3話 教会ギルドと盗賊団
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
僕は城下町をとぼとぼ歩いていた。王に面会するのが容易ではないとわかった今、もう何していいか全くわからないのだ。
その時、僕の前に一人の男が現れる。パッとみた感じ盗賊っぽい感じである。まさか僕の持っている緋色のネックレスを狙っているのか、、?
「おい、兄ちゃんその袋の中身を置いていくんだな!」
思った通りか・・・。でもこのネックレスはおそらく重要なもの・・・。どうにかして渡さない方法はないものか・・・?
僕が迷っていると、盗賊は近づいてきて僕の腕を掴んで言う。
「おい!お前聞こえなかったのかぁ!?早く出せやごら!」
盗賊は懐から剣を取り出し僕に突きつける。
まずい!このままでは・・・!そう思ったその時だった。
「石よ、我が呼び声に応えよ。相手を堅く、不動の岩に変え、動きを封じ、永遠の石とならしめよ。硬化!」
どこからか呪文が聞こえた。盗賊は石のように固まっている。硬化呪文とかだろうか。
「大丈夫ですか!」杖らしきものを持った青年が駆け寄ってくる。
青年は眼鏡をかけている。
「よかった、、怪我はないようですね、、。」青年は僕の体に怪我が無いか確認する。
「あっ、申し遅れました。私はホアン・カニャルドと申します。教会で僧侶見習いをしています。」
ホアンと名乗った青年は僕と同じぐらいの年齢にみえる。
「あ、僕は進藤枢。助けていただきありがとうございます。」
「いやいや全然・・・。カナメさん・・・。変わったお名前ですね。」
そうだよな・・・。進藤枢なんて思いっきり日本人の名前だもんな・・・。
「今日の宿がないので困った、、、。と言う顔をしていますね。教会の寮に余った部屋があるので泊まっていきませんか?」
なんでわかったんだ・・でもこの人は悪い人じゃなさそうだ。
「あ、なんか色々とありがとうございます・・・。」
僕はホアンについて行き教会の前までやってきた。
教会の前の掲示板には紙が貼られている・・・。言語は全く知らないはずなのになぜか読める。
『盗賊団討伐隊 募集中! 教会ギルド:キンシップ』とかかれている。
「それですか?最近化けの森に盗賊団がいて町にも出没して困ってるんですよね、、さきほどの盗賊もおそらくその盗賊団だとおもいます・・・。」
「なにか被害は出ているんですか?」
「いえ、まだ何も。ただ、いつ襲われるかもわからないので冒険者の皆さんには警戒してもらっているのですが・・・。」
ホアンは困った顔をしながら言った。
僕は掲示板に貼られた紙を見る。そこには盗賊団の特徴が書かれていた。
・盗賊団のボスはは3人いる。
・男二人、女一人である。
・武器は主に剣を使う。
・防具は軽装で動きやすいものである。
・魔法は使わない。
その時教会の扉があき、神父らしき男が出てきた。
「やあ、ホアンくん、こんばんは。」
「あ、司祭様。こんばんは。」
どうやらここの神父のようだ。
「また街中に盗賊が現れたようだね・・・。ホアン君が退けてくれたようだね・・・。ありがとう・・・。ん?キミは・・・。ゆ、勇者様・・・⁉」
また勇者・・・。
「あ、、いえ、、僕は違くて、、。」
「勇者様・・・!い、いえ、実はですね・・・。」
僕の言おうとしたことはかき消された。
神父が何か言おうとしたとき、教会の扉が再び開き今度はシスターが出てきた。その後ろには子供もいるようだ。
「あ、あの・・・!」
「ん?」
「お、お兄ちゃんが盗賊団に襲われて・・・!」
「・・・!?」
どうやらこの子供は街の外で盗賊団にやられそうになったのを教会に逃げ込んだようだ。そしてこのシスターが連れてきたらしい。
「あ、あなたが勇者、、⁉」とホアンもいう。
「いやだから違うって、、」僕がそう言おうとしたとき、
「おいおい、、!ちょっとまてよ!そいつは魔法も使えねぇような奴だぜ?そんな奴が勇者なわけないだろうがよ!」
教会の奥から金髪の男が出てくる。
「さっきの見てたぜ?てめぇ盗賊に襲われてた時、何もできてなかったじゃねぇか!」
男の言葉に子供の目に涙がたまる。
「じゃ、じゃあお兄ちゃんは、、!」
僕は神父に尋ねる。
すると、どうやらこの子供は最近この街に来たらしいことがわかった。彼も魔法が使えないため、他の子供たちからいじめられていたようだ。
そのいじめは日に日にエスカレートしていき、ついには化けの森へ肝試しにいけといわれてしまったようだ。
そして盗賊に襲われてしまったようだ。そして助けに来た兄が人質として取られてしまったようだ。
それをこの教会に逃げ込みシスターに助けを求めたらしい。
しかし、シスターが助けに行く頃にはすでに遅く盗賊団は子供を置いて逃げていったらしい。
そこにちょうど僕が現れたというわけだ。
「そして盗賊団は身代金に100万ゴルの大金を要求してきたのです・・・。」
僕は昔から困っている人を見過ごせないタチだ。だがあの金髪の男の言うように僕は魔法を使うことができない。助けたいけど僕には助けることはできない・・・。そう言おうとしたその時。僕の持っていた袋が光った。
緋色の宝石だろうか。僕は袋の中を見た。
しかし、光っていたのは宝石では無かった。謎の少女に渡された筆だったのだ。
僕は光っている筆を取り出す。
「お、おいそれまさか、魔導具か?」
どうやらこの筆は魔導具と呼ばれる物らしい。そして僕は頭に浮かんだ呪文を無意識に呟いた。
「シュピーレン・エルフェン」
すると僕の体は光に包まれる。そして気がついた時には体に羽のような軽さを感じ、手には長い杖が握られていた。
その場にいた誰もが状況を飲み込めずにいた。
「や、やはり勇者様だ、、それはエルフィルと言って、勇者専用の魔導具です。試しにその杖に何か念じてみてくれませぬか、、、。」
と神父は説明をする。
僕は杖を見て「剣になれ!」と念じた。
するとたちまち杖が剣に変わったのだ。
すごい!勇者様!その杖はどんな形にも変わります!」
シスターは目を輝かせながら言うが、僕はこの杖の凄さより、この魔導具をくれた少女の方が気になっていた。
あの少女、、無事だろうか。
「お、お兄ちゃんすごい!」
子供は目をキラキラさせて僕を見る。
しかし、盗賊団の要求は100万ゴルだ。とてもそんな大金を持っているわけが無い・・・。
いや、これがあれば盗賊団に勝てる気がする。僕は覚悟を決めた。
「僕、盗賊団を倒しに行きます。」
そういうとさっきの金髪の男が突っかかってくる。
「あぁ!?お前急に来て調子乗ってんじゃあねぇぞ!盗賊団をぶっ倒すのは俺だ、、!」
そう言って金髪の男は一人で行ってしまった。
「大丈夫です!私もついていくので・・!」とホアンも行く気満々のようだ。
「そんなことでしたらわたくしもついて行きますわ!攻撃魔法は得意ですのよ!」とシスターも言う。
神父は「そう言うことなら仕方ない。」と言い僕達に簡易テントを渡す。
「この簡易テントには魔物を寄せ付けない特別なエキスが塗っているので夜も安全です。持っていってください。」
そして僕と、ホアンとシスターの三人は化けの森の盗賊団を討伐しに行くことになった。
続く
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