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少年魔術師と契約獣  作者: あさぎ つくも
少年魔術師と契約獣の出会い
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キインッ、キインッと剣が交じり合う音と風を切る音が激しくぶつかり合う。

「っ」

重い斬撃をルークは、防ぐことでいっぱいいっぱいである。

そんな彼に、無表情なままバジルドは剣に込める力を強めていく。

「防戦一方だな。ルーク、切りかかってこい」

「っむ、無理・・・っ」

「ほう。しらばくれる気だな」

ガインッと派手な音と共にルークは吹き飛ばされた。

受け身を取る余裕もなく地面に叩きつけられる。

「ゲホッ」

腹部を押さえながらルークは上半身を起こす。

吹き飛ばされる直前に足蹴りを食らい、せき込みながら痛みをやり過ごす。

そんな姿のルークを見たバジルドは、肩に剣を抱えながら呆れたように息を吐く。

「なんという体たらく。少し見ない間に弟子は、『落ちこぼれ』になってしまったようだ」

「・・・っ」

「また、一からやり直しか?おいおい、出来の悪い弟子を持つほど俺は暇じゃあないんだよ・・・なぁ、ルーク」

目の前に切っ先を向けられ、ルークは息を呑む。

少し動けば当たってしまう。

「剣を持て・・・・”あの月夜の日”を忘れたのか?」

「っ!!」

ガインッと剣の音と共に、今度はバジルドが吹き飛ばされた。

ルークと違いすぐに体勢を整えて地面に直撃することはなく、ひらりと降り立つ。

「・・・やれば出来るじゃないか」

「ハーハー・・・っ」

ゆらりと立ち上がり、ルークは肩で息をする。

ギロリとバジルドを見据え、剣を構える。

怒り、悲しみ、嘆き・・・さまざまな感情がルークの中に渦巻き始めた。

高まっていくルークの闘志に、バジルドはほくそ笑んだ。

「それでこそ、我が弟子だ。・・・・”あの月夜の日”っ」

「それを、言うな!!!」

怒号一発、ルークは地面を蹴りバジルドに切りかかった。

想定内だったバジルドは、剣を盾にしてその斬撃を易々と受け止める。

「-------忘れたわけではないだろう?」

「っ当たり前だ!」

グッと剣に力を込めたルークは、剣を薙ぎ払う。

そこから斬撃が生まれ、バジルドを襲う。

それを、茫然と見ていたバジルドは、「ふむ」と一つ頷くと剣を下げ、斬撃に手を翳した。

――――パシュンッとルークの力が込められた斬撃は容易くバジルドの手によって消滅させられてしまった。

渾身の力とは言わないが、それなりに力を込めていた斬撃をこうも簡単に打ち破られる・・・二人の力の差は歴然であった。

ルークは、その場にガクンと膝を付き、肩で息をする。滝のように流れ出る汗が地面の芝生に吸い込まれていく。

「----力が落ちたわけではない。むしろ上がっているな」

どこか満足そうな声を出しながらバジルドは、地面に捨てた鞘を拾い剣をなおした。

そして、座り込んでいる弟子の傍まで行くと、傍らに胡坐をかくように座り込む。

「ルーク、何をおかしなことをしている?」

「・・・、おかしなこと、ですか・・」

「これを茶番と言わず、なんと言うのだ」

ポンポンと頭を撫でられて、ルークは苦虫を数匹潰したような顔をする。

今まで心穏やかではない状況であったのに、まるでそれを感じさせないバジルドのルークに対する接し方には慣れることはない。

戦闘騎士団、団長であるバジルドは、冷酷無慈悲で有名で騎士団の中では有名である。

常に無表情、笑顔なんて見たことなどない。それは、ルークに対しても同じである。稽古をつけてもらう時、仕事に行く前、帰って来た時、バジルドは冷たく氷のように感じる。しかし、それがなければ冷酷無慈悲などとは程遠く、穏やかな表情でルークに接してくれるのだ。まるで、本当の自分の子どものように。だからなのか、複雑な心境になってしまう。

「ルーク。学園でなにかあったのか?」

「・・・なんでですか・・?」

「お前は、このバジルドの、戦闘騎士団団長の子どもであり、弟子だ。この意味はお前のわかっているはずだ」

「・・・そうですね」

バジルドには、妻子はいない。

そんな彼の養子であり、弟子ということはルークはバジルドの後継者ということになる。

力を磨き、高め、いずれ戦闘騎士団に入団して団長の下でさらに力を洗練させていく。

それが、ルークに課せられたレールである。

ルークもそれは分かっていた。

10年前、彼に拾ってもらった時に彼の為に生きようと決めたのだから。

しかし、その決意とは裏腹に心には靄のようなものが燻っていた。

その名前を、ルークは知らない。

「----決められないのか」

「・・・分からないんです。俺は。」

何を求めているのか、レールは決まっているのに何故迷うのか。

「・・・・来週、召喚の儀があるそうだな」

「っ」

ビクリと大仰にルークの体は強張る。

そんな自分の弟子にバジルドは目を細めた。

「儀を行えるまでには知識はその頭には入っているのか?」

「・・・・全部、入っています・・・最終学年までの授業内容は一通り覚えてる。」

「ならいい。大丈夫なのか」

「----最低、下級を召喚してしまうかも、しれません・・・」

「それでは、騎士団には入れない」

「・・・・わかっています」

騎士団に入れる条件は高位の召喚獣を使役することだ。

下級など召喚してしまったその瞬間、ルークは騎士団には入団できなくなってしまう。




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