死者のケーキ
ねえねえ、この建物に積もっている雪、クリームみたいじゃない?
そうね。一生懸命かき混ぜたからふんわり軽くて美味しそう。
だったらあの壁はスポンジケーキみたいじゃない?ヒヨコ色のスポンジがかわいいわ。
ねえねえ、あなたはなんのケーキが好き?
私はショートケーキよ。
あら偶然、私もよ。
じゃあ、このケーキもショートケーキに仕上げましょうよ。
賛成!いい考えね。
あと足りないのはイチゴだけね。イチゴは何にする?
真赤な炎はどうかしら?
ダメダメ。せっかくのクリームが溶けちゃうわ。
紅色の落ち葉はどうかしら?
ダメダメ。この時期になると落ち葉は何処にも落ちていないわ。木の実じゃありきたりすぎて面白くないわね。
だったら人は?
人?
そうよ。己の血に染まった赤はどんなに綺麗な宝石よりも、どんなに綺麗なバラよりも美しいわ。
じゃあ、イチゴは、何個飾ろうかしら?4か9がいいわよね。
それならもちろん4よ。4は、死に最も近い数字なんだもの。あら、ちょうど誰かが森に迷い込んだみたい。
1人目のイチゴは年老いたお爺さんが…。
2人目は、若い大学生の男が…。
3人目は子連れの母親が…。
4人目は、まだ幼い女の子が…。
森の中に4人の絶叫というハーモニーが響きわたる。
さあ、あとはこのイチゴを飾り付けたら完成よ。
さっそくタナトス様にもお見せしなくちゃ。
ええ、そうね。きっと私たちをお褒めになってくださるにちがいないわ。
このケーキはどんな味がするのかしらね?
甘酸っぱいのかしら?甘いのかしら?それともやっぱり死の味がするのかしら…