王城の前で
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そんな訳で、王都までひとっ飛びでやってきた。勿論だが、フレスベルグで乗り込む様な事はしない。流石に攻め込む様な事はしないでおく。真っ当に貴族になりに行くんだ。後はどうやって城に入り込むのかなんだけど、どうしようかね? 普通に門番と話をしないといけない感じか? そうしないと、何も伝手も無いからな。本気で貴族になりに来たという事を伝えないといけない訳なんだけど、どうするか。
因みに奴隷たちはお留守番である。スドルト町の冒険者組合に託してきた。ダンジョンを攻略するのには何も支障がないんだけど、身元の保証が必要だろうし、そこそこの資金も必要になるだろうという判断だな。俺が居なくても周回は可能だ。ちゃんと1000層で周回をする事が決まっている。5人が協力すれば、そこまで無理な事ではないんだよ。効率は流石に落ちるけどな。でも、ちょっとずつではあるが、地図を覚えさせている。3年も経ったら、自分たちだけで簡単に周回できるようになるはずだ。そのくらいの時間はかかると思っている。検証班も人海戦術で特定していたんだし、その辺は覚えて貰うしかない。
「王城まで来たが、兵士が10人くらいで守っているな。門は閉じたままだし、どうするかね?」
「正面突破する気はないのさ?」
「無いな。喧嘩を売りに来た訳では無いんだ。見てみろよ。上の方にも数人見えているんだぞ? 最低でも20人くらいは相手にしないといけない。それじゃあ面倒じゃないか。殲滅が得意な訳では無いんだし」
「それもそうさ。正攻法で行くなら、普通に交渉するのが一番さ。でも、そんなスキルがあるのさ? そこが一番の問題さー」
「解らん。俺も初めての事なんだ。貴族になりに来たなんて言って、すんなりと通れるとも思えないんだよな。……責めて伝手があれば良かったんだろうが」
貴族になんて知り合いは居ない。そもそもエルフの貴族が居ないんだからどうしようもない。この国の貴族は基本的に人間だという事だからな。まあ、なる様にしかならないが。
「行くぞ。なる様にしかならない。最悪は強行突破になるんだろうが、そんな事はしたくないんだがな……。やらなければいけないのであれば、そうするだけだ」
「了解さー。まあ、楽しい見世物にはなるさ」
そうだろうな。隣で笑っていれば良いだけの幸子は楽でいいだろう。俺はかなりの事をやり遂げなければならないことになるんだがな……。
「済まない。少し良いか? ……貴族になりたいんだが、どうすればいい?」
「はあ? 貴族に? 無理無理。平民が貴族になれる訳がないだろ? とっとと帰んな」
「そうか。平民が貴族になった例は無いのか?」
「無い訳じゃないが、子供が貴族になれるかどうかって話だ。無理だから諦めな」
「それなら実力行使で通してもらう事は可能か? もっと上の人に判断してもらうという方法で行っても構わないんだが」
「っは! 笑わせてくれるな! そこのソウルメイトで何が出来るって言うんだ。こっちのソウルメイトの方が強い。とっとと帰んな」
「お前を倒せば認めて貰えるのか?」
「俺を倒す? 出来たら一応話は通してやるよ」
「なら、やるだけだな。剣を抜いてもらおうか」
……交渉の余地なし。というか、交渉のやり方が解らない。結局は武力でなんとかする羽目になった。交渉の方法なんて知っている方がおかしいんだ。俺は平民なのは間違いない。口先でどうにかできるのであれば、こんなことにはならなかったんだろうが。
「さあさあ、賭けるさ! どっちが勝つか賭けをするのさ! 胴元はあたしがやってやるのさ!」
「お、ソウルメイトの嬢ちゃん、話が解るじゃねえか」
「俺は勿論ジェイに賭けさせて貰うぜ。負ける訳がないだろ」
「お前もジェイに賭けるのかよ。俺もジェイに賭けるがな」
「なら俺はエルフの坊主に賭けるか。そっちの方が実入りが大きそうだ」
「ジェイが負ける方に賭けるのかよ。こいつから金を毟り取るだけになっちまうな」
「早くするさ! 勝負が終わってからじゃあ賭けにならないさ!」
……幸子の奴は何故か兵士と仲良くなって賭け事をしてやがる。あいつに交渉を任せた方が良かったか? あそこまで仲良くなれるのであれば、何もしなくても入れて貰えたんじゃないかと思えてくるな。まあ、始まってしまったものは仕方がない。こっちも出来るだけ怪我をさせないように戦うしかないか。
向こうは赤鋼の剣と盾を持っているな。対して俺はヒヒイロカネの剣と盾を持っている。……武器の差は圧倒的だ。同じ赤系の色だから解りにくいかもしれないが、こっちは目利きが出来るから。そのくらいの事は出来るつもりだ。向こうが出来ているのかは知らないが、剣と盾を叩き切らないように立ち回る必要があるだろうな。そうじゃないと無効とか言われかねない。
「へぇ……。構えは様になってんな。だが、隙だらけだぜ!」
「ふっ!」
当然誘いである。そこに攻撃して来いって隙をあえて作ってある。そのくらいの事は出来る。伊達にゲームで戦ってないからな。剣術はある程度の事は出来るんだよ。現地人に使ったのは初めてだけどな。
当然のように相手の剣を払いのける。が、すぐさま連撃の用意をしてきた。……遅いがね。連撃の用意ではなく、連撃をして来なければ、こちらに被害は出ないぞ。そのくらいの事は解っているかと思ったんだがな……。素直に攻撃をしてきただけだった。
「っく! このっ!」
「息切れが早いぞ。こっちはまだまだ余裕だがどうするんだ?」
「クソが!」
躱し、弾き、いなす。こちらはまだ攻撃していない。……攻撃するときは終わりの合図だ。だが、長引かせるのも悪い。ここらで終いにしようか。首元に剣を突きつける。
「チェック。さて、こうなった訳だが、上に説明をしてくれるか?」
「……参った。ここまで強いとは思ってもみなかった。……保証は無いぞ? 一応は話を持っていってやるが」
「ああ、一応で構わない。無理なら強行突破するだけだ」
「……今なら本気だって解るさ。説得してくるから暫く待て」
賭けをしていた野次馬が罵声を浴びせる。負けた方はそりゃあな。文句の1つも言いたいだろう。そもそも賭けなければ良かっただけの話ではあるんだが。兵士なんて娯楽の少ない仕事だ。ダンジョンにでも行けるのであれば、多少の娯楽にはなるんだろうが、そんな暇があるのかどうかが解らない。
「あんたもこっちに来るのさ! 胴元の仕事が残っているさ!」
「いや、賭けをしていたのは幸子であって、胴元の仕事って言ってもな……」
「そもそもお金を扱えないさ。払うものは払わなければならないのさ!」
「よう! 派手に勝ってもらって嬉しいぜ! 俺の今日の晩飯は豪華になりそうだ」
「まさかジェイの奴が負けるなんてな。思ったよりもやるな」
「何でまた貴族なんかになろうと思ったんだ? そんだけ強ければ兵士でも冒険者でも稼げるだろ」
「まあ、色々とあってな。冒険者は今までやってきた。もの凄く楽しんだつもりだ」
「散々付き合わされたのさ。そろそろ落ち着いた方が良いのさ」
「まあ、地元の貴族がクソでな。それで取って代われるならって思って来た次第なんだ」
「あー、糞貴族の事か。居るよなあ、そういうの」
「出来ない奴に限って威張り散らすからな。迷惑でしかねえ」
「よっぽどの所から来たんだな。そこまで糞だったのか」
まあ、糞だろうな。ゴミ未満の貴族だ。糞ならまだ肥料としての価値がある。糞に失礼だと思うぞ。あれはただの害悪でしかない。息子があれなので、親の方も大体想像がついてしまう。冒険者組合からも毛嫌いされていたしな。変えられるのであれば、変えてしまいたいって感じだろう。




