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私達はムトウ派です

作者: 白金ピア

学生が集まるこのカフェテリアでは、紅茶やコーヒーを優雅に飲む場であって、けっして一人の女子生徒を巡り大声で叫ぶ場所ではない。


「加藤さんは俺と付き合うんだ。その手を離せ」

「加藤さんは君の物じゃない。君こそ離せ」

「やめてっ!二人とも落ち着いて!」


私は端の目立たない席で、この騒動を眺めながら紅茶を飲んでいる。

他の生徒もいきなり始まった恋愛に黙って見ていたが、騒動の原因元を知ると興味が失せたのか視線はすぐに外れた。


恋愛過多の加藤さんか、と。


しかし今回のお相手はそれぞれスペックが高い。なので一部の生徒がどちらが勝つか賭けを始めていた。



賭けにされた男子の一人。

佐藤君は大企業の御曹司。文武両道。すでに父親の元で経営に携わっているそう。今後も安泰な次期社長。



「佐藤君は上品で香り高いダージリンってところかしら」


今は上品さとは無縁の姿を晒しているけれど、彼本来の特徴を思い浮かべて飲む。

ああ、美味しい。



賭けにされたもう一人、武藤君はスーパーモデルの母に似た美貌と高身長でもって、自身もハーフモデルとして海外のファッションショーに出ているセレブ男子。

こちらも資産はたんまりありそう。



「武藤君は華やかな香りのアールグレイみたいね」


こちらも華やかさどころか優雅さの欠片もない強引な姿を晒しているが、目を閉じ薫りを胸いっぱいに吸い込めば、ランウェイを華やかに歩く彼が想像できる。

ああ、美味しい。


2杯目がたまたまアールグレイだったけれど、今の雰囲気にピッタリね。



最後に、私にとってはどうでもいい加藤さん。

彼女の容姿はどうにも受け付けない。


綿菓子のようなふんわりした髪に、あまったるそうなピンク色の髪。

瞳の色は煮詰めたキャラメルのようにキラキラと輝き、見ているだけで胸焼けしそう。


それにこの前見たの。衝撃な行動を!

紅茶に角砂糖を5個も入れたのよ!?

ねぇ、それ溶けてる?

ザラザラした飲み物を飲む姿にドン引きよ。




2杯目を飲み終わってもまだ言い争いは続いている。

煩いなぁ~もう三人で付き合えばいぃのに。と適当なことを考えていたら声に出ていたようで。


隣のテーブルで飲んでいた男子が「それだと賭けが成立しない」と言ってきた。



「誰に賭けたの?」

「俺は賭けてない。が、ムトウかな」

「私もムトウよ」

「へぇ〜気が合うな」

「本当にね」


あら、あらあら?まさかのここで恋が生まれる?


「あいつらを例えるなら佐藤が『ブルーマウンテン』で武藤が『グアテマラ』かな」


珈琲が好きなんだ。と笑って言った彼にキュンとした。

でもサッパリ分かりません。


それを素直に伝えると、今度一緒に珈琲専門店に行かないかとお誘いが!デートですね。はい、行きます。



デートの約束をとりつけたところで、三角関係にも決着がついたようだ。



「どちらだけって選べないよ。二人とも選んじゃダメかな」





……ふっ。鼻で笑ってしまったわ。



佐藤君も武藤君も去っていった。後ろに獲物を狙う女子生徒を引き連れて。



加藤さんは二人に選ばれなかったって事で賭け成立ならず。


「はい、解散ー」と生徒が散って行くなか、一人の男子生徒が加藤さんに近づいて言った。


「君は二人とも好きだからこそ選べなかったのかもしれない。しかし真剣に告白した人に対しあまりにも不誠実だと言思わないかい。もっと真剣に考えてほしかったよ」


と、甘さと厳しさを混ぜたような美藤君が諭した。


いや、美藤君、賭けてたでしょ。

賭け金戻されているの見たよ。


その後、加藤さんの甘さ全開告白に落ちた美藤君が付き合うことになったらしい。



私は、珈琲男子とお付き合いすることになった。

カフェテリアでは、毎日一緒に飲んでいる。

今日は私の好きな紅茶。明日は彼の好きな珈琲。


「それにしても、あの飲み方は理解できないな」


加藤さんは紅茶に角砂糖を8個入れるようになった。


「本当。加藤さんの紅茶は、もはや別の飲み物よ」

「この前、飲み終わったカップ覗いたんだ」

「どうだった?」

「綺麗に飲み干してた。砂糖の粒一欠片もなし」

「逆に凄い!」


加藤さんに捕まった美藤君は、ほんのり甘めが好きなので、毎回ドボドボ角砂糖を入れる加藤さんに引きつつ甘くて美味しいの笑顔で誤魔化しながら付き合ってるそう。可哀想に。



「珈琲はブラックだろ」

「紅茶もストレートよ」



やっぱり、私達は






「「無糖派です」」



加藤さんはその後、藤多さんと出会い結婚しました。


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