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37.元リーダーSide8



《オクレールSide》


 ……な、なにが起きた……?


 オレたちはガイアと決闘することになった。条件は単純、オレらが勝てばガイアは黄昏の竜に戻る。そういう勝負だ。


 こっちは戦闘系のSランク冒険者三人。相手はサポーター一人。勝負になるはずがねえ――そう、思っていた。


 だが……。


「な、なんだこれ……!?」

「ひっ……!」

「ぬおおおおっ!?」


 気づけばメスガッキもイエスマも、そしてオレ自身も宙に浮いていた。そうだ……! オレら三人は、勝負開始と同時に空中へ放り投げられていたのだ……!


 地面が、遥か下に見える。

 その場所に、ガイアが静かに立っている。


 なにを……なにをしやがった!? わからねえ……だが確かなのは――。


 ひゅぅぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……。


「「「落ちるぅううううううううううううううううううううううううううううううううううう!」」」


 や、やべえ……! 落ちる……! 高所からの落下……!

 これ、死ぬ……! 確実に死ぬ……!


「た、助けてぇええええええええええええええええええええええええっ! ……あ」


 ――べしゃっ。


 オレたちは地面に叩きつけられた。……だが、不思議なことに痛くない。


「い、痛くねえ……」

「ひぇぇえん! こ、怖かったよぉお~!」

「でゅ、でゅふ……ありえん。あ、あんな高さから落ちて……怪我一つしてないとは……」


 地面に這いつくばりながら、現実感がついてこない。

 一方で、ガイアが冷たくオレらを見下ろしていた。


「が、ガイア……て、てめえが何かしたんだろ……?」

「そうだな。見えてなかったのか?」

「!?」


 くそっ……見えてなかった……! 一体なにをしたってんだ!?


「見事な体術だな、ガイア君」


 審判役のギンコが口を開いた。


「体術……だと!?」

「ああ。開始と同時に、高速で接近して、オクレールの腕をつかみ、頭上へと放り投げたんだ」


 ……全然見えなかった。だが、本当にそんな動作をしたのか……!?


「あれは極東武術の一つ。【合気道】と呼ばれる技術だ。てこの原理を応用し、相手を投げ飛ばす」

「そうです。師匠から護身術を習っていました」


 ……な、なんだとぉ……!?


「が、ガイアてめえ……力を隠してたのか!? 今まで戦えたのに、戦わなかったってことかよぉ!?」


 戦えたのに戦わなかった? ふざけやがって……!


「話を聞いてなかったのか?」


 ガイアは冷ややかな目を向けて言う。


「護身術――つまり俺の身を守るための術だ。別に、あんたたちの活動で手を抜いたわけじゃない」

「屁理屈言うな……! くそっ……!」


 くそ……! あいつ、こんな力を隠してやがったのか……!


「どうする? 降参するか?」


 ギンコが言う。


「降参? するもんか! おい、てめえら! まだいけるだろ!?」


 メスガッキたちが立ち上がる。


「当たり前よ……!」

「でゅふ……まだ拙者の魔法の恐ろしさを教えてないでござるよぉ!」


 ……ああ、まだ終わっちゃいねえ。オレだって今ので負けたなんて認めねえ……!


「愚かな男だ。君らが無事なのは、ひとえにガイア君の慈悲だぞ。落下の衝撃を重力操作でゼロにしていなければ、今頃君らは肉片だった」


「うっせえ! イエスマ! 準備しろ! メスガッキ、牽制だ!」


 イエスマの魔法でやつを叩き潰す! メスガッキも本気だ。


「【脚力上昇】!」


 メスガッキがスキルを発動。

 たんっ、と地面を蹴ってガイアへ迫る。


 近づけばまた護身術の餌食になる。だから――付かず離れずで牽制してやる!


「【土竜撃】!」


 オレは竜殺しの大剣を、思い切り地面へ叩きつけた。

 轟音とともに地面が砕け、飛び散った岩や小石がガイアに襲いかかる。


 退避先にはメスガッキが待ち構えていた。


「【捕縛糸】!」


 両手のナイフがガイアへと飛ぶ。刃は体をかすめ――だが本命は柄から伸びるワイヤー。

 たちまちガイアの身体はぐるぐる巻きにされ、動きを封じられる。


「よし! イエスマぁ!」

「デュフ……準備万端でござるぅ!」


 イエスマが杖先をガイアへ向ける。

 これで終わりだ……!


石弾ストーン・キャノン!」


 無数の石弾が生成され、高速で射出される。狙いはガイアの顔面。


「貴様……殺す気か!」

「回復役がいるからよ! 死にゃしねえ!」


 ――顔なんざサポーターに不要だ。


 石弾が直撃し――。


 ぐしゃぁ……!


「決まった……! 勝ったでござる!」

「誰が?」

「ぬぅあぁあああああ!?」


 嘘だ。石弾は確かに当たったはずだ。

 だが――。


「な、なんで無傷なんだよガイアぁああああ!」


 ガイアは涼しい顔で立っている。


「石弾が触れた瞬間、加重グラヴ・ブーストを発動……! 超重力で石を地面へ叩き落としたのだ! 驚異的な反応速度、見事な重力操作だ!」


 ギンコが解説する。

 く、くそ……だが、まだだ!


「いくぞメスガッキ! 動けねぇ今なら叩き潰せる!」


 オレは大剣を担ぎ、突撃する。

 ガイアはワイヤーに縛られたまま。ナイフは地面に突き刺さり、動けない……はず!


「無駄だ」


 ガイアが足を振り上げ――。


 ズンッ……!


 どごぉおおおおおん!


 衝撃波が炸裂し、オレたちはまとめて吹き飛ばされる。


「じ、自らの靴に加重を……! 踏み抜いた衝撃で……!」


 ギンコが唖然とつぶやく。

 その振動で地面に固定されていたナイフも抜け落ち、ガイアは自由になる。


「終わりか?」

「くそがぁああああ!」


 オレは大剣を振り下ろす。


「重破斬ッ!」


 ガイアは最小限の動きで躱す。

 続けざまに回転攻撃――。


「【廻天切り】ぃいいッ!」


 大剣が唸りを上げるが、ガイアは間合いを外してかわす。


「石弾五連射!」


 イエスマの魔法が殺到する。

 ガイアは両手で顔を庇い――。


加重グラヴ・ブースト


 ドンッ! 石弾はすべて地面へ叩き落とされる。


「くそぉおお! 【刺突】!」


 メスガッキが脚力強化で突撃。

 だが真正面からでは――。


「甘い」


 ガイアは合気道の要領で受け止め、そのまま地面へ叩きつける。


「加重」

「ぎゃあっ!」


 メスガッキは地面に縫いつけられ、動けなくなる。


「重いぃいいい! うごけなぁい!」


 続いてイエスマ。

 必死に石弾を放つが、すべて重力で無効化される。


「ひぃ……やめっ……!」


 肩を叩かれ――。


「加重」

「ぐぉおおおおお! うごけぬぅ……!」


 ……な、なんだよ……これ……。


「嘘だ……ガイア……てめえは弱いはずだろ……!」


 攻撃は一切通らず。逆に護身術と重力操作で、鮮やかに返され続けている。


「おまえ……モノの重さを変える力しかないはずだろ……!?」

「ああ。その力だけで戦っている。今も……昔もな」


 だけ、だと……?

 こいつ、まだ他の力を隠してやがるのか……!?


 ガイアが歩み寄る。

 巨大化したわけでもないのに、圧が……空気が……重い。


「うおおおおッ! 竜破斬ッ!」


 竜殺しの剣を振り下ろす。竜すら一撃で砕く渾身の一撃――。


 だが、ガイアは躊躇なく踏み込み、オレに触れる。


「加重」


 ぐしゃぁあ……!


 体全体が押し潰されるような圧力。剣を振り下ろす前に、不発に終わる。


「ぐ……ぐぉおお……!」


 くそっ、動けねえ……! 全然、動かねえ……!


「終わりだな」


 ギンコが歩み寄り、吐き捨てる。


「お前たちの攻撃はすべて見切られていた。それに最初に空へ放り投げられた時点で、勝負は決していたのだ」

「ぐ……!」


 確かに。あのとき減重していなければ、オレらは即死していた。


「今も……加重を強めれば圧死させられる。それでも生きている。それが何を意味するか……わかるな?」


 ……わかる。

 つまり――ガイアはオレらを遥かに凌駕しているってこと……!


「いやだ……認めねえ……!」


 だが仲間は……。


「参ったぁ~」

「参ったでござるぅ~」


 あっさりと敗北を口にしやがった。


「メスガッキ! イエスマぁ!」


 オレ一人……残された。


「くそ……くそぉおおお! 」


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