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ペガサス一家の悲劇と主人公の旅立ち

プロローグ

☆ペガサス一家の決断

それは、あまりに突然の出来事だった。

平和な時代が、なんの前触れも無く終わりを告げた。

各地は、ゾンビたちやゴブリンたちが支配するようになり、無差別殺人が繰り返し行なわれるようになり、住民たちを恐怖のどん底に突き落として行った。

被害者が、何人になったのかすら理解らない状況となって仕舞っていた。

そんな中、“比較的安全な場所”と称されていた筈のペガサス一家が暮らす大草原の周辺でも、殺人事件が度々起こるようになった。

ペガサスの両親は、“息子の聖夜はともかく、幼い娘の星羅に長旅をさせるのは、あまりにも不憫だ。”という想いから、この大草原から避難することに少なからず抵抗があった。

しかし、そうしている間にも、驚く程の猛スピードで殺人事件が拡大して行き、ついにこの大草原でも第一の殺人事件が起きて仕舞った。

さすがに身の危険を感じたペガサスの両親は、聖夜と星羅を連れて、この地を離れることを決意した。

『聖夜、星羅。こちらへいらっしゃい。』

母に呼ばれて、聖夜と星羅はリビングにやって来た。

『明日の朝早く、ここを出発するわ。良いわね。』

星羅は、住み馴染んだこの大草原を離れるのは哀しいと思っていたが、“生きるため”なら仕方の無いことだと感じていた。

☆囚われの星羅

翌日の早朝、聖夜と星羅は両親に連れられて、大草原を跡にした。

あいにくの雨模様だったが、両親の意志は固く、聖夜も星羅も覚悟を決めて翔び立つよりほか無かった。

ペガサス一家は、母の姉の嫁ぎ先に身を寄せることになっていた。

向こうの家族には昨晩の内に連絡を取ってあり、快く受け入れてもらえることになっていた。

避難場所も無事に決まり、その場所が“血のつながった従兄弟の家”だというのに、星羅は未だに不安な気持ちを抱き続けて居た。

何故なら、星羅は今まであの大草原から一歩も外に出たことが無かったからにほかならない。

もちろん、今回の避難先の従兄弟とは何度も会っているし、仲は良好だった。しかし、幼い星羅の身を案じてか、いつも従兄弟の方から、ペガサス一家を訪ねて来ていた。

今回もまた、途中まで従兄弟がペガサス一家を迎えに来ることになっていたのだ。

両親はさすがに“申し訳ない”と感じていたのだが、従兄弟側の好意を無下に断る理由にもいかず、素直に甘えて置くことにしたのだ。

ペガサス一家が山の上空付近を移動中のことだった。

突然、銃声の音が聴こえて来たかと思うと、星羅の目の前で、両親と兄の聖夜が撃たれて、地面に向かって落下して仕舞ったのだ。

星羅はショックのあまり言葉を失って仕舞った。

今直ぐにでも、両親や聖夜の無事を確認したいところだが、星羅には声を出すことが出来なかった。

それ程までのショックと恐怖が星羅の心の中を支配して仕舞ったということだ。

しかし、相手はそんな星羅の様子に気を留めることも無く、星羅に銃口を向け続けた。

そして、その銃弾は星羅の両足と翼に命中した。

星羅は痛みで意識を失い、両親や兄の聖夜と同様になす術も無く、そのまま地面に落下して仕舞った。

相手は星羅の意識が無いことを確認すると、呼吸困難に陥っている両親や兄の聖夜にトドメを差した。

星羅は両足を深く傷付けられ、大切な翼も故意的に折られて仕舞った。

山頂まで運ばれた星羅は、そのなんとも痛ましい姿のまま、両親や聖夜を殺した相手の手に寄って氷漬けにされて仕舞った。

まさに“生かさず・殺さず”の状態であった。

(あァ。どうしてなの?私は、お父様とお母様と聖夜お兄様と一緒に死ねるなら、なにひとつ恐いことなんて無かったのに・・・・・。)

そう感じて居た星羅だけに、“現実は甘く無い”ということを痛感させられて仕舞うこととなった。

星羅はどうすることも出来ず、静かに目を閉じるのであった。

☆麒麟・雷闘の旅立ち

住宅地からだいぶ離れた山里に、小さな家が立っている。

そこには、麒麟の青年・雷闘が暮らしていた。

雷闘が暮らす山里は、数年程前から急速に過疎化が進み、すべての住民たちは、“便利さ”や“暮らしの豊かさ”を求めて、住宅地街へと移り住んで行ったのだ。そんなこともあり、奇跡的にゾンビたちやゴブリンたちの襲撃をいっさい受けなかったのだ。

雷闘は、痛ましいニュースに耳を傾けながら、いつも通りに両親の遺影に線香を立てながら、静かに目を閉じて祈りを捧げた。

これは、雷闘自身が毎日欠かさずにやって来たことだ。

雷闘の父親は、勇敢な戦士だった。

亡くなったその日も、身重な妻と幼い雷闘を逃して、自分自身は仲間たちと共に、今際の際まで勇敢に戦い続けたのだ。

その結果、自らの生命と引き換えに、世界に平和をもたらしたのだ。

雷闘の母親は、そのショックから雷闘の妹の美雷を出産した。

愛らしい妹の誕生に雷闘はとても喜んだが、生まれつき身体の弱い母親は、病気がちになり入退院を繰り返すようになった。

それでも、雷闘と美雷の前では、優しい母親だった。

そんな優しい母親も、数年後に亡くなって仕舞った。

『雷闘、美雷は貴方が護るのですよ。』

母親は、最期の最期まで、雷闘と美雷を心配していた。

ふと、両親との想い出に浸っていた雷闘は目を開けると、両親の遺影の隣に飾ってある写真に目を向けた。

そこには、今よりほんの少し幼い自分と愛らしい妹が映っていた。

母親が亡くなったあの日、雷闘は“美雷は絶対に護る!”と誓い、大切に手元に置いて育てて来たのだ。

雷闘に取ってはたったひとりの血のつながった家族であり、大切な母の“忘れ形見”であった。

美雷もまた、雷闘のことを誰よりも慕っていて、誰もがうらやましく思う程、仲の良い兄妹関係を築き上げていた。しかし、愛らしい妹の美雷は、2年前のある日、突然雷闘の前から姿を消して仕舞ったのだ。

美雷の目撃情報が跡絶えた場所から、毒薬が入っていたとされる小ビンが見付かり、その小ビンに美雷の指紋しか無かったことから、“自殺”ということで処理された。

しかし、雷闘はその結論に対して、疑問を抱いていた。

何故なら、美雷の遺体が見付かっていないからにほかならない。

それどころか、美雷がその当時身に着けていた遺品や持っていた所持品さえも、なにひとつ見付かっていないのだ。

念のために、身元不明の遺体を安置している団体にも問い合わせてみたのだが、残念ながら美雷の遺伝子と一致する遺体は見付からなかった。

“自殺”として処理されたわりには、不可解な店が多過ぎるのだ。

誰が聴いても、“絶対になにか可笑しい”と思うことだろう。

雷闘自身も、“もしかしたら、何者かに意図的に殺されたのではないのだろうか?”という疑問を持ち始めた。

そこで、自分なりに調べてみると、美雷と類似した事件がここ数年の間に、各地で起きていることを突き止めた。

いずれにしろ、“自殺事件”として処理されているのだが、遺族たちはみな、そのことに疑問を抱いているようだった。

中には、姉妹が相次いで被害に遭っている事件すら有ったのだ。

このことによって、確信を持った雷闘は住み馴染んだこの山里を離れて旅に出ることにしたのだ。

その目的は、ただひとつ。

“大切な妹の美雷を捜し出すこと”だった。

(俺は、お袋の遺言通りに兄として美雷を護ることは出来なかったが、美雷を捜し出すことが唯一の親孝行だと思っている。だから、俺が美雷の行方を捜すことを許してほしい。)

雷闘は、両親の遺影に向かって深々と頭を下げた。

もちろん、これは雷闘にすべての責任がある訳では無いのだが、雷闘の中では、“美雷を護れなかった事実”は今でも深い心の傷として残って仕舞っているのだ。

雷闘に取っては“一生消えることの無いツラい哀しい過去”だった。

そして、その出来事は、“大切な両親に対する最大の裏切り行為”であるとさえ、雷闘にはそう思えて仕舞う程のものだった。

雷闘は、“必ずここに生きて帰る!”と両親と妹の美雷に誓うと、美雷に関する情報を求めて、旅立って行くのであった。

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