決断~英雄の名を背負った青年~
『悪いけど、ここは俺の力で切り抜けさせてくれ』
ズドォーンと砂ぼこりが舞う。
不味いな。
あれは受け身も出来なかったんじゃないか?
ほんの数十秒で砂ぼこりが晴れる。
そこにいたのは、
「悪いが、この戦い、勝たせてもらう!」
大剣を降り下ろしたオーベロンとそれを紙一重でかわしたジークフリートだった。
攻撃を警戒して大きく後ろに飛ぶオーベロン。
それと同時に、態勢を建て直すためにジークフリートも下がる。
「よくかわしたな、俺の渾身の一撃を」
最初に口を開いたのはオーベロン。
「ああ、まあな。
ちょっと負けられない理由ができてね」
それにジークフリートも答える。
「ほう、負けられない理由とは?」
「ちょっとうちの姫様が、俺たちのことを嘗めすぎているようでな」
その言葉に俺はハッとする。
確かにそうだ。
さっきのジークフリートにしたこともそうだ。
自分がいないといつまでもなにもできない奴だと思っていたが、実際にオーベロンの一撃をかわしてみせた。
俺は過保護すぎたのだろうか。
ジークフリートを、アリーシャを、ニーベルを、クリムを、トレイズを、リアを、マモンを、それに皆も。
確かに最初はなにも出来ない子供だったかもしれない。
でも、既に彼らは俺に追い付けこそしないものの、一歩づつ近づいてきている。
俺は、過保護すぎたんだな。
ーーーーーー
『ジーク、さっきは済まなかったな。
お前を甘く見ていた』
『全く、本当だよ。
確かにお前は俺等よりも長く生きてるかもしれない。
だが、それはお前が前にいるだけで俺らが下にいる訳じゃないんだ』
全くだな。
さて、観戦をしようじゃないか。
今度は勝たせるためじゃなく、見守るために。
「お話は終わったか?」
オーベロンが聞く。
あっちゃー、バレてたか。
「問題ない。
むしろ話してるときに切りかかってきてもよかったんだぞ」
ジークが刀を構え、オーベロンも大剣を構え直す。
そのまま向き合い、じっと睨み合う。
一分程経った途端、いきなりオーベロンが動き出す。
大剣を真上に振りかぶり、渾身の一撃を繰り出す用意をする。
そのがら空きの胴にジークが刀を走らせ、決着が付いた。




