第3話:「黒人山田」がバズった日。
朝、スマホの通知音で目が覚めた。
「……何これ。」
LINEじゃない。Twitterでもない。
TikTokの通知欄が、爆発していた。
《#黒人山田》《#ラップで泣いた》《#文化祭でやってほしい》
えっ、は?
ちょっと待て。
「やばっ、伸びてる〜!」
背後から声が飛んでくる。
振り向けば、教室の入り口でミオがスマホを振っていた。
「お前……まさか、昨日の?」
「うん。ノートのやつ、ちょっとだけ録音してあったから、アップした! 編集もちょっとしたけどね?」
「ふざけんなよ!!」
「いやいや、ほら見て。コメントも“エモい”とか“マジ共感”とか。アンタの言葉、ちゃんと届いてる!」
ミオは悪びれた様子ゼロ。
逆にちょっと誇らしげ。
「勝手に晒すとか……」
「でも見て。
“自分もハーフで悩んでたけど勇気出た”とか、
“こんなやつが同じ学校にいるのか”とか、そういう声、来てるよ?」
「……。」
スマホを受け取り、コメント欄を眺める。
確かにあった。
ふざけたスタンプコメントの中に、心のこもった言葉が混ざってる。
“ありがとう”
“あなたの言葉、刺さりました”
……ヤバい。
胸が、熱い。
「アンチもいる。笑ってるやつもいる。でも、ちゃんと届いてるよ。」
「……どうすればいいんだよ。」
「決まってんじゃん。続きを、聞かせてよ。」
「……やるしかねぇか。」
そのとき、初めて声に出した。
俺の言葉が、誰かに届くかもしれない——
そう思った瞬間だった。