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03.重力サポート無双



 俺たちは一旦、街へ戻った。


 ギルド近くのベンチに腰を下ろしながら、リィナたちの事情を聞く。


「なるほど……お前たちは駆け出しの冒険者で、隣町に荷物を届ける依頼を受けてたわけか」


 赤毛の剣士リィナが、こくんとうなずいた。


「うん。でも……魔物が出るなんて思わなかったんだよ」

「……ギルドの人も、あの辺りじゃ魔物は出ないって言ってたしね」


 青髪の魔法使い、ノエルが小さくため息をついた。


 状況は日々変わる。前に出なかったからって、今も安全とは限らない。


「どうしよう……依頼、受けちゃったから。未達成だと、違約金取られちゃうよ……」


 依頼に失敗したときのペナルティ。それは駆け出しにとってはなかなか痛い。

 リィナが不安げに唇をかむ。


 ……なんというか、こういうのを見ると放っておけないんだよな。


「届け先は、隣町だったな?」


「うん。……けど?」


「だったら、俺も一緒に行く。俺もそっちに用がある」


 その言葉に、リィナの顔が一気に明るくなった。


「ほんと!? 助かるよっ!」


「……こちらとしてもありがたいです。あなたの重力魔法には興味がありますし、ぜひ同行を」


 ノエルは目を輝かせながら言った。

 この子は、俺の力に純粋な好奇心を抱いているようだ。


「よし、じゃあ三人で出発しよう」


「おー!」

「おーです!」



 荷車を引いて、再び街道を進む。


 俺は【減重グラヴ・ライト】で荷車全体の重量をゼロに近づけている。魔物の素材や食料がどっさり詰まっているはずだが、リィナでも楽に押せるはずだ。


「うわぁ! 軽い軽い軽〜い! ガイアさんって、マジで重力いじれるんだね〜!」


「まあ、いじれるというか……操作してるだけだ」


 リィナはゲラゲラ笑いながら、ノエルは黙々とメモ帳に何かを書き込んでいた。


 そんな道中で――


「……あの熊の魔物だ」


 リィナが指差した先に、それはいた。


 前回リィナたちが襲われた場所。その中央に、巨体を地に伏せたまま動かない熊型の魔物がいた。


「……嘘でしょ。まだ魔法が継続してる……?」


 ノエルが目を見開く。


「魔法には射程と持続時間があるの。発動者が離れたら、効果は切れるはず……」


「まあ、正確には俺のは“魔法”じゃないからな」


「……え?」


「これは重力使いの“能力”。魔力じゃなく、重力そのものを操作してる」


「…………」


 ノエルが言葉を失っている間に、俺はリィナに言う。


「リィナ。あいつはもう動けない。剣士のお前なら、倒せるはずだ」


「……でも、前はあんなのに歯が立たなかったんだよ?」


「だから俺がサポートする」


 そう言って、俺はリィナの体に向けて右手をかざす。


「【減重グラヴ・ライト】」


 リィナの全身がふわりと軽くなった。


「うわっ!? ちょ、なにこれ!? 身体が、めっちゃ軽い!」


「体重も装備も、極限まで軽量化した。けど飛んでっちゃ困るから、ギリギリの数値に調整してある」


「へ、へぇ……? そんなこともできるんだ……?」


「リィナの筋力はそのまま。重さだけが消えてる」


「…………」


 ノエルがまた絶句してるけど、今はスルーだ。


「さらにもう一つ」


 俺はリィナの剣に軽く触れた。


「【加重グラヴ・ブースト】」


 リィナの剣がほんの一瞬だけ光を帯びる。


「これは……?」


「攻撃をサポートする技さ。さあ、行け」


「い、行くよぉおおおおおお!!」


 リィナが剣を握り、疾風のように走り出す。


 その動きはまるで、空気の抵抗すら受けていないかのようだった。


「くらえっ! 裂破斬!!」


 リィナの縦一文字の斬撃が、魔物の胴を正確に捉える。


 ――ズバアアアアァァァァァン!!


 重力を帯びた剣が、抵抗を許さず魔物の肉体を引き裂いた。


「真っ二つ!? やったあああああああ!!」


 リィナがぴょんぴょん跳ねながら駆け戻ってくる。


 ノエルはその様子を見て、静かに言った。


「……おかしい。絶対おかしい」


「な、なにが?」


「駆け出し冒険者が、一撃であんな魔物を倒せるわけがない。リィナのスペックで、あの威力は説明できない」


「あ、あたしもそう思うー!」


「……ガイア。あなた、他に何をしたの?」


「剣の重さを、1000倍にしたんだよ」


「「1000倍ぃいいいいいい!?」」


 ノエルが、信じられないといった顔でリィナの剣を持ち上げる。


「……普通の重さだよ?」


「だから言っただろ。攻撃が当たる、その瞬間だけ重くしてるんだって」


「な、なにそれ……そんな精密な魔法操作、できるわけない……!」


「魔法じゃないって言ってるだろ。これは“能力”なんだよ」


 ノエルが、震えるように呟いた。


「……重力使いって、こんなチート職だったの……?」


 リィナも大きくうなずく。


「すっごいよ、ガイアさん! マジでありがとっ!」


 ……なんというか、久しぶりに人から素直に感謝されたな。


 少しだけ、胸がくすぐったくなった。


「さ、先を急ごう。街までは、もうすぐだ」

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― 新着の感想 ―
重力の存在を庶民が理解してる世界で「重力魔法」が使えないって結論になるのはちょっと苦しい気が。 「チート」って言葉も一般的な世界観なんですね。
 横薙ぎでは無く振り下ろしで無いと、逆に無茶苦茶大変?
ダイエットに有効なのか?体脂肪は変わらないから無理なのかな?
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