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異世界に転移したっぽいけど眼鏡が壊れたのでよく分からないです  作者: どすこい乙女
第2章 仲間の父親が魔王っぽいけど眼鏡が壊れてるのでよく分からないです
7/11

06


さて。


俺とクリスティーネの二人は今、森の前へと来ていた。


クリスティーネの父親が魔王であるという衝撃的な事実が発覚した前話、俺は思わず会いに行くのをやめると言いそうになったものの、壊れた眼鏡のことを思い出して踏みとどまった。


魔王だろうとなんだろうと、眼鏡を直してもらえるなら行くっきゃない。だって眼鏡は俺の体の一部であり、眼鏡がないと俺は生きていくことができないのだらから。特に異世界では。


クリスティーネによると、魔王は国の端にある森の奥に城を構えているらしかった。


ごくりと、クリスティーネが息を呑む音が聞こえる。


「やっぱり目の当たりにすると怖いね......」


「そうか?」


どうにも怖いとは思えなくて、首をかしげる。俺からしてみればただの森にしか見えない。俺がぼやけて見えるからそう見えるだけで、実際はなんかもっと怖い感じなんだろうか。


そんな俺に、クリスティーネは「やっぱり君は普通の人間とは違うんだね!」と目を輝かせて言った。


「君がいれば安心だなあ」


じゃあ早速行こうとクリスティーネに背中を押され、俺たちは森の中に足を踏み入れた。


森の中に入ると、さすがにぼんやりとしか見えなくても不穏な空気が肌でわかった。けれど眼鏡のためだと自身に言い聞かせて、目の前に広がる道を進んでいく。


どこからか、俺たちのように森に足を踏み入れたらしい人間の悲鳴が聞こえる。がさがさと、茂みが動く音がする。


「ギャアアアア!」


そんな悲鳴のような声は、しかし魔物の鳴き声のようだった。魔物は茂みから一斉に飛び出し、俺たちをめがけて襲ってくる。

俺にとっては黒い塊にしか見えないけれど、ほんとうはもっと恐ろしい外見なのだろう、クリスティーネがひっと息を呑み後ずさったのがわかった。それに合わせて、黒い塊たちもじりじりと間合いを詰めてくる。


......食われる!?


「まっ、待ってくれ。俺たちはお前たちと戦いに来たわけじゃない。魔王に会いに来たんだ」


「ギャアアアア!」


なんとか話し合いに持ち込もうとしたものの、返ってくるのは言葉にならない鳴き声だけ。


まずい。


魔物たちが言葉を話せなくとも理解はできることを信じて、言葉を重ねていく。


「俺の大事な眼鏡が壊れてしまって、それを直して欲しいだけなんだ。決して危害を加えたりはしない。約束する」


「わ、私も!」


そういって、俺の後ろに隠れていたクリスティーネが意を決したように俺の前へと飛び出した。

そして彼女は、見せつけるように着ているワンピースの後ろのファスナーを下ろした。


隠されていた翼が、ばさりと音を立てて広がっていく。そのたびに小さな風が起こり、がさがさと周りの木々を揺らした。

背中まで伸びた銀髪が風になびき、光を反射してきらきらと光る。


「信じてもらえないかもしれないけれど、私、魔王の娘なんです。このツノと翼がなによりの証拠。尻尾だってある」


くるりと身を翻したクリスティーネが見せつけるようにしてお尻を振ると、スカートの裾からのぞく尻尾がゆらゆらと揺れた。


ごくりと、息をのんだのは誰だっただろうか。


ぐるるると威嚇のような鳴き声を発していた魔物たち。その先頭にいた一匹が、くるりと魔物から人間へと姿を変えた。


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