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おたがいさま

テーブルを片付け、外で食器を洗い、無為な時間が訪れる。

キテラはテーブルに備え付けられているのとは別の、一脚だけ背もたれの付いている椅子に腰掛けて、知らない文字で書かれた本を読んでいる。

俺はあまりに暇を持て余したので、スマホに入っていたが一度も開いたことがない、日記帳に今回の出来事を書き記すことにした。腕を組み、頭を前後に傾けながら、(それで忘れた記憶がすぐに蘇ってくる訳でもないのだが)昨日のことを詳細に思い出そうとする。

テーブルに置かれた、電源を入れっぱなしのスマホのバッテリー残量は30%ほど。残量は危ういのに特に焦った様子も見せないのは、太陽光発電機を持ってきているからだ。


「その機械で、何をしているんだ?」


読んでいた本を閉じて、俺の持つスマホを視線で指してキテラは言った。


「日記を付けているんですよ」


「……でも、紙もペンも持っていないよ」


まさかスマホを知らないのだろうか? たしかに彼女からは浮世離れした印象を受けるが、スマホを知らない人が今どきいるなんて。

いや、それはスマホの普及した日本での話だろう。世界的にみれば全然珍しくないことだ。

ここがどこかは分からないが、彼女がスマホとは無縁の地で育ったことは分かった。


スマホを知らない彼女のために、なるべく分かりやすい言葉を選んで説明する。


「この機械にはいろんな機能が備わっていて、それらを使い分けることができるんですよ。時計だったり、日記だったり、インターネットを使って情報を手に入れることもできます。あ、インターネットっていうのは、電波を使って遠くの人と情報を一瞬でやり取りできる仕組みのことです」


「す、すごいね」


よく分かっていないようだった。

伝え方が悪かったのか。言葉を練り直してみる。


「そういえば、ラジオをくれた人もそんなこと言ってた気がするな。この空に何かが飛んでるって」


それは、電波のことだろうか。彼女にしてみれば、行き過ぎた科学というのは、魔法と同等に超常的なものなのかもしれない。


「……やっぱり君たちは不思議だね」


いろいろ引っかかるところはあったが、『不思議』という点に関しては、あなたも大概だろうと思った。

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