第千三百七十四話「見せて見せられて」
やばい……。俺が自分から言い出したことだというのにいざ本当に見れるかと思うとドキドキして動悸が収まらない。本当に……、本当にこのまま……、見てしまうのか!?現役JKの生パン……を!?
「咲耶様!見てください!さぁ!もっと!かぶりつきで!見てください!」
「アッハイ……」
あれぇ……。何か違う……。
いや……、合ってるはずだ。全て正しい。紫苑は俺の目の前でスカートをガバッ!と捲り上げた。その下にあるのはインナーではなく間違いなく現役JKの生パン……だ。俺が待ち望んでいた物に違いない。それなのに……、これは……、なんだろう?
何も感じない。それどころか妙な空しさのようなものまで感じる。これは一体何なのか?
ハッ!?もしかして……、まさか……、俺はもう枯れ果ててしまったのか!?
男性は歳を取ると枯れることがある。女性に比べて早くから性欲旺盛である分なのかは知らないけど、中年以降になると女性と性欲が逆転するというデータまである。まぁそれがどこまで信憑性のあるデータなのかは知らないけど……。
ともかく男性というのは歳を取ると色々と減退してしまってそういう気がなくなってくる人もいるらしい。もちろん勃起や射精が出来なくなってからもずっとエロが大好きなエロ親父、いや、エロじじいというのがいるのも事実だ。でもそういうエロじじいもねちっこくはなるけどそういう行為自体は出来なくなる。
俺は前世と今生を足したら一体何歳になるだろうか?もうそこそこ良い年数を生きていることになる。転生した場合は単純に前世の年齢と合算とはいかないだろう。でも男性が枯れるのが精神的な面もあるのだとしたら、肉体的にはまだ若くとも精神的に枯れてしまう可能性がないとは言い切れない。
また今の俺は咲耶お嬢様の肉体だ。女性の肉体というのは当然ながら女性ホルモンが多い。男性的な性欲というのは男性ホルモンに影響される。女性ホルモンが多く男性ホルモンが少ない女性の肉体でずっと過ごしている俺が男性的性欲が薄れていてもおかしくはない。
「あああぁぁぁっ!!!」
「「咲耶様っ!?」」
「「「咲耶ちゃん!?」」」
違う!違う!俺はまだ枯れてない!俺はまだまだ現役のはずだ!それなのに何故現役JKの生パン……を見てもこうも反応しないんだ!
「紫苑の汚いパンツのせいで咲耶様が頭を抱えられたじゃない!」
「汚くなんてないわよ!ちゃんとこの集まりの前に穿き替えたばかりなんだから!皆だって一緒に穿き替えたんだから知ってるでしょ!」
「それは……」
「えへへ……」
……ん?今何か重要なことを言わなかったか?皆この集まりの前に穿き替えてきた?一緒に?それは何故?それは……、自分の下着も披露するからじゃないか?人に見られるから穿き替えていたんだろう。ということは……、皆も最初から見られる、見せてくれるつもりで?
「咲耶様!紫苑の汚いパンツで元気がなくなったんですよね?だったら私のを見て元気を取り戻してください!」
「おっ……、おぉっ……。おおおぉぉぉっ!!!」
薊ちゃんが……、ペカーッ!と御開帳してくれた。ゆっくりとたくし上げられたスカートの中から顔を覗かせたのは……、薊ちゃんのイメージにぴったりなスポーティーなパン……だった。
キタキタキタキターーーーーッ!!!漲ってキターーーッ!
枯れてなんかなかった……。まだ俺は現役だった……。俺は不能になんてなってなかったんだ……。
「二人ともそういう出し方をするから咲耶ちゃんが困惑するんでしょう……。せめてもうちょっと普通にしなさい……」
「そういう皐月だって咲耶様に見せ付けようと思って狙ってた癖に!」
「なっ!?違いますよ!?私は決してそのようなことはありませんから!」
良かった……。何か段々といつも通りになってきた。さっきまでの妙な雰囲気もなければ俺が不能だったわけでもない。皆も妖しい雰囲気がなくなっていつものノリになってきたし万事解決だ。
……でも何故俺は紫苑の生パン……にはこんなに反応しないんだろう?
紫苑は顔つきや性格はややキツイように思える。でも実は紫苑は面倒見も良いし性格がきついということはない。見た目はちょっと釣り目だからそういう印象を与えてしまうのは仕方がない。でも俺は紫苑の顔や性格がキツイと思ったことはないし、どちらかと言えば可愛くて好きなタイプだと思っている。その嫌いではないどころか好きなタイプの紫苑の生パン……に何故反応しないのか……。
「向こうはあんな調子だから放っておきましょう。咲耶ちゃん……、次は私のも見てください……。ほら……」
「蓮華ちゃん……」
ゴクリと喉が鳴る。ちょっと顔を赤らめながら遠慮がちにスカートをたくし上げていく蓮華ちゃんから目が離せない。なんだこれ……。なんだこれ!この心の内から湧き上がってくるこの感情は!
見たいと思っている。でも何だか見てはいけないような、でも見たいような、何とも言えないこの感情は……。
「どうですか?咲耶ちゃん……」
「すっ……、凄いです……」
蓮華ちゃんが顔を真っ赤にしながら見せてくれている。それはレースのフリルがついたヒラヒラのものだった。生パン……も凄いけどそれだけじゃない。この胸の高鳴り……。見てはいけないものを見ているようなこの背徳感……。
「咲耶ちゃーん、こっちはどうかなー?」
「譲葉ちゃんまで……」
いつもはそんなことお構いなしで気にしないタイプに思える譲葉ちゃんが……、譲葉ちゃんまで少し恥じらいながらオズオズとスカートを捲くっている。その姿に俺の中の何かが刺激され続けている。ただ……、贅沢を言わせてもらえばボクサーパンツはどうなんだろう。
悪くはない。悪くはないんだけど……、ここでもうちょっと女性らしいとか可愛らしいものだったら俺は譲葉ちゃんにやられていたかもしれない。でもそんな所も譲葉ちゃんらしくて気持ちはほっこりした。
「あっ!ちょっと!私達が話してる間に皆で何してるのよ!」
「そうよ!抜け駆けよ!」
「はぁ……。仕方ありませんね……。それじゃ咲耶ちゃん、私のも見てください」
薊ちゃん、紫苑、皐月ちゃんを放ってこちらで勝手に話を進めていると気付いたようだ。三人も戻ってきて皐月ちゃんがスカートをたくし上げた。その下に穿かれていたものは……。
「ちょっ!?皐月ちゃん!?それは……!」
「咲耶ちゃんはどう思いますか?」
「あうぅ~……」
やばい……。皐月ちゃんを直視出来ない。何しろその下に穿いていたのは……、褌だ。何故に褌?でも皐月ちゃんらしいと言えば皐月ちゃんらしい気もする。皐月ちゃんは和服も良く着ている。だから褌自体はよく着用しているんだろう。でも学園の制服の下に褌って……、何かそのミスマッチがまたそそられる。
「咲耶ちゃん……」
「ふっ、ふぉぉ~っ!?」
横からツンツンと腕を突かれてそちらを見てみれば……、椿ちゃんが……、おっとりお姉さんが……、捲ったスカートの下に穿いているのは真っ赤なランジェリーだった。あの椿ちゃんが……、おっとりお姉さんが……、その性格や姿に似合わず着ている派手なランジェリーのギャップが堪らん!
「咲耶ちゃんならこういうのがお好きですよね!」
「アッハイ……」
茜ちゃんが見せてくれていたのは……、真ん中に小さなリボンがある普通の綿パンだった。むしろ子供向けっぽくて普通じゃないと言えるかもしれない。少なくとも俺達の年齢でこれはどうかと思う。
「芹も見せておきなさいよ!」
「あっ!キャァッ!?」
「ブホッ!?」
近くで様子を見ながらも中々見せる踏ん切りがつかなかったらしい芹ちゃんのスカートを薊ちゃんが無理やり捲ってしまった。芹ちゃんが着用しているのは……、黒!まさかの黒!
清楚で大人しいタイプである椿ちゃんと芹ちゃんが赤と黒だと!これは……、このギャップは堪らん!
「咲耶っち!こっちも!」
「え~……、鬼灯さんがレーシングブルマなのはいつも通りですよね?」
鬼灯が見せてくれたのはいつも通りのものだった。それはインナー品評会の時に何度も見た。
「でも今日はこれだけでその下は穿いてないんだよ!」
「ブッ!」
鬼灯のカミングアウトに俺は噴き出した。そうじゃない……。その下に何も穿いてないからそれが下着だっていうものじゃないんだよ……。でもありがとう。ちょっと興奮した。
「……ん。咲にゃん」
「鈴蘭さん……、それは……」
鈴蘭が着用しているのはかぼちゃパンツ……、ではなくドロワーズだ。かぼちゃパンツはいわばブルマと同じで下着の上から着用するものだがドロワーズはそれ自体が下着であり、見た目こそ似ているけど物はまったく別物である!鈴蘭が着用しているのはドロワーズの方だ!
「ここまできたら次は……」
「いい加減覚悟を決めなさい!向日葵!えいっ!」
「あぁっ!」
「おおっ!?」
またしても大活躍な薊ちゃんにひまりちゃんのスカートは捲り上げられてしまった。その下に着用していたのは……。
「ピンク……」
それはひまりちゃんのイメージにぴったりのようでまったく違うような気もする。ピンクのサテンだった。これはどう判断すれば良いんだ?普通と言えば普通だけどひまりちゃんっぽいような、ぽくないような……。
「最後は花梨よーっ!」
「あっ!待ってください!私は……」
「「「あ~……」」」
「これは……」
りんちゃんが穿いていたのは……、下腹部まで覆ってぽっこりお腹を抑えるという……、お昼のテレビ通販で売っているアレだった。
「私達も見られるって思ってなくて……、いつもの下着なんです~~~っ!」
「「「(いつもなんだ……)」」」
そうかぁ……。りんちゃんはいつも下腹のぽっこりを抑えるやつを穿いてるのかぁ……。何か……、居た堪れない空気になっている。
「なんか……、ごめん……」
「謝らないでくださいっ!!!」
りんちゃんの心の叫びが空き教室に木霊した。
「ちょっと貴女達!ナニを……、じゃなくて何をしているの!」
「あっ……、ヤバ……」
「入江先生……」
りんちゃんのスカートを捲っている所に枸杞がやってきた。この場面だけを見たら俺達がりんちゃんをイジメているようにも見えるだろう。何しろ半泣きになりながらスカートを捲られている子とそれを囲んでいる集団だ。この場面だけを見たら勘違いをしても止むを得ない。
「事情を説明してもらいましょうか!」
「「「はい……」」」
その後俺達は枸杞にこってり絞られることになったのだった。
~~~~~~~
りんちゃんをイジメていたわけではないということは説明で分かってもらえた。でもその分というか俺達が馬鹿な下着品評会をしていたことは枸杞にバレて散々怒られた。そして皆が帰った後に俺だけ枸杞に残されている。
「あの……、入江先生?」
「九条様……、皆さんにも下着の試着をして見せていたんですから私に見せても平気ですよね?」
「…………え?」
「ふふっ」
枸杞はニチャァッと笑っている。今なんて言った?まさか枸杞にまで下着品評会を見せなければならないのか?そのために皆は先に帰して俺だけ残らせたのか?
「他の方にも見せていたんですから、良いですよね?さぁ……、さぁ!」
「うぅ……。それは……」
誰も居ない空き教室で枸杞が圧力を強めてくる。何かもう……、見せてしまった方が手っ取り早く楽になれるんじゃないかという気がしてきてしまう。俺が少し恥ずかしいのを我慢すれば……。
『そこまでです!』
「「――ッ!?」」
俺が枸杞に迫られて諦めかけたその時……、どこからともなく聞きなれた声が聞こえてきた。そしてその瞬間、ガシャーンッ!と窓を突き破って影が飛び込んできた。
「椛っ!?」
「チィッ!良い所で邪魔を!」
窓をぶち破って飛び込んできたのは椛だった。ロープがぶらぶらしている。上からロープで窓に突っ込んだようだ。
「大丈夫ですか?咲耶様!」
「椛!このようなことをしてはいけません!怪我をしてしまったらどうするつもりだったのですか!」
「ああっ!私の心配をしてくださる咲耶様……。ですが大丈夫です!いつか窓から飛び込むことがあると思って訓練してきましたので!」
「そうですか?それなら良いのですが……」
「良いの!?っていうか窓から飛び込むってどんな状況を想定して訓練してたのよ!?」
枸杞だけ何故か慌てている。こんなのは俺だって百地流で訓練している。それなら椛だってそういう訓練をしていてもおかしくはない。
「咲耶様のお部屋に侵入する時に決まっているでしょう!それより観念しなさい!この変態教師!無垢な咲耶様の無知につけこんでこんなことをする淫行教師め!」
「でも椛……、どうして……」
いつもの椛ならこんなことはしないはずだ。それなのに何故今日はここまで危険なことをして強行突破してきたのか。
「今朝咲耶様が新品の下着をと言われたので!前々からこの淫行変態教師に脅されていて今日下着を見せろと言われたのでしょう!」
「あ~……」
今朝俺がいつもと違うことを言ったからか……。でもそれは枸杞は関係ないんだよなぁ……。助かったのかもしれないけどそのきっかけというか疑った理由は枸杞とは関係ない。
「それは私じゃないわよ」
「問答無用!チェイッ!」
「うぎゃっ!」
「悪は滅びた!」
枸杞の脳天にチョップをした椛はそれで万事解決したとばかりに俺の手を取って帰路へと着いたのだった。え?これで解決ってことでいいの?




