第十三回 夜警
すっかり更新が滞り、気づけば秋。毎度更新が遅くて申し訳ありません。
安井優のことばの宝箱。略して、ことばこ。本日も何卒よろしくお願いします!
芸術の秋、秋の夜長、といいますので、今回はそれらに合わせたお言葉をご紹介します。
前回の花火に引き続き、季節は違えど、私と一緒に夜を楽しみましょう。
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第十三回は「夜警」をピックアップしてみました!
皆さまは、このことばから、何をイメージされましたか?
ことばの本来の意味としては、夜に火災や犯罪が起こっていないかを見回る人のことです。夜に事件などの警戒をする人、と書いて夜警なので、漢字そのままですね。
とはいえ、そういう本来の意味をイメージされた方よりも、有名なあの「絵」を無意識に頭の中に思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もしかしたら、同音異義語「夜景」を浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、有名な絵、オランダの画家レンブラントさんが描かれた「夜警」について、エッセイでお話しようと思います。
絵を見たことがないよって方は、ぜひぜひ調べてみてください。
実はこの「夜警」という絵、正式名称は「フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊」や「バニング・コック隊長率いる火縄銃組合の人々」など、諸説あるようです。どのタイトルにしろ、中々の長さ。
大変大きな絵画でして、その大きさは縦3メートル63センチ、幅4メートル37センチと、絵画に描かれている人物がまさに等身大というびっくりなサイズ感です。
その他にも、光と影を効果的に用いた色使いや、描かれた当時は不動の姿勢が多かった軍隊・自警団の人たちに動きをつけて描写した、といった点で有名な絵画ですね。
さて、この「夜警」が特に有名な点は、先述したタイトルに関係しています。(有名なお話だとは思うのですが、ご容赦ください)
実はこの「夜警」というタイトルがつけられたのは18世紀以降のこと。
当時、絵を保護するために塗られていたニスが黒く変色したことにより、「夜」の風景を描いたのだと考えられたのです。
そこから「夜警」というタイトルがつけられた、とのこと。
20世紀に入り、絵画の洗浄作業を通してニスが取り除かれ、本来の絵の色、すなわち「お昼の風景」であることが判明したのだそうですよ。
とはいえ、すっかり定着してしまったお名前は、今でも愛称として親しまれています。
タイトルによって、絵の見え方が少し違うような気がするのも、なんだか不思議な感じがして面白いです。
絵画自体に言葉はありませんが、絵画を形作るタイトルや言葉もまた、絵の一部となっているんだな、と感じる瞬間です。
タイトルって大事ですね……。
(仮にもお話を書いている身としては、予期せぬところで自戒となりました)
秋の夜長、気温が下がってきて肌寒さを感じることが多くなりましたが……芸術の秋ということで絵画を楽しんでいただくことはもちろん、たまには、「夜警」ならぬ「夜景」も楽しんでみてはいかがでしょうか。
もちろん、その際は本物の「夜警」の方に怪しまれないよう、お気をつけて。
おあとがよろしいようで……?
それでは、また次回。