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運動不足

作者: 楽部

 春は昼下がり。やうやう白くなりゆく生え際、をいじりつつソファで寝転ぶ。まどろみのひと手前、ゆるみ心地。付けたテレビを流し見る。食料品がガソリンが値上げ、また値上げと連呼するばかり。


「給料も上がれば、だけどなぁ」


 定年近く、上がり目なし。ポンッ。


 拍子を取りつつ、しまりのない脂肪腹を叩けば、よい音も出る。調子よく、そのうちガスとして出てくるだろう。また、妻には嫌がられるかもしれないが。


 ポン、ポポンッ。


 テレビの中の話題は年金に変わっていた。運用で損失が出てしまいどうたらこうたら、むにゃむにゃ、うやむやと説明されるが、丁寧を繰り返されても納得にはたどり着けない。横たえた腹も立ってきた。


 全くダメな奴らだ。たるんでる、政治が悪いからこうなるんだ。


 ぶつくさ、草々と垂らしていれば、洗い物を終えたのか妻も入ってきた。


「ホント、困ったことになるわよ、ねぇ」


 ぶぅ。


 同意である、タイミングよく屁が返事。


「もう、何なのよ」


 パシッ。


 と、即時反撃。頭皮への刺激は薄毛予防程度に、と見上げれば、妻はまだ睨んでいた。


「いつもいつも…」

「や、やあ、ごめん」


 腹をポンと叩くが生理現象のみでは言い訳は弱かった様。圧で脂肪を引っ込める。


「しまりのない、だらけきって。全く、世の中おかしくなってるというのに」

「ハハハッ、そうだな。せ、政治が、政府が悪いから、だな」

「あなたったらブツブツ言って、ぶくぶく太ってばかり。で、どうするのよ」


 どうする、とは今後、退職後のことかもしれない。しかし、この流れでしばらく仕事を休みたいとは言いにくく、


「はぁー。ま、とりあえず運動でもしてきたら。あなた、前は結構やってたじゃない、ほら」


 ほらほら道具もあったでしょう、と促されれば、そうでもしておけばという向きも多少。確かに部屋の中、テレビの前でぼやいて居るだけではしょうがない。でも、でもねぇ、


「一人でするというのはなぁ。誰か一緒ならば」

「私はこの後パートがありますから」


 やんわり断られる。若い頃なら謂わばファッションで、多くが参加、妻と知り合ったきっかけにもなった。が今では、海外は別として、日本じゃダサいような空気で不足がち。


「そんなことないわよ。あの時のあなた、かっこよかったわぁ。こう、シュッとしてて」

「あの時は、ねぇ」


 腹をモミモミ。とりあえず、腰を上げた。ヘルメットは要らない。そんな危なくならない、昔と違う。マスクは一応、タオルとともに持って行く。後は何か書いておこうか。やってみるとなると乗ってくるもので、体を回し準備体操。


「大丈夫、誰か居るわよ。右に行っても、左でもお仲間が」




 妻の言う通りだった。

 行ってみれば人数もそこそこ居て、声掛けもそこそこ。ええ、是非、一緒に、やりましょうとも同志。




「○○政治を許さない!」

「「「許さなーい!!!」」」

「政府は○○税を廃止しろ!」

「「「廃止しろー!!!」」」

 

 日まだ高し。ポン、ポポンッ。

 解消するまで練り歩き。運動は続けられた。

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― 新着の感想 ―
[一言] そっちかー やられました。おもしろかったです。 適度な運動、必要ですね。
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