表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/43

01.地味職、追放される

https://ncode.syosetu.com/n2939la/

こちらの連載版です。

「ガイア! おまえを、このパーティから追放する!」


 その言葉が出た瞬間、宿屋の一室がしん……と静まり返った。


 ここは、王都メルヴァール近郊。Sランク冒険者パーティ【黄昏の竜】が遠征から戻り、勝利の酒盛りをしていたはずの場所だ。


 その中心にいたのは、パーティのリーダー、オクレール=ウォートル。筋骨隆々の大剣使いで、勝気な性格の男だ。


 そして、その彼が真っ赤な顔で酒をあおりながら、俺に指を突きつけていた。


「……え?」


 一瞬、言葉の意味がわからなかった。


 俺――ガイア・グラヴィスは、Sランクパーティ【黄昏の竜】の一員として、今日まで任務に参加していた。


 特に今回は、危険等級Sの地岩竜ベヒーモスを討伐したばかりだったのだ。


「おまえ、もういらねえんだよ」


「……冗談だろ、オクレール」


「本気だ。おまえはもう、用済みだ」


 あまりに唐突な追放宣言に、俺は思わず立ち上がる。周囲には、他のメンバー――メスガッキとイエスマが座っていて、それぞれ嘲笑気味の顔をしていた。


「そーよガイア。あんた、戦闘じゃまっっったく役に立ってないしぃ~?」


「でゅふふ、後ろから付いてきて荷物持ってるだけの存在ですからな!」


 二人の言葉に、胸の奥がじわじわと熱くなる。


 ……こいつら、本気で言ってるのか?


 ──この世界では、生まれながらにして“職業ジョブ”と呼ばれる力を授かる。


 それは神より与えられる“生きるための才能”であり、冒険者という職業においては、戦闘能力を左右する最重要の要素だった。


 剣士、魔法使い、僧侶、盗賊――そういった戦闘系のジョブは、前線で敵と戦い、仲間を守り、パーティの力となる。


 ……そんな中で、俺に与えられた職業は【重力使い】だった。


 初めてそのジョブ名を聞いた時、俺自身も困惑した。


 重力を使う……?


 意味がわからなかった。攻撃力は無いし、回復もできない。火や氷のような魔法を操るわけでもない。


 ただ、物の“重さ”を変えることができるだけの、地味な職業。


 その能力で、俺は“ポーター”――荷物持ちとして、このパーティで役割を得ていた。


 アイテムや素材の持ち運びを補助し、魔法使いや盗賊の身軽さをサポートし、誰よりも地味に、裏方として貢献していた。


 ……それが、今日。


 討伐の帰り道、ある魔道具を手に入れたのだ。


「こいつを見ろ、ガイア。これが何かわかるか?」


 オクレールが見せつけるように、小さな革袋を持ち上げる。


 深い藍色の装飾がほどこされた、それは明らかに高級品だ。


「それ……【無限収納の魔法袋】か」


「そうだよ。容量無制限、重量無視。素材でもポーションでも、ガンガン詰め込める。これさえあれば……」


 にやりと笑うオクレールの顔が、まるで悪戯をたくらむ子供のようだった。


「おまえ、いらねぇんだよ」


 ──ああ、そういうことか。


 俺が今まで評価されていたのは、“荷物を軽くする”能力が便利だったから。


 でも、この魔法袋があれば、もう重さなんて関係ない。荷物も素材も、誰かが持つ必要なんて無い。


 なら、ポーターは用済み。


「おまえのジョブ、【重力使い】だっけ? 名前からして地味だし、何ができんだよって話だよなぁ?」


「ま、攻撃魔法もねーし、剣も振れねーし、せいぜい荷物軽くするだけって……それ、ジョブって言えるの?w」


 メスガッキとイエスマの追い打ちに、ぐっと唇を噛む。


 言いたいことは山ほどあった。


 たとえば、オクレールが使ってる【竜殺し】の大剣は、もともと重すぎて扱いきれない代物だった。


 それを俺が重力操作で軽くし、振れるようにした。


 たとえば、メスガッキが敵陣に潜入する時、俺が彼女の身体の重さを極限まで軽くし、無音で動けるようにした。


 たとえば、イエスマの土魔法も、岩弾を軽くすることで、より遠くまで撃ち出せるようにしていた。


 ……全部、言ってやろうかとも思った。


 でも、彼らは最初から、俺が“ただの荷物持ち”であることにしたかったのだ。


 俺の能力がチームに不可欠だと認めてしまえば、自分たちの見方が間違っていたことになる。


 だから、気づかないフリをした。都合のいい道具として扱って、それが壊れたら捨てるだけ。


 そんな扱いを、ずっと、されていたんだ。


「じゃ、そういうことで。ガイア、おまえは今日で追放だ」


「もう、あたしたちの前に顔出さないでね~。気分悪くなるしぃ」


 メスガッキが、オクレールの腕にしなだれかかりながら、にやりと笑う。


 その光景を、俺はただ黙って見つめた。


 何も言い返さず、何も主張せず。


 荷物も持たず、扉に手をかける。


「……わかった。じゃあ、元気でな」


 扉を閉める瞬間、背中越しに最後の声が届いた。


「二度と戻ってくんなよ、雑魚が!」


 外に出た。


 街の灯りが、やけに遠く感じた。


 ……全部、無駄だったのか?


 影のように支えてきた日々。誰よりも仲間のために尽くしてきたつもりだった。


 けれど、重さは目に見えない。


 どれほど価値あるものでも、“なかったこと”にされるからな……。

【★☆大切なお願いがあります☆★】


少しでも、

「面白そう!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、

広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、

ポイントを入れてくださると嬉しいです!


★の数は皆さんの判断ですが、

★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、

最高の応援になります!


なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人を視る目無いな! ランクも重力のごとく転がり落ちる!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ