10.怪我人を救助する
10.
俺たちは鉱石採取に来ていた。目当てのものをゲットしたので、帰ろうとした。
その矢先、洞窟の奥から、助けを求める声が聞こえてきた。
俺たちは彼らを救助すべく、現場へと急行したのだった。
「!? 行き止まりだよ!」
俺たちが進んでいった先には、壁が立ち塞がっている。他に通路は見当たらない。
「ノエル、この先にいるんだな?」
「……そう」
ぴた、とノエルが岩壁に手を置いて言う。
「……これ、落石によって道が封鎖されてるんだわ」
「行き止まりじゃなくて、岩が落ちてきて、塞がってるだけなんだね」
「……そういうこと」
「なら簡単! 加重搭載の、この不壊の刀なら……! ずぇええい!」
「「ストップ……!」」
俺らが言うと、リィナが動きを止め、こちらを見る。
「ほえ? なんでー?」
「岩が積み重なってできてるんだぞ? 一部壊したら、崩れ落ちてくる」
「あ、そか……じゃあどうしよう」
「大丈夫、俺に考えがある」
俺はリィナと交代して、岩壁のもとへ。ぴた……と壁に触れる。
「減重」
岩の重さをゼロにする。
「手分けして岩をどかそう」
「「おー!」」
リィナが岩に触れる。ひょいっ、とどける。どけた後、周囲の岩がその場で浮いている。
「わ! わ! 岩がその場に浮いてる! すごーい! どうなってるのー!」
「この岩の集まりの重力をゼロにしたんだ。重力がゼロだから、落ちないんだよ」
「はえー……そうなんだ。やっぱじゅーりょくってすごいね! なんでもできちゃうよ」
「ありがとう。でも急ごう」
三人で手分けして、えっほえっほと岩をどけていく。壁の岩を全部撤去する必要はない。
人ひとり通れるだけの通路を作れば良い。
「……無重力状態にできなきゃ、こんな風に通路は作れなかった。やっぱりガイアはすごい」
ノエルが目を輝かせながら言う。
この子、ほそっこいしちっこい。体力が無いのに、凄く頑張るな。
三人で協力し、通路は完成した。
俺たちは通路を通って、壁の向こう側へと到着した。
「! 貴方たちは……!」
ダンジョンの壁によりかかって、倒れている一団がいた。
冒険者だと一発でわかった。なぜなら……。
「【銀の剣】の皆さん!」
いつもなら、リィナが「それなに?」と聞いてきたことだろう。
だが、リィナはすぐさま、銀の剣の皆さんのところへ向かう。
「大丈夫! これ、飲んで……!」
リィナが持っていたポーションを、近くに居た女性……ギンコさんに飲ませる。
「ああ、助かる……」
んぐんぐっ、とギンコさんがポーションを飲んで、ほぅ……と息をついた。
「……ガイア。知り合い?」
「ああ。この人達はSランクパーティ、銀の剣の皆さん。今リィナがポーションを飲ませてるのは、リーダーのギンコさん」
職業は二刀流剣士。
年齢は二十ちょいすぎだったかな。
若くしてSランクになった、凄い人である。
銀の髪の美女、ギンコさん。
彼女はポーションで怪我を治した後、救助に加わる。
銀の剣は五人組パーティだ。
ギンコさんがいちばん重傷で、あとは衰弱してるくらいだった。
仲間達は空腹だったらしい。俺たちの持ってきた食料を、ガツガツと食べる。
「いや、本当に助かった。礼を言うよ、ガイアくん」
にこっ、と微笑むギンコさん。けど……。
「足、怪我してますよね……。足の骨、砕けてるんじゃ?」
「っ! さすがだな……。ばれてしまったか」
重心が片方に偏っていたので、多分そうだろうなと思っていたのだ。
俺はギンコさんの、怪我してる方の足に触れる。
「減重」
「! なるほど……身体にかかる重さを軽減してくれたのだな」
体重を支えるのは足。足が怪我してるとき、体重の分、足に負荷がかかってしまう。
だから俺は体重を限りなくゼロに近づけ、彼女の足への負担を減らしたというわけだ。
「その人、足怪我してるのっ?」
「ああ」
「よっしゃ! じゃああたしが肩かすよ!」
「助かるよ」
リィナが近付いてきて、ギンコさんに肩をかす。
「ありがとう。お嬢さん」
「えへへ♡ で、ガイアさん。この人達は?」
「Sランクパーティ、銀の剣の人たちだ」
リィナが「へー……へぇあ!? え、Sランク!?」
あわあわ、と慌てる。
「す、すす、すみません! 駆け出しの分際で話しかけちゃって……!」
「気にしないでくれ、リィナくん……だったかな。ありがとう。ポーションを分けてくれて」
「いやぁ~♡ えへへ~……♡」
ギンコさんは俺を見て、首をかしげる。
「ガイアくん。君はたしか、オクレールのパーティに所属してなかったか……?」
「ええ、追い出されまして」
「はぁ……!?」
冷静なギンコさんらしからぬ、大声で驚く。
「ど、どうしたんです……?」
「……オクレールのアホ。アホだアホだと思っていたが。まさかパーティの屋台骨を捨てるとは……馬鹿すぎる……」
リィナは「屋形船……?」と首をかしげる。
「ああ。黄昏の竜は、ガイアくんが支えていたようなものだからな」
「ふぇ!? そうなの!?」
「いや……大げさですよ。俺は、あいつらが言うとおり、サポートしかできない人間ですし。戦えないですし……」
……脳裏に、燃えさかる村と、村人達の悲鳴がこだまする。
ぎゅっ、と自分の腕を、強く握る。
「そんな顔をするな。君は戦えずとも、それ以外で活躍していた。それこそ、素人集団をSにするほどの、すさまじいサポートの腕を持っている。私は君のその腕を高く評価していたんだぞ?」
「そ、そうなんです……?」
「ああ……。ふむ……どうだろう。帰ったら食事にでも……」
と、そのときだった。
ずずうぅうううううううううううん………………。
「……また地震?」
地震はすぐに止まった。
「ギンコさん。そういえば、どうして閉じ込められていたんですか?」
「我々はこの鉱山に住み着いた、岩蜥蜴を討伐にきたんだ。その道中、地震が起きて、落石により通路を封鎖されて、困っていたのだよ」
なるほど……。でも、解せないことがあった。
「ギンコさん。あなたたちはSランクだ。岩蜥蜴は、Bランク」
「……ふっ。さすがだな」
リィナが「ほえー? どういうこと?」と尋ねてくる。
「魔物のランクっていうのは、その冒険者が余裕で一人で倒せるって意味なんだ。つまりBランクの岩蜥蜴は、Sランクの彼女たちからすれば、超余裕で倒せる相手」
「?」
「なのに、ギンコさんは怪我をしていた。落石による怪我? いや、だとしたら彼女だけ負傷してるのはおかしい。Bランクに彼女が後れをとるはずがない」
俺は、ギンコさんに尋ねる。
「ギンコさん。何と戦って、負傷したんですか? Sランクの貴方を怪我させるくらい、やばい奴がいるんですよね?」
ギンコさんは「さすがだね」とつぶやく。
「やはり君は聡明だ。……そのとおり。私たちはこの鉱山で、妙な魔物と出会ったのだ」
「妙な……魔物?」
「ああ。そいつは……おかしな力を使った。我々はそいつに手も足も出なかったよ。負傷したのはそのときだ」
「…………」
Sランクの彼女らでも、倒せなかった敵が……ここに……?
「ダンジョンでもない、こんなところに、Sランク魔物がいたってことですか?」
「……うーん」
「ギンコさん?」
「すまない。さっきは魔物といったのだが、確証がないんだ」
「というと?」
「そいつは……人の形をしていたんだ」
リィナたちは、首をかしげる。
でも……。
人の形をして、謎の力を使う存在……。
俺は、それに心当たりがあった。
ギンコさんに近寄る。
「そいつはどこに!?」
「え? あ、ああ……私たちをたたきのめした後、どこかへ行ってしまったよ」
今度はノエルが首をかしげる。
「……どこかにって……。鉱山の出入り口は一つしか無いわ。わたしたちは会ってない。そいつはどこから出て行ったの?」
「天井に穴を開けて、出て行ったわ」
「……鉱山の? なにそれ……」
ノエルの疑問は、もっともだ。鉱山の壁をぶち抜くことなんて、簡単にできることじゃあない。
……でも。
俺には、それをできる【やつら】に、心当たりがあった。
「…………」
「どうしたの、ガイアさん?」
「あ、いや……。すまん。とりあえず、ここを早く出よう」
もうそいつはここに居ないだろう。が、万が一ってこともある。
さっさと退散した方がいいだろう。
「……謎の力を使う、人のような魔物……それってまるで……」
ノエルが、俺をじっと見つめ、そんなことをつぶやくのだった。
【★☆大切なお願いがあります☆★】
少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!