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ガウラのアマディス  作者: Garci Rodriguez de Montalvo(翻訳:小川奇岩)
序幕 始まりの物語
3/3

第參話 侍女の訪問

ダリオレータ、エリセナ姫が御爲、ペリオン王の寢室を訪ふ

ペリオン王、侍女ダリオレータに、エリセナ姫の件を問う

(あれ)(これ)やと(とき)()ぎて、(あく)()()り、ペリオンと、ガリンテル、メリンダ、()してエリセナの(よん)(めい)が、(きのふ)(どう)(やう)(ゆふ)()(とも)にせし(のち)()()れんとす(ころ)()(ぢょ)ダリオレータは、ペリオン(わう)(じゅう)()たるユスティーノを(おの)(かたはら)へと()び、()ふて(いは)く、「おお、(しん)(あい)なる()(ひと)よ。此方(こなた)(かう)()なる()まれの(もの)(なり)や?」


如何(いか)にも、()(とほ)り!」と(じゅう)()ユスティーノが(こた)へて()へらき(こと)には、「(まさ)しく(それがし)()は、(ゆい)(しょ)(ただ)しき()(すぢ)たる(つは)(もの)(むす)()(なり)(しか)(なが)ら、()(ぢょ)殿(どの)(なに)(ゆゑ)()(やう)(こと)を、態々(わざわざ)(あらた)まって(たづ)ぬるのか?」と逆倒(さかしま)にダリオレータへと()(かへ)したり。


(うそ)(いつは)()く、(そっ)(ちょく)(まう)()()すれば」と()(ぢょ)ダリオレータが(こた)へて()へらくには、「()(わたくし)()は、と()(ひと)つの(こと)(がら)()いて()りたければ、此方(こなた)殿(どの)が、(あが)(たてまつ)りし(かみ)(たい)する(しん)(かう)(なら)びに、(かしづ)(つか)(たま)へし(しゅ)(くん)たるペリオン(さま)への(ちゅう)(きん)()()して、(なに)(とぞ)()れを(つつ)(かく)されぬ(こと)()く、()(おし)(くだ)さり(たま)へ」と(せつ)(ばう)せり。


(われ)()()()(ぶか)(せい)()(さま)()()と、(つるぎ)()ちたる(いへ)()まれし(もの)(えい)()(ちか)って(かた)(まう)()ぐ」と(じゅう)()ユスティーノが()へらくに、「()(うやま)(たっと)びたる主人(あるじ)()に、(なん)らかの()(けん)(およ)ぼさぬ(こと)を、(ここ)(ちか)ふならば、(それがし)()()らん(かぎ)りの(こと)は、(のこ)らず()(はな)(いた)(しょ)(ぞん)(なり)」と()()(こゑ)(おう)じられたし。


(しか)らば、(われ)(いま)(ここ)(かた)(かみ)(ちか)()(まう)す」とダリオレータが(いは)く、「ペリオン(さま)()(うへ)に、()()(およ)ぶか、(また)(かん)()(かうむ)らんとす(おそ)れの()()(もん)(こと)(さら)(たづ)ねぬし、此方(こなた)殿(どの)()げて(かた)(ひつ)(えう)()へて()し。(ただ)(わたくし)()()りたき(こと)は、ペリオン(わう)には、(なんじ)(つか)へし(しゅ)(くん)には、(いづ)()かにか、(きょく)()()(しん)(けん)に、(あい)辭詞(ことば)(かは)()ひて()(さう)したる()()(じん)(など)()るや(いな)かと()(こと)(なり)」と(じゅう)()ユスティーノに(たづ)ねたり。


()(かう)()なる(しゅ)(くん)、ペリオン(さま)は」と(じゅう)()ユスティーノが(こた)へらき(こと)には、「(これ)(まで)大凡(おほよそ)(にょ)(しゃう)を、(ひろ)(あまね)(あい)したれども、()(ぢょ)殿(どの)(まう)()()()(おも)()れたる()(かた)は、(それがし)(ぞん)ずる(かぎ)りに(おい)ては、(まった)()()けられんや」


 ()(やう)(ふた)りが(かた)()ひせし(まさ)()()に、ガリンテルが(ぐう)(ぜん)()(くは)して、(かれ)は、(むすめ)たるエリセナが(そば)(づか)への(もの)が、ペリオン(おう)(じゅう)()(なに)やら(もん)(だふ)(かは)したる(ところ)()(あた)りにして、ダリオレータを(まね)()()せ、(かの)(じょ)(たづ)(のたま)はくに、「ダリオレータよ。()(ぬし)は、ペリオン殿(どの)(きん)(じふ)(いっ)(たい)(なに)(かた)らふたか?(ただ)ちに(こた)へよ!」


 ガリンテルの(しつ)(もん)()(ぢょ)ダリオレータは、「(こく)(わう)(へい)()(かみ)()()(ちか)って、(うそ)(いつは)()(まう)()()す」と(こた)へらくには、「(じゅう)()ユスティーノが()(わたくし)()()んで()へらき(こと)には、『()(ぶん)(しゅ)(くん)たるペリオン(さま)は、(いま)(たん)(しん)(ゆゑ)に、(くに)(もと)では()(ぜん)より(ひと)()(しふ)(くゎん)()したる理由(わけ)にて、(はばか)(なが)ら、ガリンテル殿(どの)(へや)(おな)じく()(こと)には、(いささ)(こん)(わく)(おぼ)ゆる(むね)(つた)へに()たり』との、(よし)()()()すれば」


 ()(ぢょ)ダリオレータが()(ことば)()きも()へずに、ガリンテルは、(さっ)(かの)(ぢょ)(まへ)から()()り、(すみ)やかにペリオンの(もと)へと()(ゐた)りて(のたま)はくには、「嗚呼(ああ)(しん)(あい)なるペリオン(わう)よ、(まこと)(まう)(わけ)()(さうら)ふ。()(これ)より()()げねばならぬ庶々(もろもろ)(こと)(がら)(しゃう)じて、(さら)には(じゅう)(らい)よりの(つと)めも(いっ)(そう)(はや)()きて(はた)さねばならぬが(よし)にて、(あさ)()()()らぬ()で、(いたづ)らに()(げん)(そこ)なふ(こと)()(やう)()(ふし)()他處(ほか)()()へと(うつ)すが所以(ゆゑ)()(よひ)からは()(しん)(しつ)には、()殿(でん)()(ひと)()(もち)(ねむ)られたし」


 ペリオン(わう)は、「(しん)(あい)なるガリンテル(へい)()()殿(でん)よりの(こころ)(づか)(いと)(かたじけな)(さうら)ふ。ならば、(すべ)(そち)()(のぞ)(まま)()(ねが)(つかまつ)る」と(のたま)はき。


(あひ)(こころ)()り。(ただ)ちに()(はい)(いた)す」とガリンテル(わう)(のたま)はけり。


 ()くの(ごと)くガリンテルは、()(ぢょ)ダリオレータが(ひん)(きゃく)ペリオンの()(こう)を、(おのれ)(ただ)しく(かた)(つた)へたる(こと)(みと)めて、(すぐ)(さま)(へや)()きの()(ぼく)(ども)へ、ペリオン(わう)(ため)に、(かれ)(おは)しむ閨房(ねま)より、(みづか)らの(しん)(だい)()(のぞ)かしむる(こと)()()せり。


 ()(あり)(さま)(てん)(まつ)を、(もの)(かげ)より(ひそ)かに()(とど)けしダリオレータは、(みづか)らが(のぞ)みし(とほ)りに()(たい)(すす)(はかど)りたる(こと)(しか)(みと)めて、『()たり』と(ふく)(わら)ひ、()報知(しらせ)を、(おの)(あるじ)たるエリセナ(ひめ)(みみ)(もと)へと、(いっ)(こく)(はや)(ささや)(もたら)さんとて、(かの)(ぢょ)(ところ)へと()(もど)りたり。()して(ひめ)()()へと()りて、()(なり)()きが(いち)()()(じゅう)(つた)(かた)りたし。


 ダリオレータより()(ほう)(こく)()きたるエリセナ(ひめ)は、(いた)()()がって、「(わらは)(ちゅう)(じつ)なる()(ぢょ)にして(しん)(いう)たるダリオレータよ!其方(そなた)(はたら)き、(まこと)(たい)()(なり)!」と(のたま)はくには、「(けだ)(これ)こそは(てん)よりの()處置(はからひ)(げん)(ざい)(いっ)(けん)誤謬(あやまり)(おぼ)しき(もの)さへも、後々(のちのち)(いた)れば、(いづ)れや(かなら)(かみ)への(おほ)いなる(ほう)()()らん。()いては、(これ)より(われ)()()さねば()らぬ(こと)(ただ)ちに(をし)へたし 。(いま)(わらは)は、(あま)りの款喜(うれしさ)所以(ゆゑ)に、(おの)()(せい)(おほ)くは(けつ)(じょ)し、()(はや)(ただ)しき(はん)(だん)()(こと)(おぼ)(つか)()し」 


 ()(ぢょ)ダリオレータは、「(しか)らば、(ひめ)(ぎみ)」とエリセナに(こた)へて(いは)く、「()(ぜん)(まう)()げし、ペリオン(さま)()()()(とびら)は、(さき)(ほど)(よう)()(おり)(わたくし)()(ひそか)(かぎ)()けて()()した(ゆゑ)(われ)()()(よひ)(かね)てよりの()(はず)()って、(こと)(おこな)ひたり」


 エリセナ(ひめ)(のたま)はく、「()しなに。()(たび)(こと)()(だい)(いっ)(さい)其方(そなた)(まか)すが(ゆゑ)(しか)()(とき)(きた)らば、(わらは)をペリオン(さま)(もと)へと()(ない)せよ」


 ()くして、エリセナ(ひめ)()(ぢょ)ダリオレータの()(たり)は、(じゃう)(ない)(もの)(ども)(みな)(ことごと)()(しづ)まり(かへ)りたる()(とき)(おとづ)れる(まで)()(しつ)にて(せき)(ぜん)(たい)()せり。

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