石鹸とマニキュア
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「なあ、幸子」
「何さ?」
「お前、風呂の時の石鹸を変えたのか?」
「普段の口調で何を言いやがるのさ!」
「いや、なんか良い匂いがするからさ。今までそんな事は無かったと思うんだが……」
「~~!! か、変えたのは事実さ。ミルミル男爵から貰ったのさ」
「ミルミル男爵から?」
「そうさー。シャイダイ男爵領からの輸入品さー。果物の香りの石鹸さ。こっちも特産品らしいのさ。色々と試行錯誤をしていたらしいのさ。それが成功したからこうして入手したらしいのさ。今は人間の女性や女性のソウルメイトが試している最中なのさ。試供品さ」
「ああ。なるほどな。開発したけど、売り物になるのかどうかをこっちにもテストしてくれって送って来たのか。それでソウルメイトで女性である幸子にも白羽の矢が当たったと」
なるほどなあ。石鹸か。良いものを作ったな。美容品って女性受けが良いからなあ。特産品としては上等な物になるだろう。いや、かなり良い匂いがするんだよ。何の果物かと言われたら解らないけど。何種類か混じっているような感じがするんだよな。
「それで? 使い心地はどうなんだよ? 輸入を考えてみても良いと思うくらいには匂いが良いからな。女性受けすると思う。でも、使い心地は別問題だろう? どうなんだ?」
「使い心地も良いのさ。肌に優しい感じがするのさ。こう、すべっとする感じなのさ。これは良い物さ。あたしも大満足なのさ」
「ほう? ……ふむ。もちもち肌というよりはすべすべ成分が勝っている気がするな」
「突然触りだすんじゃないさ! セクハラさ!」
「いや、触ってみないと解らない事もあるだろう?」
「お前が確認するんじゃないさ! 確認するにしても一声かけるさ!」
「いや、一声かけたら拒否するだろ?」
「当り前さ! 誰が触らせたいとか言うかさ!」
「だろ? じゃあ確認せずに触った方がいいだろう。どうせ拒否られるんだから」
「触らないって選択肢は無いのさ?」
「無いな。だが、良い感じの石鹸なら輸入する価値はあるな。定期的に入ってくるようにするか」
女性陣のやる気に繋がるなら良いんじゃないのか? 正直よく解らないけど、すべすべしていたのは間違いない。石鹸か。確かに特産品としては上等な品だろう。消耗品でもあるし、高級品でもある。しかも女性受けが良いというのも強い。特に美容関係の品物は女性受けが良いんだ。こっちも何かしら開発しないといけないのかもしれない。塩だけに頼っているのは健全じゃないからな。戦略物資である塩は、ある程度の価値にしかならない。酒も好調ではあるんだが、こっちは男受けが良いものだからな。財布の管理を女性がしている場合、酒はあまり売れない可能性もあるんだよな。……軍事関係の所からの受注は多くなるとは思うんだけど。
「こっちも何か美容関係の商品を開発するか? 女性受けが良いものに関しては、財布を握っているのであれば、かなりの収益が見込めるんだよな」
「こいつ……。まあ、美容関係の物を作ってくれるのは有難いさ。使いたい放題ってのは良い事なのさ。でも、お隣と競合する商品は流石に止めておくのが無難さー。関係を悪くするだけなのさ」
「まあなあ。そうなんだけど、石鹸とは違う路線で攻めれば良いだろ? ……幸子は何か欲しいものはあるのか?」
「あたしはあんたの常識が欲しいさ。その常識を摩り込んでやりたいのさ」
「特に欲しいものは無いと。不足しているものは無いのは良い事だけど、商品開発的にはどうなんだって感じがするな」
「全く動じてないのさ……」
「うーん。そうだ。幸子、爪の色を変えられる製品はどうだ?」
「爪さ? うーん。悪い事ではないとは思うさ」
「赤とか白とか黄色とか、気分で爪の色を変えられる製品があれば、売れるとは思わないか?」
マニキュアだな。簡単に落ちない様にするには工夫が必要かもしれないが、出来ないことはないだろう。作れない訳では無いと思う。そういった召喚獣を探すのは難しいかもしれないが。美容系の神様とか、そういった召喚獣が必要になる可能性がある。もしくは錬金術が出来る召喚獣とかな。居ないことは無いから、呼び出して作ってみるのも有りかもしれない。
そうだな。錬金術関連で探してみるか。化学製品だと思っていては視野が狭い可能性がある。思っても見ない所から商品が出てくるかもしれないし、錬金術は有りだと思うんだよな。……召喚獣が限られ過ぎているから、ちょっとばかり苦労はするとは思うが。呼べないことはないと思う。
「錬金術が出来る召喚獣を呼んで、職人に研究させるのも有りだと思うんだが、どうだ?」
「やってみるのも良いんじゃないのさ? 試しにやってみるのも面白いのさ。気分で爪の色が変えられるのも楽しそうさ」
「手や足の爪を綺麗に出来ると言うのであれば、結構需要がある気がするんだよな。特に最近は黄金が余ってきているからな。赤に小さな黄金を散りばめらせても良いと思うんだよ。映えそうな気がしてくると思うんだよ」
「今すぐには無理なのさ? 試すには早い方が良いのさ」
「召喚獣を選ばないといけないからな。兼平と相談しながらになるだろう。錬金術師ってなると、トリスメギストスが良いんだろうけどな。ヘルメスだと商業神の方が強く出てくるし。その他にもパラケルススなんかもいいだろうが、どうするか」
「何でも良いのさ。試供品が出来たら試してやるのさ。最低でも赤、青、黄色、緑、紫、橙、黒、白は欲しいのさ。爪に絵が描けるくらいの物が良いさ」
「そうなると混ざらないような何かも欲しい訳か。錬金術でどうにかなるのかね?」
「知らないのさ。そもそも錬金術なんて詳しくないのさ」
「割と重要なんだけどな。ポーションとかも錬金術の範疇だし。そうなるとクリエミルツ辺境伯家が錬金術師を多く抱え込んでいるんだよな。俺たちの領地にも居ない訳じゃないけど」
ポーションを専業にしている人は結構いる。けど、素材が高価で集まらないんだよ。畑で収穫できるようにするには、土壌改良や何からまでを色々としないといけない。分野的には錬金術も使うんだよな。問題は広大な畑が必要になるって事くらいなんだけど。薬草栽培って結構難易度が高いんだよ。まあ、マニキュアを作るのも同じくらいの難易度なのかもしれないけど。錬金術ならなんとかしてくれる可能性があるんだけどな。
そうと決まれば、兼平に相談するか。呼ぶならなるべく多くの錬金術関連の召喚獣を呼んだ方が良いのかもしれない。専門が違うとか言われたら困るもんな。錬金術に関係する塔も当たりは付けてあるので、後は道具やら確率上昇系のアイテムを選ばないといけないだろう。戦争が始まろうとしているのに、そんな事をしていてもいいのかって疑問はあるだろうが、戦争が終わったら日常が始まるんだ。こういうのは日常だけでやっていたら先を越されるんだ。戦時中でもやらなければならない事なんだよ。美容関係の話をしなければならないのかって言われると、微妙な所があるんだけど。
消耗品でってなると、中々に絞られるからな。軍事物資でない方が良いんだ。特産品として売り出すには、軍事物資よりも日用品の方が売り出しやすいし、平民でも買いやすいからな。特産品のアイディアが出てきたら、即座に研究するくらいじゃないといけないんだよ。何が当たるのかは解らないんだ。全部がヒット商品になるとは限らない。何でも試してみるべきなんだよ。まあ、錬金術の召喚獣にも興味があるし、呼ぶ分には問題ないよな。




