29.開拓依頼を受ける
俺たちのパーティと、ギンコさん率いる銀の剣の皆は、キャラバン隊とともに目的地へ到着した。
目的地は国の西に広がる荒野地帯。ここの開拓団に物資を届けるのが仕事だ。
「コーヤリダ氏ぃ〜」
キャラバットさんがぶんぶんと手を振る。日焼けした肌でがっしりした体の男がこちらへやってきた。
「キャラバットさん! 助かったぜ……!」
どうやら二人は知り合いらしい。
「そいつらは?」
「ここまで護衛してくれた冒険者の皆さんです、はいぃ〜」
コーヤリダさんは「そうかそうか!」と笑顔になり、ぺこりと頭を下げる。
「初めまして! おれはコーヤリダ! この開拓団のリーダーをやってる……!」
俺たちは頭を下げ、自己紹介をする。
「それにしても助かったぜ……! 本当に死ぬかと思ってた」
コーヤリダさんがため息交じりに言った。
「コーヤリダ氏、何かトラブルでもあったのですか、はいぃ?」
「ああ……まあ、ちょっとな」
そのときだった。グラグラグラッ……!
「あわわぁ! 地面が揺れるよぉう!」
「……地震?」
ノエルとリィナが俺にくっつきながら言う。
「あ、あの……二人とも? なんで俺にくっつくんだ?」
「「不可抗力です」」
「そ、そう……」
こないだの一件以来、リィナたちはさらに積極的にくっついてくるようになった気がする。嫌じゃない。本当だ。魔人である俺を怖がらず受け止めてくれている――彼女らのことは、嫌じゃないんだが……。
「おぉおぉ、お暑いねぇ〜」
コーヤリダさんがニヤニヤ笑う。周りからそんな目で見られるのは、ちょっと気まずい。
「うぉっほん! うぉほんうぉっほん!」
ギンコさんが何度も咳払いをする。機嫌が悪いのか、こっちをにらんでいる。そんなに俺らの態度が気に障ったのか……。
「んんっ。それで、コーヤリダさん。トラブルってのは?」
「トラブルってのは、まさに今のこれだよ。地震が最近増えててな」
「地震……」
「ああ。これのせいで地割れが起きたり、地下水が出なくなったりで困っててな」
「……地震による被害のせいで、なかなか開拓が進まないということなんですね?」
ノエルの問いに、コーヤリダさんがうなずく。
「ああ。特に水だな〜……」
コーヤリダさんが手招きする。井戸があり、桶を中に放り込む。こぉおおおん……。
「苦労して掘った井戸だったんだが、地震でこの通りだ」
「なるほど……地盤が緩んだりずれたりして、水が湧き出なくなったんですね」
俺がそう言うと、コーヤリダさんはうなずいた。
「ああ。困ったもんだぜ。荒野に川なんて流れてないから、水を引っ張ってこれないしよ……」
深々とため息をつくコーヤリダさんの顔には疲労が滲んでいる。何度も掘っては地下水が使えなくなる――そんな繰り返しだったのだろう。
「おっと、悪いな。愚痴吐いてよ。ま、しゃーねー。切り替えてかねーとな」
強い人だ。なんとか手助けできないだろうか。
「ガイア氏、ギンコ氏、少し……ご相談があるんですが、はいぃ」
キャラバットさんが俺らを呼ぶ。
「開拓団をしばらく手伝ってはくれないか、はい。実はこの開拓依頼、ギルドにも出ているんです、はい」
「そうなのか? ……しかし」
ギンコさんが周りを見渡す。ここにいるのは開拓団の人たちだけで、冒険者風の人間はいない。
「はい、開拓依頼はかなり不人気なんです、はいぃ……ここは遠いですし、きついですし。それより街に近い魔物討伐依頼のほうが人気なんです、はいぃ」
なるほど。
「無論、断っていただいても問題ないです、はい」
「我々は引き受けたい。ガイア君は?」
「仲間と相談してみます」
依頼は俺一人の判断で決められるものではない。開拓は肉体労働だ。リィナたち女性にはきついかもしれない。
俺はその場を離れ、リィナたちの元へ行き、キャラバットさんから聞いた話を伝える。
「やる……!」
リィナはすぐに答えた。
「やるよ! だって困ってる人がいて、あたしたちには助けられる力があるし!」
「リィナ……」
ノエルもうなずく。
「わたしもやるわ。リィナを一人にしておけないし」
「ノエルー! ありがとー!」
リィナは困っている人を見捨てられない。ノエルは友達のために依頼を受けたいのだ。
「ガイアさんは……?」
「やる。この依頼、俺の力が役に立てると思うしな」
リィナたちはうなずいた。
「ガイアの加重、減重の力は、物を運んだりどけたりするのに凄く役に立つと思う」
「よーし! じゃああたしたち……えっと、えーっと……」
リィナが考えこんでいる。
「どうした?」
「いや、あたしたちのパーティ名、そういえば無かったよなぁって」
なるほど。元のパーティは黄昏の竜、ギンコさんたちは銀の剣。俺らには名前がない。
「ガイアと仲間達……とか!」
「なんだそのダサい名前……」
「じゃあ、ガイアとガールフレンド()、とかっ」
「なんだそりゃ……」
ガイアと女友達って、そのまんまだ。リィナ、なんで顔真っ赤にしてるんだ……?
「……ガイアって、本当に鈍いのね」
「え? なにが」
「……なんでもないわ。辛い過去背負ってるからしょうがないわよね」
勝手に納得されてしまった。なんなんだろうか。
「まあ、パーティ名はそのうち決めればいい」
「うーん、何が良いかなぁ。ガイア……重力……黒……うーん……」
俺はコーヤリダさんたちの元へ戻る。
「クエスト、受けます」
「おー! 助かるぜ坊主! よろしくなっ!」
コーヤリダさんが俺の背中をばしばし叩く。
「じゃあ、さっそくこの涸れてしまった井戸を直しましょうか」
「涸れ井戸を直す……? そんなことできるのか……?」
「ええ」
俺はひょいっと涸れ井戸の中に飛び込む。体の重さを減重しながらゆっくり降りる。
地面に手をやり、叫ぶ。
「加重」
ズンッ……! ビキッ……! ばきぃん!
重力を操作して、とんっとジャンプ。ふわりと井戸の外へ飛び出して着地。ドパァアアアアアアアアン!
「なっ!? み、水が湧き出ただとぉおおおおおおおおおおおお!?」
コーヤリダさんが驚きながら吹き出す水を見た。
「ど、どうなってんだ!?」
「ずれた地盤を、加重で元に戻したんです」
元々この地盤からは水が湧き出していたが、地震で地盤がずれ、水が出なくなっていた。俺は地盤に重力を付与してずれていたものを元の位置に戻した。結果、水が再び出るようになったのだ。
「じ、地盤なんて……戻せるもんなのか……? そんな簡単に」
「……無理ね。人の力では」「そこでうちのガイアさんですよ! ガイアさんは重力を直接操作できる凄い人なんです!」
リィナたちが胸を張る。俺は前は照れくさかったが、今は素直に嬉しかった。
「じゅ、じゅーりょ……よくわからねえが……ガイア坊主がすげえ力を持ってるってことだな!」
コーヤリダさんが何度も俺の肩をたたく。
「あんがとな、ガイア坊主!」
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