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コメディー短編(異世界恋愛)

空飛ぶ伯爵令嬢

作者: 多田 笑
掲載日:2026/03/30

しいな ここみ様主催『空飛ぶ○○企画』参加作品です。

 わたくしには夢があります。


 貴族の令嬢として、伯爵家を繁栄させること……?


 いいえ、違います。


 わたくしの夢は――

「鳥のように、空を飛ぶこと」。


 誰かに話せば、いつも笑われてきました。


 それでも、わたくしは本気です。

 必ず、空を飛びたい。


 どんな方法でも構いません。


 あの大空を――飛んでみたいのです。



「リアーナ、準備は良いかい?」


 そう声をかけてきたのは、婚約者のエジソール様。


 侯爵家の嫡男でありながら、研究に没頭している変わり者です。


 わたくしの夢を話したところ、なぜか大層喜ばれ、協力してくださることになりました。


 しかし――


「エ……エジソール様……これは……?」


「これは“パタパタくん2号”だ!」


 現在、わたくしの両腕には、翼のようなものが装着されています。


「いえ、名前ではなく……。これで、本当に空を飛べるのでしょうか……?」


「ああ、もちろんだ! 崖から飛び降りて、両腕をパタパタさせるのだ!」


 ――崖!?


 この人、正気ですの!?

 それ、ただの自殺行為ではなくて!?


「あ、あの……パタパタしたところで、飛べるとは思えませんし……体力も――」


「大丈夫だ!」


 な、何なのですの、その即答……!

 なぜ、食い気味でかぶせてきますの!?


「さあ、早く飛び降りるのだ!」


 キラキラとした瞳で見つめてくるエジソール様。


 ――ごくり。


 わたくしは断崖絶壁の縁に立ち、思わず息を呑みました。


「あの……これ、本当に――」


「大丈夫だ!」


 だから、何が大丈夫なのですの!?


「さあ……飛ぶのだ……」


 じわり、じわりと距離を詰めてくるエジソール様。

 今にも突き落とされそうな勢いですわ!


「何か、言い残すことはあるかい?」


 ――遺言!?

 今、完全に遺言を聞きましたわよね!?


「あ……あの──」


「大丈夫だ!」


 もうその言葉、信用できませんわよ!?


 こんな崖から飛ばせておいて、どこが大丈夫なのですの!?

 わたくし、そんなに恨まれていましたの!?


「さあ! さあ!」


 エジソール様――


 目が……

 目が完全に、常軌を逸していますわ。


 もう、無理ですわ。


 逃げ場はありません。


 後ろにはエジソール様。

 前には断崖絶壁。

 左右は――岩。


 ええ、詰みですわ。


 わたくしは、そっと目を閉じました。


(……お父様、お母様……)


 短い人生でしたわ……。


 そして――


 ひらり。


 わたくしは、空へと身を投げ出しました。



 ――風。


 頬を撫でる、やわらかな風。


 体が、軽い。


 落ちているはずなのに――

 なぜか、苦しくありません。


 それどころか


 ――ふわり。


「……あら?」


 わたくしは、目を開きました。


「と……飛んで、いますわ?」


 そう。


 わたくしは今、宙に浮かんでいるのです。

 まるで鳥のように。


 いえ、それ以上に自由に。

 羽ばたく必要すらなく、ただ思うままに。


「ふふ……ふふふ……!」


 思わず、笑みがこぼれました。


 ――叶ったのですわ。


 わたくしの夢。

 空を飛ぶという、あの願いが。


「エジソール様! 見てくださいまし!」


 振り返り、崖の上を見上げます。


 そこには――


 青ざめた顔で、こちらを見下ろすエジソール様。


 そして、その視線の先には──


 地面に倒れている、“わたくし”。


「……あら?」


 少しの間、沈黙しました。


 理解が、ゆっくりと追いついてきます。


 つまり、これは――


「……魂だけ、飛んでいますのね」


 なるほど──


 “どんな方法でも良い”とは、言いましたけれど。


「これは……少々、想定外ですわね……」


 上では、エジソール様が叫んでいます。


「リ、リアーナぁぁぁぁ!!?」


 あらあら。

 ようやく事の重大さに気づかれたようですわ。今さらですけれど──。


 わたくしは、ふわりと空を漂いながら――

 少しだけ考え、

 そして、にっこりと微笑みました。


「……まあ、よろしいですわ」


 だって──


 夢は叶ったのですから……。

 たとえ、この身を代償にしたとしても。


「――とても、気持ちが良いですわ」


 風が、わたくしを運んでいきます。


 どこまでも、どこまでも。

 自由に。軽やかに。


 そして崖の上では――


「君の体重が予想より重かったからだぁぁ~!!」


 最低の原因分析が響いていました。


 そして、コメディーなので、わたくしは生き返りましたわ。

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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꒰ঌ企画概要໒꒱  ˚₊‧꒰ა ⇣参加作品⇣ ໒꒱ ‧₊˚ 
空飛ぶ○○企画
バナー作成:幻の飛行物体
― 新着の感想 ―
エジソール様の脳内の方がぶっ飛んでるような? (´ε` )
原因分析!(^◇^;) そこは怒っていいと思いますが。。
あはは、コメディ最強です(人*´∀`)。*゜+
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