表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラージアンの君とキス  作者: 月宮永遠
2章:生きるか死ぬか
19/42

8

 シュナイゼルもあのラージアン達のように、襲いかかることがあるのだろうか……。

 床に崩れ落ちるヨシ兄の姿が、脳裏に蘇る。暴力は見たく無い。

 頬を長い指で撫でられ、びくりと肩が跳ねた。


「――夏樹」


「あ……」


 大袈裟な反応をしてしまった。

 気まずい思いで顔を上げると、額の信号を淡い紫に染めたシュナイゼルが、じっと夏樹を見下ろしていた。間近で見上げる信号には、金色の光彩が散って煌めいている。


 ――綺麗……。


 誘われるように手を伸ばして、そろりと宝石のような信号に触れてみた。ほんのりと暖かい。ひんやりとしている身体とは違う。

 触れた途端、淡い紫は濃い青色に変色した。思わずパッと手を離すと、その手をシュナイゼルに掴まれた。


「ごめんなさい! 嫌だった?」


「いや……」


 シュナイゼルは戸惑ったように、夏樹の手を離した。

 怒らせてしまったのだろうか……。

 心配になってシュナイゼルの様子を見つめていると、夏樹の視線から逃げるように、ふいと顔を背けた。

 無理やり正面から顔を覗き込もうとすると、今度は反対側に顔を背けられた。


 ――もしかして……、照れてる……?


 信号の色は、濃い青色をしている。

 もう少し明るい色合いの青は、考え込んでいる時の色だと、昨日シュナイゼルが教えてくれた。

 濃い青色はどういう状態なのか不明だが、この状況から察するに、怒っているわけではなさそうだ。むしろ……。


「シュナイゼル」


「……」


「ありがとう。昨日から、何度も助けてくれて……」


「守ると約束した」


「うん」


「あの様子では、試合どころではないだろう。明らかに準備不足だ。夏樹に審判をさせるにしても、せめてチームと選手を決めておくよう、ディーヴァに伝えておこう」


「よろしくお願いします……」


 夏樹は横抱きにされたまま、深く頭を下げた。





 スタジアムをシュナイゼルと共に脱出した後、夏樹はそのまま家まで送ってもらった。

 シュナイゼルは再びスタジアムへと戻って行ったが、夏樹は気疲れしてしまい、ベッドに横になるなり眠りに落ちた。


『マスター、シュナイゼルから通信が入っています』


 アースの声に起こされた。


「ン……」


『繋いでも宜しいですか?』


「うん……」


『夏樹。ディーヴァが会いたいと言っている。いいだろうか?』


「判った……」


 正直、今は顔を見たくないが、仕方ない。ここにいる以上、彼女の存在を無視することは不可能なのだから。

 ため息をついて起き上がると、一階の玄関に向かった。ずらりと並ぶ顔ぶれを見て、思わず怯みそうになった。

 思ったより人が、ラージアンが多い。

 ディーヴァと、その後ろにシュナイゼルと恐らくカーツェ。更にもう一体いる。かなり体格のいいラージアンで、シュナイゼルよりも一回りは大きい。額に光る三角形の信号を見て閃いた。


 ――こいつ、ヨシ兄を殴ったやつだ……!


 後じさる夏樹を見て、ディーヴァは勘違いしたように慌てて口を開いた。


「夏樹、ごめんね! さっきは本当に、怖がらせるつもりはなかったんだ」


「ディーヴァ……」


「ちゃんとチームと、選手を決めておくから。許してくれる?」


 ――ヨシ兄を殴ったのは、ディーヴァが命令したからだ。


「ごめんね、夏樹。怒らないで」


 しかし、ヨシ兄を元に戻してくれたのもまた彼等だ。

 シュナイゼルは優しいし、ディーヴァも強引ではあるが、こうして夏樹に謝りにきてくれた。全てに納得しているわけではないが、夏樹も歩み寄りを見せるべきなのかもしれない……。

 第一、ここにいる以上、彼等と過ごすより他に道はないのだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=474030588&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ