後日談ー黒い跡継ぎー
後日談①です。
ーパルーシャ公爵の日記よりー
我が家に初めての子供が生まれた。
髪は黒で目も黒の珍しい子供だ。
一部の人間は不吉だと言っていたが、可愛い子供だ。
ミシェルと名付けて大切に育てよう。
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すごい息子だ。
三歳で邸への侵入者を捕まえてしまった。
どうやったんだろうか?
私に似ずにすごい子供だ。
しかも自分の手下にしたいと言い出した。
まあ、どうにかなるだろう。
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私の息子は天才なんじゃないか。
私が風邪で寝ているときに内政関連を全て受け持ってくれていたらしい。
まだ六歳なのにこんなに親孝行をしてくれるなんて。
だが親い年齢の友達が未だにできていない。
ダンスホールでも大人と問答をしているくらいだから取っつきにくいのだろう。
まあ、優秀なミシェルの事だからすぐに友達も出来るだろう。
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ミシェルが貧民街から少女を一人拾ってきた。
専属メイドにしたいと駄々をこねている。
まあ、ミシェルの我儘は全然聞いたことが無いし、今回位は良いだろう。
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目が覚めると、知らな……くはないな。
今まで十年ほど過ごした部屋の天井だった。
此方を覗いているのはクドリャーフカさん。
黒髪紅目のメイドさん。
厳しそうな無表情メイドに見えるけれど、表情は薄いものの豊かで可愛いものに目がなく、しかも仕事は完璧というあらゆる意味、主にキャラ立ちという意味で、最強のメイドさんだ。
おおっと、紹介が遅れてしまった。
俺の名前はミシェル・パルーシャ。
パルーシャ公爵家長男で元シャルル・パルーシャの転生者、白銀山一樹だ。
お久しぶり。
頭の中には現在も偉人、大罪人が沢山いる。
というか、増えた。
400人程、プシュケーを封印したら増えた。
まあ、そう言うわけでこれからはミシェル・パルーシャとしてこの世界を生きていく。
さて、する事と言えば先ずはこれ。
生まれて三年後に侵入してくる奴の捕縛。
これは前世では無かった事だ。
犯人はハンニバル・パドーリャル。
炎のように赤い目と髪をした少年。
実は隣国の王子だったものの、大臣によって手引きされた誘拐犯に連れ去られ、貧民街で暮らしていた。
しかし彼は前の世界ではプシュケーに飲み込まれ死んでいた。
ただ、今回はプシュケーがいないから飲み込まれる事もなく生き残って、とある人物の依頼により我が家の魔導書を盗み出すためにここに来る。
依頼人は、まあ後で説明しよう。
丁度忍び込んで来たみたいだし。
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暗い邸のなかを黒い影が駆け抜けていく。
影の名前はハンニバル。
とある人物の依頼により、パルーシャ公爵邸の魔導書を一冊盗み出しに来たのだ。
彼は驚いていた。
公爵邸の中は警備どころか警報魔法さえも無く、人の気配もほとんどない。
依頼人は彼に金貨を前金で五枚、更に成功で十五枚渡すと言っていたが、金額に見合わない簡単さだと感じていた。
……泳がされているとさえ気付かずに。
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書庫に忍び込み、あまりの本の多さに彼は驚いていた。
これから探す量に気が滅入った瞬間、机の本に目が行く。
まさに依頼の本であった。
彼は流石に不振に思う。
ここまでは全て泳がされていたのではないか?
……まあ、気付いたところで今更過ぎるのだが。
「さて、やっと気付いたか。
気付かずに行っちゃうんじゃないかと思ったぞ」
現れたのは五歳くらいの少年だった。
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「気付かずに行っちゃうんじゃないかと思ったぞ」
普通はハメられたことに気づくだろ。
どんだけ鈍いんだ。
「さて、君にはいま二つの選択が残されている。
1つは大人しくお縄にかかって不法侵入で処刑される。
もう1つは俺に忠誠を誓うこと。
どちらがいい?」
まあ、俺なら強行突破するけどね。
こんなガキはどうにでもなるとでも思ってるんだろ。
まあ、普通のガキならば、ね。
「いや、俺は3つ目の選択をさせてもらう。
強行突破をな!」
「不可能だよ、それは。
君はしょせん貧民街で育っただけのただの青年だ。
何かの犯罪組織で特別な訓練を受けたわけでも騎士崩れでもない。
未来もなければ明日食う飯にも困る始末。
だが、俺の元に来れば仕事をやろう。
飯の保証をしよう。
生きる権利と理由をやろう。
さあこちらに来い、ハンニバル」
これでやることはやった。
後始末をすればおしまいだ。




