09
魔王の城は、森の奥深く、切り立った崖の上にあった。辺りには霧がたちこめており、グレンの案内がなければたどり着くのは難しかっただろう。
城についた俺とクリスティーネは、すぐに謁見の間へと通された。
玉座へと真っ直ぐに敷かれた赤いカーペット、それに沿ってずらりと魔物たちが並んでいる。彼らは人型だったり動物だったりと様々な容姿をしていたが、みな一様に俺たちに鋭い視線を向けてきているのが分かった。
カーペットを歩き、階段の前で立ち止まる。階段の上に玉座はあった。
そしてそこに、なにか大きな物体が鎮座しているのが俺の目に飛び込んできた。
いったいなんだろう。目を凝らして見るが、相変わらずぼやけて見えるためそれが規格外の大きさをしていることしかわからない。
と、その物体がのそりと動いた。
「ひっ」
俺の隣でクリスティーネが息を飲むのかわかった。それもそうだろう、俺だってびっくりした。あの大きな物体がまさか生き物だったなんて。
「クリスティーネ」
その物体から発せられた声は低く、重く、謁見の間に響き渡った。骨まで震わせるその声は、しかし決して恐ろしさはない。むしろ、優しい声音だった。
そう、まるで——愛しい娘の名を呼ぶときのような。
「おとう、さん......?」
クリスティーネの声は震えていた。
「ああ」
そんなクリスティーネに、その物体——魔王は優しく応えた。クリスティーネはすぐさま駆け出し、階段を駆け上る。魔物たちが一斉に殺気立ったが、魔王が牽制したのだろう、誰もクリスティーネに害をなそうとはしなかった。
クリスティーネが、魔王に抱きつく。
「お父さん......っ!」
親子の感動の再会だった。




