第二夜
暗い部屋、狭い地面。天井が低く、しゃがまなければ頭をぶつけてしまう。
軽く押してみる。びくともしない。
ドンドンと強く叩いて、3回目で両開きの戸を開けた。
「どう? 星は見える?」
「……月しか見えないですね」
本来の夜は、太陽を失い、真っ黒に染まるはずだった。
今見えるのは、白と黒と青を混ぜたような空。版画のように色を失った木々。星は見えない。まんまるの月が、空の中に1人で姿を晒していた。
夜とは、こんなにも明るいのか。
ロフトの上、各々が自分の毛布にくるまっている。
夜が来れば、1日の終わりを意味する。時刻は7時過ぎ。普段ならあと5時間は起きていた。
「月が綺麗……に見えていますね」
「霧でぼやけてる」
「でも、綺麗です」
キテラは横に視線を向ける。そして何も言わずに正面を向いた。
「何か忘れてる気がします」
夜景で心は涼やかになっていったが、それでも何かが突っ掛かるもどかしさがあった。
「……出発の準備、何も進んでいませんでした」
「そういえば、だね。準備って具体的に何するんだ?」
「食料と、着替えを洗うのと……あとスマホの充電」
霧で日光が遮られていることを完全に失念していた。スマホにソーラー充電器を挿した後、3時間経っても20パーセントしか充電できないまま、夜が来てしまった。
「それだけだったらすぐに終わるね」
「……他にも残ってることがありました。キテラに魔法を見せてもらわないと」
「それ関係ないよね」
「ありますよ。魔法なんて貴重な体験できるのここだけですから」
キテラは何も言わない。
静寂が満ちる。
一陣の夜風が抜けて、少しだけ木々がざわめいた。
「寝るか」
靴は一階に並べてある。
ロフトは部屋の角に面している。大きさはキングサイズベッド(2メートル四方)ぐらい。足元に梯子があって、俺は柵がある方、つまり壁の反対側に出来るだけ寄せて寝っ転がった。
隣に女の子がいるけれど、別にドキドキはしなかった。
「おやすみなさい」
「うん」
第二夜が回る。




