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星の居場所

「夢があるのは良いですね」


俺にはない。その質素さを嘆くこともない。平凡を受け入れている。


「なんかおっさんくさい」


「俺より年寄りが何言ってるんですか」


軽口には軽口で応じる。

夢の話はそれきりで、以降は他愛もない話が続いた。

彼女の過去について聞いた。彼女はかつての師匠のことを教えてくれた。自堕落で無茶振りばかりするロクでもないやつ奴だ、なんて恨み口を叩いていたが、様子からはそれほど嫌っていないように見えた。


「なんか……それほど驚いてないって感じだね。僕、一応禁忌を究めんとする魔女なんだけど」


「おかしなこと言われたり見たりしたって今更驚きませんよ」


彼女が何かを隠していることは薄々気づいていた。それに科学信者もびっくりな現象を今まで何度も味わってきたんだからな。耐性がつく。

とはいえ、禁忌とかいう物騒な単語が度々登場することに動揺したのは事実だが、あえて訂正してやる義理はないだろう。


「慣れかぁ、つまんないなぁ」


それが彼女の期待した反応ではなかったらしい。不満げに口を尖らせた。

彼女は話題を変えた。


「次は君の番だよ」


俺にも過去を話せと言う。すぐには言葉を返せなかった。

話したくない訳ではない。過去を比べるのも無益な話だが、俺の過去はキテラと比べて見劣りすると言うか、味気ない。

ただ、これは親睦会のようなものだ。お互いがお互いのことをよく知るために、脚色無しに語ろうじゃないか。


「特に変わった話とかはありませんがーー」

 

自身の生まれてからのことを簡潔に語った。仕事のこと。趣味のこと。日本という国のことも。何の変哲もないけれど、彼女にはそれが新鮮なようで知的好奇心は満たせたようだった。

夜風が肌を凪いだ。


「はくちっ」


隣からずいぶん可愛いくしゃみが聞こえた。


「冷えてきたね、中に入ろうか」


「ええ」


キテラは家の中に入った。少しして窓から光が漏れてくる。

俺はキテラに追随することはせず、ちょっとだけ夜空を見上げることにした。

実は、霧のかからない夜は初めてだ。


暗い宇宙を埋め尽くさんとする星の輝き。今までで一番星の数が多い。

夜空にかかる不可思議に歪んだ色。白や青や赤黒いモヤ。円盤を横から見ると線にしか見えないわけだが、夜空を一周する線は銀河である。銀河の内部から見える景色だ。


星座があれば、それが見知ったものであるならば、ここが地球である確率が高くなると思った。

等級の明るい星を選んだ。ひとつ、ふたつ……みっつ。

あれは夏の大三角だろう。

いや、冬だから冬の大三角か。

手段であったはずなのに、いつしか星座を探すことに熱中していた。首が痛くなってきたけど気にならない。

じっと眺めていると、煌めく宇宙がほんの僅かに回って見えた、気がした。

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