3.一旦この話はオレに預けてくれないか-おぉ、大尉か、この度はご苦労さま-
全44話予定です
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「とりあえず、そうは言ってもここでこれ以上の行動は移せない。なので、一旦この話はオレに預けてくれないか、ゼロゼロ」
恵美は自分がゼロゼロと呼ばれた事で我に返ったようで、
「了解です、大尉」
と返してきた。
「さて、昨日の話の続きだ。とりあえずは現在の状況を調べないといけない、という訳で暗号通信を……」
「昨日ので良かったよね? とりあえずアルカテイル基地とのリンクならもう確立してるけど?」
――流石、気が回るし頭も回るねって、そりゃあコンピューターを埋め込んでるんだもんなぁ。
そんなカズは、
「じゃあ繋いで」
と、それは直ぐにつながり、
「おぉ、大尉か、この度はご苦労さま。日本のみならず、旧マレーシアまでその手中に収めるとは。被害は出なかったのか?」
と聞かれるので、
「予定より少しばかり遅れましたが、ほぼ順調です。データ取りも少しですが出来ましたし、機体の損害はほぼゼロですよ。今はこれからの事を話し合おうと思い回線を開きました。そちらの状況は?」
研究時に先に繋いだことは伏せてそう聞くと、
「帝国は約束をたがえていない。平和なもの、と言いたいところだが、すこし状況は違っていてね」
「とは?」
「共和国が何か画策している、という情報を掴んだんだ。うちから出している[モグラ]なんだが現在は共和国に居住させている……のはきみも知っているか」
それは、いわゆるスパイというやつである。実際にはガードが固くて政府施設に潜り込むことは出来なかったのだが、共和国の一員として日々生活をしている。
彼が従事しているのはいわゆる[便利屋]というやつである。家の掃除から拉致監禁まで手広くやっている、いわゆるマフィアに潜伏していたのだ。
マフィアという[職業]はとても便利だ。何しろ過去を聞かれる事がない。そして実力によって判断される、というのは何処も同じなのだが。その中でも共和国の第一、第二言語が喋られる彼はそれは重宝された。元々要領もいい人間が選抜されて潜入しているのだ、それくらいは出来なくては困る。
その偵察員が先日[うちで働かないか?]と軍関係者に呼ばれたらしい。もちろんそんな都合のいい話なぞ中々落ちているものではない。直ぐに[身バレ]を疑ったがそんな事もなく詰め所に連れて来られた、というのだ。
そこで[これからひと戦あるので]戦闘員が欲しい、と言われたのだ。
彼は気取られないように細心の注意を払いながら[民間人のオレに何が出来るのか]と尋ねた。
そこで言われた一言。それは自国の軍隊を使うわけにはいかないという。もちろんその理由が知りたいと思いはしたが、そこはあまりしつこく聞くとかえって怪しまれる。なので、
「使い捨てか」
少しカマをかけた。それは見事にヒットしたようで、
「その通り。言葉は悪いが先遣隊になってもらう。まぁ、無事に帰って来られたらそれ相応の金額を出す。それこそ[便利屋]を辞めてしばらくは遊んでいられるほどの、な」
「ひと戦ある、という事は相手はアルカテイル、同盟連合か?」
少しカマが効いたのを確かめたあと少しでも情報を取ろうとすると、
「その通り。そこで新型兵器をテストする、という事に従事してもらう。これは上手くいかないと考えているので当然ながら[捨て兵]を喰らう可能性がある。それでも良ければ」
と言われたそうだ。その場は[少し考えさせてくれ]と適当にあしらって戻って来た。
その情報をこうして基地に送ってきた、というのである。
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