第十五回 虎に翼
皆さま、あけましておめでとうございます。
今年も、作品ともども何卒よろしくお願いいたします。
安井優のことばの宝箱、略して「ことばこ」が、今年も皆さまにとって少しでも「ことば」って面白い! と思っていただけるようなエッセイとなるよう、頑張ってまいります!
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第十五回は「虎に翼」
かっこいい響きのことばで始まりましたが……。
今年は寅年。ということで、「ことばこ」もそれにならって虎に関連することばをご紹介させていただくことにしました。
さて、この「虎に翼」、似たようなことばでいくと「鬼に金棒」「虎に角」というものがあります。
ここまで言えば、どういう意味かパッとひらめいた方も多いのではないでしょうか。
すでに力を持っている強いものが、さらに強い力を手に入れること、という意味です。
古来より、特に中国では「虎」は百獣の王であり、武勇や強いものとしてのイメージがあったんだそうです。
(今の時代、日本で百獣の王といえばライオンを思い浮かべる方が多いのでは、と思いますが、中国では昔から虎なんだそう。ちょっと面白い話ですね)
考えてみると、日本でも「一休さん」で有名な虎の話もあったりして、古くから意外と人間には馴染み深い動物なのかもしれません。
虎の威を借る狐、なんてことばもあるくらいですし、やっぱり強いものとしてのイメージは、日本でもしっかりと定着しておりますよね。
さて、私は「虎に翼」と聞き、「あれ?」と思ったのですが……。
皆さま、翼の生えた虎を想像してみてください。何か、別のものが思い浮かんだりしませんでしたか?(笑)
実は、私。「虎」だと言っているのに「獅子」を思い浮かべまして……。
「これ、グリフォンじゃない⁉」と。グリフォンが邪魔をして、何度想像しようと思っても、虎ではなく獅子に翼がついてしまうのです!
(ちなみに「グリフォン」という生き物は、皆さまはご存じでしょうか? ファンタジーな世界では、わりとお馴染み。「獅子に翼」な生き物なのです。)
最近、使用したばかりの馴染み深い単語だったこともあり、うまく虎に翼が生えている様子を想像できませんでした。(苦笑)
このグリフォンはヨーロッパ生まれらしく、どうやら、虎が「百獣の王」「強いもの」というのはやっぱり中国の考え方なご様子?
「それじゃあ、もしかして、中国には虎に翼が生えたグリフォンもどきがいるのでは?」
と、気になって調べたところ、なんと……!
中国では「窮奇」と呼ばれる、「虎に翼」な伝説の生き物が存在していることが判明しました!
(イラストは全然虎っぽくなかったですが。笑)
どちらも架空の生物とはいえ、こうして地域差があることを知ると、一気にファンタジーの世界も広がっていくような気がします。
「虎に翼」ということばが先にできたのか、それとも「窮奇」が先に生まれたのか、そのあたりは定かではありませんが……。
ことばの可能性がたくさん詰まっていて面白かったですし、一年のはじめからすごく幸せな気持ちになりました。
皆さまにとっても、「虎」のような「強」運に恵まれ、「翼」が生えたように飛翔できる一年となりますように!
たくさんお祈り申し上げます。
おあとがよろしいようで……?
それでは、また次回。