を見ながら広場を歩く。


 目をつけたのは広場の真ん中。

 机が退けられて、そこに二人がたっていた。


「なあ、お前の名前は?」


 一人はハンニバル。


「人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るべきではないの?」


 もう一人はユリーカ・ナディア。


 ハンニバルは背中から剣を抜き、ユリーカも腰のレイピアを抜く。


「俺の名前はハンニバル。

 ミシェル様第一の騎士だ」


「私の名前はユリーカ・ナディアよ。

 ナディア伯爵家長女にして、シャルルの……強敵ともってところかしら?」


 ユリーカさん、痛いです。

 言動が、痛いです。

 強敵ともww。


「「いざ、尋常に勝負!」」


 ガキンガキンと剣から火花が飛び散る。

 あれだけぶつけ合っててレイピアは折れないのだろうか?


ーーーーーー


「パルーシャ公爵令嬢の伴侶にふさわしいのは俺だ!」


 皆さんもうお忘れでしょう。

 我が国の王子、ガードメール。


「いや、僕こそ彼女の伴侶にふさわしい」


 ほとんど出番がなく、名前さえも本編で出してもらえなかった隣国の王子。

 名前はバレン・ルクレーン。


 二人は、どちらがシャルロット(俺が中にいた方)の伴侶にふさわしいかを言い争っている。

 いや、どっちも相応しくねーよ。

 むしろ性別男じゃ認めねーよ。

 女なら、少し考える。


ーーーーーー


 何なんだコイツらは。

 喧嘩ばっかしてんじゃねーか。


 さっきからカエサル(貧民街にいた方)とカエサル(ガイウス・ユリウス・カエサル)が名前が同じだからってことでガンつけあってるし。


 向こうではいつもと同じようにフィッシュが騒いでるのをノーベルが止めてるし。


 また別の方ではニーベルとアリーシャ二人が闘茶(こっちの世界では紅茶を使う)をしてるし。


 全く。

 皆羽目を外しすぎだな。

 でも、懐かしい顔が多い。

 世界を作り直したときに、プシュケーを居なかったことにしたから因果が変わって会えなかった奴等も沢山いる。

 そんな連中も皆ここに居るんだ。

 懐かしくない筈がない。


 そんなことを考えているとシャルロットが泣きながらこっちに走ってくる。


「お兄様、お兄様~!

 ど、ど、ど、ドッペルゲンガーが!

 私、死んじゃうんでしょうか?」


 後ろに、もう一人のシャルロットを引き連れて。


 白い髪の毛、赤い目。

 基本パーツはどちらも変わらない。

 でも目つきや動き、細かい癖なんかで、全く別人に見えてしまう。


「やあ、ミシェル・パルーシャ。

 いや、白銀山一樹と言った方がいいかな?

 随分と挨拶が遅れたね」


 挑戦的な笑顔。

 ああ、やはりこいつは。


「はじめまして、いや久しぶりかな?

 シャルロット・パルーシャ。

 いや、白銀山一樹」


 同じような笑みを浮かべて挨拶を返す。


「お、お兄様?

 何でそんなに喧嘩腰なんですか?」


 喧嘩腰なつもりは無いんだが。


「まあ、今日は無礼講だ。

 仲良く行こう」


「だな」


 俺と俺が二人でシャルロットの肩を持ち上げながらテーブルに歩いていく。


「あの、お兄様?ドッペルゲンガーさん?

 何で私を抱えて?

 え?

 ちょ、待っ……」


ーーーーーー


 夜も更けてきた。

 喧嘩をしていた連中も、食事をしていた連中も、今は机を片付けてキャンプファイヤーを囲んでいる。


「右、右、左、左、前、後、前、前、前」


 何を踊っているかわかっていただけたことだろう。

 そう、ジェンカだ。


 さっき喧嘩をしていた連中が肩を組み、足を揃えて踊っている。

 皆のテンションは最高潮になっている。

 ああ、こんな楽しい時間が。


 皆が笑いながら踊れる今が。

 皆が喧嘩をしながら、笑える今が。


 いつまでも続けばいいのに。


 でも、皆この時間はもう終わりだと気づいている。

 時計の針が二本とも真上に向かおうとしている。


 シンデレラの魔法は深夜の十二時に解けてしまう。

 それと同じように、かみさまのかけた魔法も十二時に解けてしまうのだ。


 あと十分。


 あと五分。


 あと一分。


 あと三十秒になった瞬間に、大きく息を吸う。


「せーの!」


 この夢も起きれば消えてしまう。

 その寂しさを少しでもまぎらわせるために、皆で声を張り上げる。


『さようなら!』


 魔法は、解けた。


ーーーーーーーーー


 魔法学園。

 そこは今、朝の喧騒に包まれていた。


「シャルル様、おはようございます。どうしたのですか?嬉しそうな顔をして」


 アリーシャが、主であるシャルルに聞く。


「いや、面白い夢を見たものだから」


「そうでしたか!私も今朝はいい夢を見たんです!どんな夢かは忘れてしまいましたが……。まあ、きっと良いことがある前兆でしょう!」


 これは、プシュケーが現れる二週間前の話。

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