後日談ー野良猫(みたいなの)拾いました①ー
俺は六歳になった。
今日はちょっと旅行だ。
または社会科見学。
場所はちょっと貧民街まで。
とは言っても貧民街はパルーシャ領にはない。
だから隣の国の貧民街まで行ってくる。
何で国内の貧民街に行かないかって?
だって国外の方が近いんだもん。
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隣国の貧民街。
「うわ、きったねー」
なんかこう、前に見た路地裏みたいなのを想像してたけど、来てみたらインドの方のスラムみたいなところだった。
国の気候が乾燥しているせいか、腐った死体は落ちていない。
まあ、干からびた指みたいなのとかが落ちているけど。
周りには少し崩れかかった石造りの建物。
あちらこちらに渡されているロープのようなものに布がカーテンのようにかけられてテントのように雨風を最低限しのげるようになっている。
向こうから来る薄汚い格好の男が肩をぶつけていく。
それを後ろにいたハンニバルが捕まえ、持ち物を確認する。
「チッ、何も盗んでねーよ」
結果としては、何も盗んでいなかった。
というか持ち物を持っていなかった。
「だから盗んでねーよって言ったろーが。
貧民街の人間はものを盗む相手くらい選ぶ。
あんたみたいな国外の、しかも公爵級の人間はものを盗むよりも、取り入った方が利益がでかいからな」
「ならば、何故ぶつかった?」
そこまで考えるのであればぶつからないように注意するだろう。
「まあ、後一分ほど待て。
目の前の通りでヤバイことが起こるから」
言われた通りに目の前の通りを見る。
すると、ほんの三十秒ほどで数十人のゴロツキたちが集まり、闘争を始めた。
「あれはこの近くを拠点にしてるゴロツキの集団だ。
前棟梁が三日前に死んで、跡目を狙ってあちこちで闘争が起こっている。
奴らはアホだからあんた達みたいな貴族も巻き込む。
気を付けた方がいいぞ」
じゃーな、と去って行こうとする彼に声をかける。
「貧民街の案内を1日で金貨1枚。
態度がよければ領に連れ帰って職を手当てしよう」
その瞬間、あり得ない速度で目の前に彼が戻ってくる。
「それでは案内をしましょう。
あちらは魔道具店。
怪しいローブのババアが店主をしています。
あれは薬屋。
どっちかと言うと麻薬屋と言った方が正しいですね。
砒素、青酸、唐辛子、媚薬、自白剤、洗剤など、ヤバイ薬から普通の薬まで、何でも揃います」
変わり身早っ!
しかも口調まで丁寧になってる。
まあ、案内人もできたし、見物と行こうか。
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しばらく行くと子供が沢山いる場所に着いた。
手にはお昼のサンドイッチ。
「この辺の子供は手癖が悪いから気を付けないと巾着に穴が空いてるぜ」
口調は元に戻った。
「まあ、殺してまで奪う何て奴はほとんど居ないからな。
近づかれなければ危険はほとんど無い」
見物をしながらゆっくり歩く。
何か周りの子供の視線が痛いから、近くの屋台で鳥串をあるだけ買って一人一本づつ配る。
「ミシェル様は結構優しいな。
バルとも仲良くやってるらしいし」
ハンニバルと彼は知り合いだったらしい。
名前はカエサルと言うらしい。
「だろう、サル。
ミシェル様は俺を罰しない所か俺を雇ってくれたんだ。
心が狭い訳がない」
そんなに誉められると照れるじゃないか。
そんな雑談をしながら貧民街の奥まで歩いていく。
ここは基本的に平民街に近いほど綺麗に、奥に行くほど汚くなる。
「さて、ここからが一番酷くなる。
無法者が闊歩し、貴族様でも同じ貧民でも、殺して奪って生き血を啜る奴等ばかりの所だ。
さっきみたいな同情はやめておいた方がいい」
続きます。




