26.元リーダーSide4
《オクレールSide》
馬鹿商人に置き去りにされたオレたち。
このまま街に戻れねえ。ギルドから受けた依頼はまだ途中で、期日を過ぎれば違約金が発生する。金も痛いが、一番ヤバいのはパーティの評判が地に落ちることだ。
だから早く、ガイアにかけられた重しの呪いを解かねえといけねえ。街に戻ってガイアを探すより、森のドルイドの元で解呪する方が早い――時間がないのだ。
てなわけで、オレ、メスガッキ、イエスマの三人は、森の奥へ徒歩で向かっているのだが……。
「ぜえ……はあ……」
「はぁ……はぁ……やだぁ……もぉ……つかれたよぉ~……」
「でゅ………………ふ」
暑い。疲れる。荷物は全部アイテム袋に入れてるが、それでも重い。重すぎる。くそっ……!
普段なら移動でここまで堪えたことはねえ。馬車が使えりゃこんなことにならなかったし、あの御者の話といい、さっき聞いた「ガイアは超有能」説がだんだん腑に落ちてきた。
「ねえ……リーダー……やっぱガイアが鍵だったんじゃないですかぁ~……」
「ぐっ……!」
「ガイアが荷物を軽くしてたんじゃねえの?」
ああ、そうかもしれねえ。ガイアがいなくなってから急に疲れを感じるようになったし、馬車が揺れなかった理由もそれかもしれん。
「だからぁ~……アタシ、ガイア追い出すの反対って言ったじゃあないですかぁ~……」
「はぁあ!?」
「言ってねえだろメスガキてめえこの野郎!」
やつは散々ガイアをこき下ろしてたくせに、手のひら返しで甲斐甲斐しくなる。イラつく。認めちまったら自分の見落としを認めることになる――それがプライドに触るんだ。
「認めてねえ……オレは、ガイアを認めてねえからな……!」
オレは黄昏の竜のリーダー、オクレール・ウォートルだ。仲間の有能さを見抜けなかった間抜けなんて思われたくねえ!
「って、イエスマはどうした? さっきから黙ってるけど」
「きゃーーーーーーー! イエスマぁ……!」
メスガッキが悲鳴を上げた。視線をやると、イエスマが倒れている。
敵か! オレは一瞬でアイテム袋に手を突っ込み、竜殺しを取り出そうとする――が、剣が見つからねえ。
「ああくっそ! どこにあんだよ竜殺しぃいい!」
「ちょっとリーダー! 何馬鹿やってんの! 仲間が倒れてるのよ!」
「うっせえ! くそっ!」
周囲に敵はいない。オレは武器探しを中断してイエスマに駆け寄る。汗だくだ。浅い呼吸だ。脱水か……。
「み、ず……きゅう……みず……」
「んだよ……脱水かよ」
敵に襲われたわけじゃなくて良かったが、脱水で倒れるのは情けねえ。オレらは最強パーティのはずだろうが。
「オレらは最強パーティなんだぜ? 脱水で倒れてんじゃねえよイエスマ!」
「ぜえ……はあ……ひどい……でゅ……ふ ……ぜえ……はあ……」
くそ、しょうがねえ。アイテム袋から水袋を取り出そうとするが――これも見つからねえ。
「……あれ? どこだよ水袋ぉ……!」
「ちょ、また同じミスですかァ~~~~~~~~~~~~~?」
「はぁ!? オレはアイテム管理担当じゃねえよ!」
オレは戦闘担当だ。水や小物の管理はガイアの仕事だった。思い出したくねえが、あいつがいたから荷物は即座に出てきたのだ。
「あーあー、ガイアはやっぱ必要だったんだわ。ほしいものをパッと出してくれたのになぁ~」
「メスガッキぃ……! 黙れ! くそが!」
ようやく水袋を見つけ、イエスマの口元に運ぶ。
「おいイエスマ、しっかりしろ!」
耳を近づけると、呼吸はしている。死んでねえ。ほっと一息つく。
「オクレールさん、どうするんですかー」
メスガッキの呼び方にムカつくが無視する。
「置いてくわけねえだろ。森に入るんだぞ、魔法使いがいなきゃ戦闘で詰むだろ」
「じゃあイエスマ連れてくんですか? 誰が背負うんですかぁ?」
背負うのはオレしかいねえ。だが既に体力は限界だ。重い。デブを一人で引きずって行くしかねえ。
「あたしやですよw か弱い女子ですしw むりでぇすw」
「黙れメスガキてめえ……!!!!!!」
結局、オレがイエスマを引きずりながら森へ入ることになる。重くて、情けなくて、腹が立つ。
「こんな時に――あの荷物持ち野郎がいればよかったのにな……」
「ガイアを追い出したの、ま、オクレールさんなんですけどねw」
「黙れ!!」
かつての完璧だと思い込んでいたパーティは、今ではボロボロだ。情けなさと苛立ちが胸に渦巻く。だが行くしかねえ。期日が待ってはくれねえからな。




