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英雄による専制の限界

作者: 西田啓佑

とりあえず、日本の民主制は「健全ではない」という前提で書いておりますので、その点はご容赦ください。

日本の国内事情を前提にこのエッセイを読むと違和感しかないと思います。

結論から言えば、「英雄による専制」は「機能している民主制」には勝てない。という事だろう。


それは、ウクライナ戦争におけるロシアの国際状況に表れていると思う。

ソ連崩壊から今日に至る四半世紀、ロシアという国の現代化を支えてきたのは、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンという三人の尽力であるのは間違いない。

そして、この三人はその是非を国際視点で問わないのであれば、間違いなく英雄と呼ぶにふさわしいと思う。少なくとも、アメリカ・中国という二大国を相手にソ連崩壊という混乱期に一歩も引かない政治を行ったのだから。

しかし、その偉業も、特にプーチン氏に関していえば、晩節を汚すことになった。しかも、それは彼個人の落ち度ではなく、完全に政治システム的な要因で、である。


報道各社によると、03/13/2020時点でロシア連邦保安庁(FBS)の対外諜報部門のトップたちが自宅軟禁に置かれた模様である。

実質的な、内部粛清とのこと。

情報ソースは、隣国ラトビアの独立系ニュースサイト「メドゥーザ」によると、長年にわたってロシアの情報機関を取材してきたロシア人記者らしい。


軟禁の名目は、横領と虚偽の報告関する容疑とのことである。

ここで、興味深いのは虚偽の報告である。つまり、ロシアがウクライナに対する電撃戦を成功させる事ができるという判断の根拠となった情報が、そもそもこの担当部署による虚報だったという事だ。

いろんな意味でその真偽はともかく、ドナルド・トランプ前アメリカ大統領をして天才と言わしめるプーチン氏にとって、この虚報は痛恨の一撃であり、背中からの一刺しに等しい裏切りだろう。


これを、情報機関の手綱を握れなかったプーチンの失態であり、彼の英雄としての資質が足りなかったのだと、断ずるのは簡単だが、私はそうは思わない。


むしろ、この裏切りこそ「英雄による専制の限界」だと、私は考えている。

絶対的な英雄に心酔しているすべての人間が、英雄的な能力を持っているわけではないし、英雄的な精神を持ち合わせているわけではない。

言うなれば、救世主が如何に素晴らしくとも、その信者まで素晴らしいとは限らない。

という事だ。

そして、この事実は、「専制」の下では、部下の保身や恐怖、そして強欲から来る背任行為を察知するのが、困難であるという点と合わさる事で、英雄の足元を崩して転ばせる失態を生み出すのである。


健全な民主制ならば、内部告発や権力者の交代はたやすい。というか、むしろその二つを容易くする為に、民主制が存在していると言っても良い。政権交代に健康悪化や相続、ないしは革命を必要とする「専制」よりも、健全な選挙で定期的に交代できる「民主制」の方が、そのコストが安く頻繁に行える事は言うまでもないし、健全な民主制ならばこそ報道という組織外の監査が裏切りや背任を防止する役に立つのである。


つまり、プーチン氏がどれだけ有能で部下に慕われていても、部下の保身や能力不足による虚報を防ぐのはシステム的に無理だっただろう。というのが私の見立てであり、このエッセイの趣旨である。

この趣旨については異論もあるかと思われるが、これから「小説家に成ろう」で「成り上がり英雄譚」や「戦記物」の小説を執筆する諸兄には役立つ考察だと、私は思っている。

是非、物語の最後の舞台装置などに活用してほしいものである。


ここまで、このエッセイにお付き合いいただき、ありがとうございます。


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