第十一回 ロマンス
随分とまた久しぶりになってしまいましたね。申し訳ありません。
安井優のことばの宝箱。略して、ことばこ。本日も何卒よろしくお願いします!
気づけば、春も過ぎて夏も中盤。いよいよ夏休みまでのカウントダウンも始まろうとしておりますが……そんな夏といえば? なお言葉を本日はご紹介します。
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第十一回は「ロマンス」がテーマです。
良く聞くことばですし、何をいまさら、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、では皆さま、質問です。
「ロマンスって、何?」
こう聞かれたら、一体なんとお答えになられますか?
色々と思い浮かんだ方、ばっちり答えられたよ! な方、さすがです。
中には、スキー場に現れるボーイミーツガールな神様を想像された方もいらっしゃるでしょうか。あのフレーズが頭の中に流れた方もいらっしゃるかもしれませんね。
ふとした瞬間に自分の中に沸き上がった疑問ですが、当の本人である私は、残念ながら、この答えを持っておらず……せっかくなら、ことばこに取り上げてみよう、と考えた次第でした。
ちなみに、辞書を調べると、いくつか意味が出てきます。
代表的なのは、恋愛事情に関係することば。例えば、恋愛物語。ですが、こちらは一口に恋愛物語と言っても、空想的、冒険的、伝奇的な要素の強い物語の中でも、特に中世ヨーロッパの、恋愛・武勇などを扱った物語のことのようです。
ですが、この「ロマンス」、元々は「ローマ的な」という意味を持つ言葉でした。(もちろん、今「ローマ的な」という意味で使っても全く問題はありません)
それでは、この「ローマ的な」という言葉が、どうして、恋愛的な意味に派生していったのでしょうか。
色々と調べてみた結果……またまた面白い歴史の一端が見えたので、私の備忘録も含めて、ちまちまと書いていきたいと思います。
まず、どうやら、この「ローマ的な」という意味の中には、「民衆のことば」という意味が含まれているようです。
ラテン語を正式な言葉として使っていた時代、口語表現などは、俗ラテン語に起源をもつ「ロマンス諸語」と呼ばれていました。
ここで登場「ロマンス」ですが、まさしくこれが語源のようです。
さて、十一世紀ごろから、フランスを中心として「騎士道物語」と呼ばれる文学のジャンルが流行をみせました。それらの多くは、口語表現で綴られたようです。つまり、「ロマンス諸語」を使って、物語が生み出されるようになりました。
でも、それがどうして恋愛に? ということなのですが……。
実は、この騎士道物語と呼ばれるジャンルには、やっぱり、いくつかの王道やテンプレと呼ばれる展開がありました。
その一つが「騎士様が冒険し、美しい貴婦人のために、世界の敵と戦う」というもの。
なんだか見覚えがあるような、ないような……(笑)
今でも、売れそうな内容で、本好きの私としては一度読んでみたいくらいです。
と、少しお話がそれましたが……そんなお話が後々、恋愛に重きをおいた小説として扱われるようになっていきます。
そこから、「ロマンス」といえば恋愛、という風になっていったのではないか、と考えられているみたいです。
ちなみに、ロマンあふれる冒険譚、の「ロマン」もこのロマンスと同じ意味だと言われています。元々は違ったのかもしれませんが、現代日本においては、フランス語か、ラテン語か、程度の違いのようです。
ことばを知ると、その裏側に隠されたたくさんの「ロマン」が見えてきます。
ボーイミーツガール、ならぬ、ヤスイミーツワードな「ロマンス」のときめきを感じるひと時でした。
おあとがよろしいようで……?
それでは、また次回。