2 因果ト応報
英樹が大学の教授のオフィスに到着したとき、教授は不穏な表情をしていた。部屋の中は静まりかえっていて、雰囲気が重苦しかった。
「英樹君、ありがとう。急な呼び出しに応じてくれて。」教授は言ったが、その言葉には何か隠された緊張が感じられた。
「どうしたんですか、教授?こんな夜中に。」英樹が尋ねると、教授は深呼吸をし、重大な表情で口を開いた。
「英樹君、君の家族の死亡事件について、新たな情報が出てきたのだ。」教授の言葉に英樹は驚きを隠せなかった。家族の死にまつわる謎は彼を長い間苦しめてきた。
「何の情報ですか?」英樹が疑問を投げかけると、教授は冷静な声で続けた。
「事件現場で見つかった手紙が解読された。それには、驚くべきことが書かれていた。」
英樹は興味津々の表情を浮かべ、「その手紙には何が書かれていたのですか?」と尋ねた。
教授は深いため息をついてから言葉を紡いだ。「手紙には、家族の死は決して事故ではなく、計画的なものだったと記されていた。そして、犯人が君自身であると示唆されているのだ。」
英樹の心臓が一瞬で止まったかのように感じられた。家族を殺害したのは自分なのか?しかし、彼にはその記憶が全くなかった。
彼の心理学の知識が急速に頭の中で働き始め、自身の心の闇を探り始める。
「それは…信じられない。」英樹が呟くと、教授は優しい目で彼を見つめた。
「君が無実であることを願っている。だが、真相を解明するためには、君自身もその過去に立ち向かわなければならないだろう。」
手紙のDNA鑑定の結果が待ち遠しい中、英樹は事件の状況を振り返りながら家路についた。死体を発見したとき、彼はその出来事に特別な感情を持たなかった。彼の心は冷静であり、事件に対する興味もそれほどなかった。人が死ぬことへの関心がないという彼の性格は、彼自身にとっても謎であるが、それを受け入れることにした。
「因果応報か……」英樹は考え込んだ。彼は人生の摂理について深く考えることが多かった。しかし、今回の事件について、彼は特に過去の因果関係に注目した。死体の発見は、彼にとってただの偶然ではなく、何か重要なメッセージを持っているように感じられた。
家に戻り、英樹は事件の捜査に再び集中することにした。しかし、彼の心の隅にはいくつかの不可解な点が残っていた。
彼は事件の詳細を思い返しながら、急に気づいた。被害者たちの間には何か共通点があるはずだという考えが彼の頭をよぎった。そして、手紙の鑑定結果が何か新しい情報をもたらすかもしれないという希望が彼の胸に湧き上がった。
「この手紙には何か重要なヒントが隠されているのかもしれない」と英樹は考えた。彼は教授にそのことを伝え、一緒に手紙を再び検討することになった。
事件の謎はますます深まり、英樹はその解明に向けて前進する決意を固めた。彼の秀才な脳みそと冷静な判断力が、事件の真相を解き明かす鍵となることを彼は知っていた。