魔女の塔
歩きを止め、立ったまま膝に手をついた。
肩が痛い。脚も痛い。疲労が全身に回っている。酸素不足だ。
何度も荒い呼吸を繰り返す。
顔だけ上げて、目の前を見定める。
たった数メートル先に巨木と、幹の上へ繋がる階段があった。
もう少しで着く。あとちょっと頑張ればいいだけだ。
口に溜まった唾を飲み込み、怠い身体を無理やり動かす。
階段の一段目に足を掛ける。
……けれど、掛けた足を引いた。
「バックパックが……邪魔だな」
疲労もあって、乱雑に地面に置いた。
身体が上に引っ張られたと錯覚するほどに軽くなった。
幹に左手をつき、一段一段上る。
足取りが危なっかしくて、階段の隙間に落ちてしまうことを危惧したが、改善するほど気が回らなかった。
太腿の筋肉を疲弊させながら踊り場に着いた。
息を整えて、すかさず梯子を掴む。
自分では急いでいるつもりだが、傍目にはゆっくり登っているようにしか見えない。
それでも目的地までの距離は確実に縮まっている。
順調に進んで、梯子の三分の一に到着する。
途端、右足が梯子を踏み外した。右足にかけるはずの体重はその支えを失い、身体が一気に真下に引かれる。
右手を強烈な重力が襲う。手を離してしまいそうだった。
しかし最悪の事態は避けられた。
宙にぶら下がる右足を梯子に固定する。
体勢を立て直し、また登り出す。
慎重に登ったおかげで、これ以上足を踏み外すこともなく踊り場に着いた。それから少しの階段を上り、ツリーハウスと小屋に繋がる廊下に出る。
人の気配はない。廊下を囲む木の葉が風に揺れているのみだ。
「キテラ……どこにいますか……?」
大声を出したつもりだったけど、うまく息を吐き出せなかったせいで、ただの話し声ほどの音量しか出なかった。




