07
ぼんやりとだが、人型に変身した魔物は男であることがわかった。紅い、燃えるような髪。彼が右手で魔物たちを制すると、魔物たちは威嚇をやめた。魔物たちの中でも高い身分なのだろうか。
「......たしかに、その翼は魔族の中でも魔王様の一族しか持たぬ王の証」
彼はクリスティーネに詰め寄ると、まじまじとその翼を見つめ、1つ息を吐いた。
「......たしかに、その翼は魔族の中でも魔王様の一族しか持たぬ王の証。貴様が魔王様の娘がどうかはまだ分からんが、血縁であることは認めよう」
「じゃあ......!」
「かといって、人間を迂闊に魔王様にお会いさせるわけにはいかん!貴様、母は人間だな?俺は純血以外の魔物は認めぬのだ。疾くと去ね。さもなくば、その喉首食いちぎってやる!」
そう言いすてると、彼はまた魔物の姿へと戻った。鋭い牙が光を反射してキラリと光る。
交渉決裂だ。踵を返して逃げ出そうと、俺はクリスティーネの手首を掴み走り出そうとする。けれど、彼女はその場から動こうとはしなかった。
「クリスティーネ!?なにやってるんだ、早く!食い殺されたいのか!?」
そう叫んでもクリスティーネは動かない。目を凝らし、何かを探すようにして空を見上げている。
ふと、大きな影が俺たち二人を覆ったのが分かった。ただでさえ暗い森がさらに暗さを増し、足元が見えづらい。
いったいなんだと空を見上げると、その大きな影の正体が目に飛び込んできた。
それは、大きな鳥だった。——鳥、だよな?遠すぎて姿形がほんとうにぼんやりとしか見えない。目を凝らしてみても、翼っぽいのがあることしか分からなかった。
ただでさえ大きいその影はどんどん大きくなっていく。
近づいてくる。
そう理解したのとその影が地面に降り立ったのは、ほぼ同時だった。
「っ、ごほ......っ」
土煙が辺りを覆う。
その向こう、ゆらりと揺れる影があった。大きい鳥の影であったそれはゆっくりと小さくなってゆき、やがて人の形をとる。
風にたなびく黄金色の髪は後ろで1つに結ばれており、光を弾いてきらきらと輝いている。
「リアーナ様...!」
誰かが、その名を呼んだ。




