11.Sランク冒険者たちと共闘し、サポート力を褒められまくる
俺たちが銀の剣のみなさんと街へ戻ろうとした――そのときだった。
「ゴギャァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
鉱山の奥から、魔物の咆哮が轟く。
ずずぅうん……ずずずぅん……と地鳴りのような音が近づいてくる。
「まさか……」
たらり、とギンコさんの額に汗。彼女の言っていた――。
「ヒトガタの魔物……?」
……だとしたら、このメンバーでは全滅の危険がある。
「使うか……アレを……」
俺は自分の両腕を見る。
腕には、ベルトが巻かれていた。
『ガイア。それは文字通り【枷】だ。君の強大な力を封じるための……枷。決して外さぬようにね』
……師匠。
俺は腕のベルトに手をかけ――だが。
「ゴギャァアアアアアアアアア!」
「ろ、岩蜥蜴……?」
現れたのは巨大な岩蜥蜴だった。
俺は思う。
――ああ、枷を外さずに済んだ。
「…………」
ノエルがじっとこちらを見る。勘のいい彼女には、気づかれたかもしれない……。
「岩蜥蜴だ! どうしよう、ガイア」
「俺らでやろう」
ギンコさんが俺を見る。
「ガイア君。危険だ。いくら相手がBランク魔物で、君が超一流サポーターだとしても、新人二人には荷が重い」
「でもギンコさんは足を怪我してます」
「大丈夫だ。私以外のメンツで対処してみせる」
なるほど。ギンコさん以外もSランク冒険者。
Bランクに遅れは取らないはずだ。
「わかりました。リィナ、ノエル。今回は見学に回ろう」
二人はこくりとうなずいた。
「素直でいい子たちだね」
「はい。育てがいのある子たちです」
「! ……そうか」
ギンコさんは小さく息をつき、どこか諦観めいた顔をした。
銀の剣の構成は――武闘家、狩人、魔法使い、盾役。
そこにギンコさんを加えた五人が本来の編成だ。
「いくぞ!」
武闘家の男が岩蜥蜴へ接近。
「岩砕き……!」
武闘家スキル《岩砕き》。文字通り、巨岩をも砕く一撃――
ガキィン……!
「くっ……!」
「なっ!? はじかれただと……!?」
ギンコさんが驚愕するのも無理はない。
彼女らは岩蜥蜴討伐クエスト帰り。つまり、ここの個体の強さは把握済みのはず。
本来なら、今の一撃で装甲を割れていたはず――だが敵は無傷。
「どうなってやがる……!」
「! 反撃来ます……! ガード!」
俺の声と同時に、岩蜥蜴の尻尾が唸る。
どごぉん!
武闘家は尻尾の一撃で後方へ吹っ飛ぶ。
「大丈夫か!? ブドー……!」
ギンコさんが武闘家に叫ぶ。
「はぁ……はぁ……! だ、大丈夫だ……助かったぜ、少年。あんたのガード指示がなきゃ今頃ミンチだ……げほっ!」
ブドーが血を吐いた。
「そんな……ブドーがガードしても、ダメージが通るなんて……」
狩人と魔法使いが続けて攻撃する。だが、どちらも通らない。
「おかしい……あんなに岩蜥蜴の外皮は硬くなかった……。なのに、どうして急に……?」
沈黙していたノエルが口を開く。
「……バフ、だと思う」
「バフだと!?」
ギンコさんに、ノエルがうなずく。
「……うん。あの岩蜥蜴、かすかに強い力を帯びてるように見えるの」
俺たちは目を凝らす。ばち、ばち……と、ごく微弱な――雷光?
ノエルは、あれを付与術=バフだと見立てた。
「……何のバフかは、ごめんなさい、まだわからない。でも、あれが力を底上げしてるのは確か」
その間もブドーたちは攻撃をいなすが、こちらの打撃は通らない。
エース不在とはいえ、Sランカーの攻撃すら無効化するほどのバフ――
裏を返せば、バフを上書きできれば勝てるということだ。
「ギンコさん。俺も戦いに参加します」
「! ……そうだな。助かる」
俺は二人へ視線を向ける。
「ノエル、閃光で相手の目をくらませて。リィナはギンコさんの護衛。いいな?」
二人の顔がぱぁっと明るくなる。
「なんだ?」
「あたしらを頼ってくれたのが嬉しいのです! OK、リーダー! 任せてちょうだい!」
――自然と、俺は彼女らを仲間として頼っていた。
力を合わせて敵に立ち向かう存在として、無意識に。
「……三秒後に目くらまし!」
ノエルが全体へアナウンス。
ブドーたちがうなずく。
「二……一……閃光!」
初級光魔法が炸裂し、眩い光が広がる。
「グギャ……!」
岩蜥蜴が怯む。目くらまし成功――!
「っしゃ、ガイアくん! サポート頼むぞ!」
「はい! バフはもう終わってます、いってください!」
「え……? お、おう……! いくぞおまえらぁ……!」
たんっ! とブドーが地を蹴る。
ぎゅぅうん!
「な!? は、はえええ……! 身体が軽すぎんだろ……!」
減重でブドーの重力をゼロに。
無重力での踏み込みは、常識外れの初速を生む。
「このまま突っ込むぜ! 弾道脚!」
強烈な跳び蹴りが岩蜥蜴へ。
どごぉん!
「通った……! いける、やるぞ!」
狩人が矢を放つ。
一瞬で十本の矢が放射状に広がり――
ずどんっ……!
「……! あの硬い外皮を、矢が貫いた……。なるほど、重力で“貫”を強化してるのか……!」
その通り。矢が放射線の頂点へ到達した瞬間、加重を付与。
重力を乗せた一撃が、装甲を易々と穿つ。
「魔法使いさん! 狩人さんの開けた穴に、爆発魔法を!」
「おっけー! 火炎連弾!」
中級火属性魔法が解き放たれ、無数の炎弾が降り注ぐ――が。
「だめ……! 尻尾でガードされる……!」
岩蜥蜴は長い尻尾で身を覆い、防御体勢。
「ふ……問題ないよ」
ギンコさんが勝利の笑み。
「すでに、ガイアくんが対策済みさ。だろう?」
「はい! 加重!」
ずんっ! と重力がのしかかり、持ち上げていた尻尾が地面に叩きつけられる。
露出した開口部へ、炎弾が正確に突入――
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
……内部から爆ぜ、岩蜥蜴は爆散した。
「ふぅ……」
「やるじゃねえか、少年……!」
ばしばし、とブドーが俺の肩を叩く。
「まじ助かったぜ! おまえがいなかったら死んでたわ、オレら!」
「……感謝する」
「いやしかし、すごいサポート力だねぇ……! 見事な付与術だったよ!」
銀の剣の面々は、どうやら俺を付与術士と思っている。
まあ、それはそれでいい。
「見事なサポートだった。やはり……ガイア君は一流――いや、超一流のサポーターだな」
ギンコさんも感心しきり。
「Sランカーに認められるって、やっぱガイアさんすごい人だったんだね! すごいなぁ~……」
リィナがまた褒めてくる。いや、それはいいってば……。
一方、ノエルは倒れた岩蜥蜴へ歩み寄り、外皮へ手を伸ばす。
「これは……電気? 電気に、身体を強くする性質なんて――なかったはず……。じゃあ、この岩蜥蜴は、いったい“何の”バフを受けてたっていうの……?」
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