昼メシ、作るぞ!~息子、料理の修行はじめました
コロン様主催エッセイ企画「2025振り返り」参加作品
さてさて、2025年の振り返り。
個人的に今年一番の出来事は、二月に父が亡くなったことですが。
その件はもうすでに、十二分といっていいほど別のエッセイ(https://ncode.syosetu.com/n9603ki/)に綴りました。
それ以外といいますと……、息子に料理を教え始めたこと、が、次のトピックになるかと思います。
実に個人的ですが、私にとってもいろいろと勉強になったこともありますので、この機会に簡単に綴ってみようかと思います。
我が愚息。
今年18歳の高校三年生。
卒業後は専門学校へ行く予定。
中学以来、筋金入りの帰宅部(そもそも団体で何かするのが嫌いなタイプ)で、学校が基本禁じているので、バイト経験もなし。
家と学校の往復とYouTubeの視聴で出来上がった、親の欲目から見ても頼りない、ボーッとした少年(青年)です。
受験で必死になった経験もなし、失敗したがらないといいますか打たれ弱いといいますか、そういう面が垣間見える令和の若者の一典型、なのかもしれません。
だから母は考えました。
たとえ小さな、しょーもないことであっても。
コイツに失敗と成功の経験、積ませよう。
放っておいたら寝そべってYouTube視聴しかしないこの男に、本人の発想にない何かをやらせよう。
そうだ、せめて最低限の家事を教えよう!
家事はオカンがするものと思い込むと、碌な大人にならん!
現状、まだまだ自分から積極的にやろうとしませんが、掃除機や洗濯機を扱える(単に家電を使いたいから触る、がモチベの第一にせよ)だけ、ウチの父(故人)みたいな家事から逃げまくるじーさまよりマシ。
私が用事でいないなら、明日必要な自分の体操服の洗濯くらいは、帰宅後にシレッとこなします。
まずは一段階目、クリアといえましょう。
しかし、家事で一番切実なのはメシ作り。
将来、自活する為にも最低限のメシは自分で作れた方がいい。
幸い、と言っていいのか、ここはかわかみれいの食いしん坊遺伝子が仕事をしたらしく、ヤツは食べることに興味がある様子。
今日の晩飯は何だ?明日の晩飯は何だ?としょっちゅう聞いてきますし、これはどうやって作るのか、と聞いてくることもたまにあります。
よし。
ならば、ヤツに課題を出そうではありませんか。
『日曜日のお昼、簡単でいいから、家族の分を含めた昼食3人分を作りなさい』
テスト期間などは免除する、という約束で、30分ほどで作れるごく簡単な料理を、自分でメニューを考えて作るよう指示を出しました。
嫌がるかと思いましたが意外とノリノリで(多分、自分の食べたいものを食べられる機会が増えるからでしょう)、今まで続いています。
正直に言って、私もちょっと意外でした。
勧めてもどうせやらないだろうと諦めず、何でもやらせてみるものですねえ。
といっても、ホント簡単なものばかりですよ。
拙作『昼飯ミッション』(https://ncode.syosetu.com/n3732gb/)に出てきたようなものが中心です。
ご飯を炊いてツナ丼、インスタントの袋ラーメンを作って野菜のトッピングを乗せる、焼きそば(かわかみれい、といえばやっぱり焼きそばw)、スパゲッティ各種など。
だけど、料理初心者さんは意外と緊張するんですよね、こういう簡単メニューでも。
まず、野菜を切るのが一苦労。
玉ねぎの皮をむく、葱を小口に切る、ニンニクを薄くスライスする……という程度の、小学校の高学年くらいから母の見よう見まねで包丁を使ってきた私からすると、『え? ソレ出来ない? そこで悩む?』という部分で、戸惑ったり悩んだりするので驚きました。
……いやいやキミ、玉ねぎは皮をむいてから洗おうよ(皮の上から洗って、皮をむいて、洗わず放置? 洗おうよ、軽くでいいから皮をむいた後。それに、そもそも玉ねぎの皮って、乾いている状態の方が剝きやすくないか?)。
え? 『玉ねぎの繊維を断つ』『玉ねぎの繊維に沿って切る』の、意味がわからん?
そ、そうか。そうだよね。
えっと、玉ねぎの断面見て。層になってるよね?
層を断つように切るのが『繊維を断つ』で、層に沿うように切るのが『繊維に沿って切る』。← 言いながら実演して見せる。
あのォ、葱の小口、ニンニクのスライス、ちょっと……分厚過ぎないかな?
食べる時、いつも見てるでしょ? それの、優に二倍はあるよね?
ちょっとくらい大きくても、別に食べられなくはないからさ、いいっちゃいいけど……それじゃ口当たりがワイルドになり過ぎるといいますか。
は? 薄く切るのが、怖い?
特にニンニク、包丁の刃がすべって切りにくい?
そうか? ……そうか。(切れるけどなァ?)
じゃあ、出来るだけ薄く切るよう心掛けてください……。
では、たまには夕食用に簡単な豚汁にチャレンジしましょうか。
(長期休暇時、二度ほど作ってもらいました)
ゴボウだの里芋だの、下ごしらえの鬱陶しい食材は使わず、味噌じゃなくカレールウを入れたらそのままカレーになるような材料で。
ジャガイモ、玉ねぎ、人参、キャベツくらいを使って、豚小間を使って……って、わー!
ジャガイモと人参、包丁で皮を剥いたら実が半分近くにまで減るー!
し、仕方ない、じゃあお父さん愛用のピーラーを使おうか。
(私はピーラーで剝く方が時間がかかるので包丁で剥きますが、夫はピーラー派。といっても彼は結婚後、ジャガイモや人参を使うような料理をしません)
丸いものの皮を薄く剥くって、漠然と思っていたよりずっと、初心者泣かせだったんだー!
手先が超不器用、という自覚のある私でも、しょっぱなからこれだけは何故か出来たから、誰でもスイスイ、出来るような気がしてた!
『最近の子はリンゴの皮も剥けない』
主に若い女性への嫌味としての文脈で、昭和の頃からちょいちょい、語られますが。
これってネタじゃなく、剥けない人は本当に剥けないんだ、特に初心者は!
いやその、嫌味でもマウントでもなく、真剣に私は驚いたのです。
私は、己れの手先の不器用さに根深いコンプレックスがあります。
家庭科の被服の実習でエプロンやパジャマを作らされましたけど、他人の三倍くらい時間をかけ、真面目に一生懸命やっているのに拘わらずヨレヨレな縫い目の物しかできなかったトラウマは、自己評価をMINまで下げます。
私が手先を使って出来ることなら、普通の人は楽勝で出来るはず、という思い込みがあります。
えー?リンゴの皮むき? それくらい誰でも出来るっしょ、難しい飾り切りならばともかく。
もうちょっとで、そんなことをナチュラルにほざく嫌味なババアになるところでした……。
まあ、そんなこんなで(?)。
あんまり口うるさく言うと嫌気が差すでしょうから、『褒めて伸ばす』を基本方針に毎日曜、オブザーバーとして私が見守りつつ、ヤツにミッションをこなしてもらいました。
なんだかんだ一年続いてます。
一年もやっていると、彼にも『得意技』あるいは『十八番』と呼べるメニューが出来てきます。
その中で特にヤツがドヤ顔をするのが『スパゲッティ・カルボナーラ』。
市販のソースではなく、たまごや生クリーム、パルメザンチーズ(粉チーズ)でカルボナーラソースを作るところがドヤりポイントになります(笑)。
【ドヤれるw簡単カルボナーラ】
〔材料 3人分〕
スパゲッティ(300g) たまご(2個) 生クリーム(大さじ3〜4) パルメザンチーズ(大さじ3〜4) ニンニク(1かけを薄切り) ベーコン(ハーフサイズのパック2パック。1㎝ほどに切り分ける)塩、あらびき黒コショウ、オリーブオイル適宜
〔作り方〕
① パスタを湯がく湯を沸かす。乾麺100gにつき1Lが目安。
② ボウルにたまごを溶きほぐす。
③ ②へ、生クリーム、パルメザンチーズ、塩、コショウを入れてよく混ぜる。
④ ニンニク、ベーコンを切る。
⑤ お湯が沸いたら麵を投入。アルデンテに湯がく。
⑥ 並行して、大きめのフライパンにオリーブオイルを入れ、ニンニクを入れた状態で点火。
⑦ ニンニクから香りが立つ頃にベーコン投入、炒める。
⑧ 湯がいたパスタを⑦へ入れ、軽くさっと炒め合わせる。
⑨ ⑧の中へ③で作ったカルボナーラソースを入れ、手早く混ぜる。
⑩ 出来上がり!
それぞれの器にわけ、好みで黒コショウを足して、召し上がれ!
どちらかといえば汁気の少ない感じに仕上がります。
たまご好きさんならもう一個くらい足して、生クリーム好きさんならもうちょっと生クリームを足して、カルボナーラソースを作ってもいいかもしれませんね……作ったことがないので、保証はしかねますが。
汁気の少ないところがウチの家族の好みに合っているので、このレシピで定着しています。
将来カノジョが出来たらコレ作ってあげたらエエねん、などと、ウチの夫はけしかけます(笑)。
本人は知らん顔をしてますが、内心どうだかわかりませんね。
ドヤ顔で作っていますから、まあ、そういうつもりはあるかもしれません。
……つもり、は(笑)。




