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闘えベビー!!

作者: 鈴音あき

毎日どこかから鳴き声が聞こえてくる。

頑張って自分の思いを伝えようと藻掻く、小さな命の叫び。

赤ん坊の泣き声は力強く生きようとしている真っ最中!




今日もどこからか小さき者の頑張る声が聞こえてくる。





懸命に生きようとしている。


何とか自分の要望を伝えたいと!


しかしながら、その訴えはなかなか実を結ぶことはないのだ。


なぜ?


どうして分かってくれない!?


どうすれば己の欲望を満たせるのか!


「おはよう坊や。もう起きたのかい?」


大きな手が吾の身体を軽く持ち上げて揺する。


「遊んでほしいの?」


幼い声が聞こえて吾の柔らかい頬を突いてくる。


違う! 吾はひもじいのだ!


誰でも良いのだ、腹がくちくなるまで美味いものをよこせ!


……否。美味くなくてもよい!


不味くてもなんでも良い!


贅沢は言わぬ!


吾は腹を満たしたいのだ~!




今日も何度泣いたのか分からない。


数えるだけ虚しくなるので止めた。


「あら、何で泣いているのかしら?」


「この泣き方は抱っこかな?」


違う! 吾は尻が濡れて気持ち悪いのだ!




吾と暮らし始めて時が経つというのに、まだ吾の要求が一度で通じた事がない……。


「弱々しい泣き方だなぁ。もしかして何かの病気!?」


「まぁ、それは大変!」


「医者に連れて行こう」


「予約しなきゃ」


バタバタと何処かに連絡したり出かける準備をしているようで落ち着かない。


違う~! 吾は眠いのだ!


眠いのに誰かが煩く話しかけてくる。


煩わしくて敵わん!


眠いのに眠れぬ!




「あらあら、どうしたのかしら?」


「どうしたんだ?」


「どうしたの~?」


「お腹空いたのかしら?」


「オムツが汚れたのか?」


「分かった! 遊んでほしいのね!?」


「ほら! 高い高~い!」


吾は喋る事が出来ぬだけで、なぜこんなにも理不尽に放り投げられることになる~!?


吾は高い高いは嫌いなのだ!


何故そんな笑顔で我を乱暴に扱うのだ~!?


もう嫌だ!


こんな世界は嫌いだ!


吾は帰る!


帰らせてくれ!


帰りたい!


「あははは」


「うふふふ」


吾はどうしてこんなところに来てしまったのか!


帰りたいのに帰らせてくれぬというのか!


吾はいつまでこんな理不尽な世界で耐えねばならんのだ~!


神よ、吾は神に何か不敬を働いたのだろうか!?


ならば改めます!


どんな罰でも受け入れます!


ですから、どうかこのとんでもない世界から救いだして下さい!


もちろんこんな願いが聞き届けられるわけがなく、吾はまだまだ続く意思疎通ができないイライラを泣いて訴えるのだが、なかなか理解してもらえず、日々彼らの行動を観察して学ばねばならないのだ。


吾が快適にこの世界で暮らせるようになるまでには相当な時間が必要だった。


人の子として生きる事になった吾の受難は寿命が尽きるまで帰ることはできないと知ったのは、それから10年後の洗礼式での事。


神官から神の祝福を賜る時に聞いた話の中で呆然とする。


それまでに吾はすっかり姉や近所のガキ大将に屈服させられ、理不尽な扱いは続くのだ。


吾は何故か赤子のころの記憶が少しだけ残っていて、あの頃の悲しいまでの自分の要求を悉く間違えて世話をされていたことを覚えているのだ。


ふと聞こえてくる小さな子供が泣く声を聞くたびに吾は「がんばれ」とエールを送っている。



小さき者たちの叫びを煩いなんて言わないであげてください。

彼等も必死に生きている。

嘗ては自分もそうだったはず。



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