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少年魔術師と契約獣  作者: あさぎ つくも
少年魔術師と契約獣の出会い
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6



そのことは、バジルドに引き取られてからすぐに教えられた。

だから、ルークは、高位の召喚獣を喚ばなければならない。

「----怖いんです」

「怖い?」

「あの日のようになってしまうのでは・・・と」

脳裏を横切るのは、思い出したくない記憶。

愚かであった自分の昔の姿。

前があるからこそ、次週の召喚の儀、そしてバジルドの弟子としているのは怖い。

ぽつりと自分の気持ちを吐露すると。やれやれとバジルドは肩を竦める。

「全く、この愚息は・・・」

「・・・」

「まぁ、お前の気持ちも分からなくはない。・・・だがな、忘れるな。お前はこのバジルドの息子だ」

あの日、あの時見つけた原石なのだから。

心の中で呟いたバジルドは、立ち上がりルークも立たせる。

自分より頭一つ分低い息子を見下ろし、バジルドは目を細めた。

自信のない弱いように見せてその実、年齢の割には強いということをバジルドは知っている。

あの日のことが枷にはなっているが、それから解放された時にはどれほどの力を見せてくれるのか、未知数だ。

「-----それに、あちらも黙ってはいないだろうしな」

「?なんて言いました?」

「・・・腹が減ったな、と。部屋に帰って飯にしよう」

「・・・まだ、早いと・・・準備できていないと思いますよ?」

「何、家の使用人は俺のことをよくわかっているからな。大丈夫だ」

「・・・」

声を弾ませながら、家の方に歩いていく養父の後ろをゆっくりと追いかけながらルークは苦笑する。

バジルドに問い詰められた学校での自分の身の振りまいについては彼に話したことも確かに理由だった。

それは、言葉にもしたくない昏い昏い物語。おそらく、一生自分の中だけに秘めていくだろう。

(------面倒くさいことは嫌い、っていったら雷が落ちてくるだろうな・・・)

比喩なんかではなく、本物が。

元来の性格ゆえか、あまり物事に執着もなかった。バジルドが思うような人間ではないとルークは思っている。

それでも、彼は期待してくれている。その期待には応えたいとも確かに、思っている。

(でも、面倒事は回避したいな・・・)

無理だとは分かっていてもそう思ってしまうのだ。

部屋に帰ってシャワーで汗を流し、バジルドの言う通りに彼のことをよく知っている使用人たちは豪華な夕食を準備してくれていた。

「流石だ」と褒めながら嬉しそうに食卓につくバジルドは、完全に団長の皮を脱いでいた。

一気にグラスに注がれたワインを飲む。すぐに新しいものが注がれ、あっという間に一本飲み切ってしまう。

「師匠、飲みすぎですよ」

「いいんだ。久しぶりの休みなんだから」

「・・・・二日酔いになっても知りませんよ」

あまりお酒が強い方ではないのに、このままのペースで行ってしまえば二日酔いは確実だ。

こんな戦闘騎士団、団長の姿は、恐らく同僚の人たちは知らないだろう。

実際見てしまった時には卒倒してしまうかもしれないな。

その場面を想像して、ルークは小さく笑う。

それに気づいたバジルドは首を傾けた。

「?どうした?」

「いえ、なんでもないです」

「?まぁ、いい。お前も飲め」

「まだ、未成年です」

「あーそうだったか・・・」

つまらん。とぼやくとバジルドは、またグラスを煽ったのだった。

案の定翌日、二日酔いに悩まされることになるのだが、それはまた、別の話である。

しかも、休みをもぎ取ったのは一日だけだったらしく、真っ青な顔で騎士団に出勤していった養父にルークは苦笑するしかない。きっと職場に着いたら無表情な団長の皮を被るんだろうな・・・と思いながら。





久しぶりに養父に会えたからなのか、機嫌がすこぶるよかったルークは、久々に学園に登校後、自分の教室に向かった。

すでにほとんどの生徒が登校している。HRまでもそんなに時間はない。

しかし、急ぐこともなくのんびりと自分の教室に足を踏み入れたルークは、一瞬静まり返った教室内に内心苦笑する。

「お、珍しい。ルークが教室に来たぞ」

「はよー」

次の瞬間には、笑いの中ルークはクラスメイトに迎えられる。

「おはよう」

ルークも挨拶を返して、自分の席についた。

「本当、珍しいじゃないか?どうしたんだ?」

「サイラス、俺だって偶にはこんな日もあるんだよ」

ルークの席の前に陣取ってサイラスは嬉しそうだ。

いつになく上機嫌な親友にサイラスは首を傾ける。

「昨日は、体調悪そうだったのに、えらく変わったな・・・いいことでもあったのか?」

「まあな」

サイラスにも、自分の養父のことは話をしていない。

だから詳しいことは、話さず適当に流す。

彼も特に深く聞いてくることはなかった。

「ルーク、サイラスおはよー」

「ルークに朝から会えるなんてラッキーね」

わらわらと二人を取り囲むように女子生徒がやってきた。

口々に挨拶をしてくる彼女たちに、ルークは笑顔で応える。

「おはよう」

「っ、最近中々教室に来てくれないから寂しかったのよ?」

「そう?ごめんね?」

「これからは、毎日ちゃんと教室にいてよね!」

顔も整っていて人当たりも悪くないルークは女子生徒には人気である。

サイラスも同様であるが、彼女たちは久しぶりに教室にいるルークにチャンスだと言い寄る。

女子生徒たちの気持ちも分からなくはないサイラスは、苦笑しながら見守り、ルークはにこやかに、しかし半分以上の話は聞き流していた。

「おや?誰かと思ったら、ルークじゃないか」

わざとらしい驚いた声が割って入ってきて、ルークとサイラスはわずかに眉を寄せる。




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