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第千三百七十二話「インナーの一歩先へ」


 昨日は散々な目に遭った……。デイジーとガーベラと三人で一緒にお出掛け出来る機会なんてこれが最後かもしれない。そう思って二人に合わせて精一杯楽しもうと思ったのは事実だ。でもその内容があんな……、今思い出しても口に出して言えないような下着の試着ばかりだなんて……。


 あれ……?よくよく考えてみれば俺って毎日『散々な目に遭った』とか言ってないか?昨日も一昨日も、なんなら思い出せる限りで大体の日はそんなことを言っている気がする。……気のせいか?気のせいだよな?


 それはともかく二人に試着させられた下着は本当に酷い物ばかりだった。ただのシールだったり、紐だったり、ぱっくり割れて開いていたり……。あんなのを着て人に見せるなんて恥ずかしすぎる。


 でも待てよ?人に見せないのなら何のためにあんな下着があるんだ?


 人に見せないのならばもっと機能性を重視したオバちゃんパンツでいいんじゃないか?ダサくてデカくてちょっと下腹を締め付けてスタイルを良く見せる!とかが売りになってるような、テレビショッピングとかで売ってそうなああいうので良いということになる。


 別に下腹を締め付けてスタイルを良く見せたいとか、漏れ防止機能があるとか、そういう機能が目当てで言ってるわけじゃない。他人に一切見られる心配がないのならば見た目の可愛さよりも機能性重視でそういった機能寄りの物が良いじゃないかという話だ。でも皆そんなオバちゃんパンツなんて穿いていない。


 もちろん学園では体育なんかがあって着替えるから人に見られる可能性がある。人に見られた時にああいうオバちゃんっぽいパンツだと笑われるから、見られる前提でそれなりに気を使った物を着用しているということになる。ならば昨日の下着達もそうじゃないのか?


 自分一人で着用するだけならあんな意味不明で不便なデザインである必要がない。つまりあれらは人に見せることを前提にあのように出来ている。だから見られる、見せるのは当然のことだ。でもあんな物を着用している姿を見られたら恥ずかしい。これは大いなる矛盾だ。


 まぁ……、俺は恥ずかしいというだけで人によってはむしろ積極的にああいう姿を見せたいという人もいるんだろう。だからこそ売られているわけだしな……。でも俺には無理だ。あれは恥ずかしすぎる。


「あっ!」


「え?いかがされましたか?咲耶様?」


 俺がふとあることに気付いて声を出してしまったので、学園へ向かっている車内で俺の準備をしてくれていた椛が驚いていた。


「あぁ……。いえ、何でもありませんよ……」


「そうですか?何か私に不手際が……」


「いいえ!椛はとてもよくしてくれております!」


 自分が何か失敗してしまったのかと思って椛が気にしていたので気にしないようにフォローしておいた。本当に椛のせいで声が出たわけじゃない。俺が声を出してしまったのは昨日のことを考えていたからだ。


 昨日俺は散々妖しい下着を試着させられてデイジーとガーベラに見られて品評されてしまった。だというのに……、結局二人は試着をせず俺は二人の下着姿を拝めなかったじゃないか!これは不公平だ!


 デイジーの何もかもが大きいビッグサイズボディも、ガーベラの妖精のような肢体も、どちらも見損ねた。俺は散々マネキンか着せ替え人形のように試着させられて見られたというのに、一緒に買い物に行って楽しむという趣向だったはずなのに……、着替えて見られたのは俺だけで二人の下着の試着を見られなかったなんて!


「あああぁぁぁ~~~っ!!!」


「――咲耶様っ!?大丈夫ですか?咲耶様っ!?」


「あっ……、ええ……。大丈夫です……」


 しまった……。また車内で学園に向かっている最中だということを忘れていた。自分の不手際かと思ってオロオロしている椛をまた何とかフォローする。


「九条様って時々変ですぅ~」


「えっ!?おほほっ!それは睡蓮ちゃんの気のせいですわ!おほほほっ!」


 やべぇ……。あまり変な態度を取っていると俺の中身が男だって見抜かれてしまう……。気をつけないと……。




  ~~~~~~~




 学園に到着していつもの行列を抜け、三つ葉達と挨拶を交わしてから教室へとやってきた。今日も一日頑張りますか。


「御機嫌よう」


「おはようございます咲耶様!」


「御機嫌よう咲耶ちゃん」


 皆と挨拶をしてから席に着いて荷物を片付ける。一応教科書とか持ってきているけど実際もう授業なんてほとんどしていない。果たして教科書を持ってくる意味はあるのだろうか?でも学園が持ってこなくて良いと言うはずもないし、一応授業らしきものはしているんだから持ってくるべきなんだろうな。それは分かってるけど何か無駄な気がしてならない。


「ところで咲耶ちゃん?」


「昨日はデイジーとガーベラとお楽しみでしたね?」


「え?あの……?」


 俺が荷物を片付けていると皆が笑っていない笑顔で集まってきた。どうして俺がそんな詰め寄られるようなことをされなければならないんだろう……。むしろ昨日のことは俺の方が被害者で大変な目に遭った方だと思う。それなのに俺だけ詰め寄られるのは不公平じゃないだろうか?


「待ってください。私は何も楽しんでなどおりませんよ。むしろ大変な目に遭っただけで……」


「咲耶ちゃんが大変な目にって……」


「絶対エッチな目だよ!」


「咲耶様!詳しく!」


「えぇ……」


 俺は何もやましいことはしていない。むしろされた方で被害者だと言っても過言ではないはずだ。そう主張したのにむしろ皆の食いつきが凄くて圧が強くなった。


「あのようなことを詳しくなんて……」


「あのようなこと!?」


「やっぱり!絶対エッチなやつだよ!」


「咲耶様!詳しく!」


「あうぅ……」


 皆は折れてくれるとか諦めてくれるどころか余計に、ますます圧が強くなってきた。これはもう話さない限りは解放されない。それを理解した俺は昨日の出来事を掻い摘んで皆に説明した。これを聞けば俺が大変な目に遭った被害者だと理解してくれるはずだ。そう思ったのに……。


「なんっっって!なんっっって羨ましい!」


「けしかりゃん!」


「ぁ……、聞いてただけで鼻血が……」


 何か皆物凄く興奮している?怒りに震えているのか?どういう感情なのか良く分からない。ただ説明を聞いたからといって俺への同情が集まったり、圧が弱まったりはしないようだ。


「咲耶ちゃん!私達ともしましょう!下着品評会!」


「そうです!かつてしていたインナー品評会の一歩先へ!」


「インナーと下着は違いますよ!?」


 皆は一体どうしてしまったんだ?そんなに新しい下着が気になるのか?いや……、待てよ?


 俺の前世のイメージでは女の子というのは他の子が穿いている下着とかが気になるんだよな?だから着替えの時とかにどんな下着を着用しているかお互いに見たり、調べたりしている。そして場合によっては『○○ちゃんのブラ可愛い!』とか『○○ちゃんの胸大きすぎ!』とかいう話になって、そこから巨乳キャラが胸を揉まれたりするのは定番の展開となっていたはずだ。


 俺はそういった物は所詮男が考えた創作物の中だけの話かと思っていた。でもそうじゃなかったんだ!『○○ちゃんのブラ可愛い!』とか『○○ちゃんの胸大きい!』は本当にあったんだ!


 皆もそういうことに興味がある。そういうことをしたい。他の子の下着とかが気になる。だから昨日の俺達の下着品評会のことが気になるし、自分達も同じようなことをしたいと思ってしまうものなんだ。


 いい……。これはいいぞ……。


 昨日俺は失敗した。俺だけ着せ替え人形にされて俺が見る機会はなかった。自分が見られるばかりで見る方を楽しめなかったのは一生の後悔だ。でも……、このグループの皆はそれと同じことをしたいと言っている。つまり……、皆と下着品評会をしたら今度こそ俺も皆の下着姿を拝めるということだ!


 いや……、違うよ?別にいやらしい意味じゃないよ?俺はただ……、そう……、ただ単純に他の子達はどんな下着を着用してるのかなぁ~?って気になっているだけだ。ちょっと自分の下着を選ぶのに参考にしたいなぁと思っているだけだ。これは他の子達だってそう思っているんだからお互い様!女の子同士なら普通のことなんだ!


「ふへへっ!咲耶ちゃんの下着姿……」


「あぁっ!咲耶様!そんな大胆な!?」


「皆さんの下着を品評……、そんなことが……。うふふっ!」


 俺達のグループは皆『うへへ』『げへへ』と笑っていた。それを遠巻きに少し変な目で見られていたのだがそれに気付いたのはかなり経ってからだった。




  ~~~~~~~




 朝から俺達は下着品評会の話題で持ち切りだった。食堂で昼食を終えた後のティータイムでもその話題が続いている。


「えっ!?咲耶っちの下着を観賞する会を開くの!?私達も混ぜてよ!」


「……ん!仲間外れいくない!」


「えっと……、私達も……」


「参加出来るなら参加したいです」


 食堂では他のクラスの子達も集まる。当然下着品評会の話題を持ち出していれば聞かれるわけで、四組五組のメンバーも自分達も参加したいと言い出した。誰は良いのに誰は駄目だとは言えない。参加したいというのなら断る理由もないんだけど……、本当に良いのか?


 さっきまでの俺はどこか浮かれてしまっていた。皆の下着姿を見れると思って……、じゃない!違う!違うよ?ただ女の子同士って下着とかを気にするから、皆はどういうものを着用してるのかなとか、自分の下着を選ぶ参考にしようと思っていただけだ。でもこうして時間を置いて冷静になって、しかもひまりちゃんまで参加すると聞いたら少し我に返った。


 ゲーム『恋に咲く花』で主人公・藤原向日葵がそんなことをするイベントなんてあるはずもない。攻略対象と何らかのイベントでお泊りとか一泊とかになって、下着姿をうっかり見られるとかそういうイベントは確かに存在する。でもそれは一応不慮の事故というか、定番のラッキースケベイベントみたいな奴だ。決してお互いに下着を見せ合うとかいうわけのわからないイベントではない。


 俺達のグループは遥か昔からインナー品評会をしていた。そのせいで感覚が麻痺してしまっていたんだ。そういうことにあまり抵抗がないように育ってしまった。でも世間的に考えたら女の子がお互いに下着を見せ合うイベントなんて異常なんじゃないだろうか?


 俺が言ったように体育で着替える時とか、旅行に行って大風呂とか温泉で一緒に入る時に服を脱ぐとか、そういう特別な時にそういうイベントが発生するというのはあるかもしれない。でもお互いの下着を見せ合うために集まって、何でもない場所でお互いに下着を見せ合うなんておかしい気がしてきた。


 俺達は昔からインナーの見せ合いをしていたからそれが当たり前のようになってしまっている。インナーは暑い夏に下着を見られないように少しでも涼しくインナーを穿いて快適に過ごすためにお互いにアドバイスし合うという意味があった。でも本当に下着の見せ合いなんてして良いのか?これはおかしいことじゃないのか?


「じゃあ明日の放課後に早速全員で集まって下着品評会をしましょうね!」


「いや……、薊ちゃん……、やはりそれは……」


「楽しみだねー!」


「どんな下着があるのかなぁ?」


「えへへ~!」


「うぅ……」


 皆が無邪気な笑顔でもう明日のことを楽しみにしている。今更それは変だからやめようと言い出せない。常識人であるはずの皐月ちゃんや芹ちゃん、ひまりちゃんやりんちゃんもそれは変だとかやめようと言わない。ということはやっぱり俺だけが変なのか?俺の中身が男だから普通の女の子達についていけないだけなのか?


 俺がここで一人だけ変だとかやめようと言い出したら俺の中身が男だとバレてしまうかもしれない。折角ここまで無事にやり過ごしてきたというのにもうすぐ卒業という段階で失敗するわけにはいかないだろう。もしここで俺の中身が男だとバレて皆がそっぽを向いたら本当に断罪と破滅が近づくかもしれない。


 いつかは皆にも俺の中身が男だと言う日が来るかもしれない。それは分かっている。でもそれは今じゃないだろう。こんな卒業パーティーの断罪を控えた直前にそんなことを言って皆の協力が得られなくなったら本当に破滅しかねない。もし俺の中身や前世のことについて皆に言うとしてもそれは卒業パーティーを乗り越えた後の話のはずだ。


 そうなると……、やっぱり明日皆と下着品評会をしなければならないのか……。


「咲耶様も明日のことが楽しみなんですね!ニコニコされてます!」


「えっ!?いや……、あははっ……」


 違うよ?違う!俺は別に皆の下着を見られるのが楽しみとか思ってるわけじゃないから!



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― 新着の感想 ―
[一言] バレたらバレたで信じてもらえないけどアピールが増える
[良い点] 下着品評会! あまりにも直球なイベントに咲耶様も思わずニコニコ!
[一言] 咲耶様、見られてばかりで相手のを見れなかった事実にいまさら気付く 咲耶様がとつぜん叫びだしたり頭抱えたりするのは、通常営業です。持病です。 みんな羨ましがるだろうなーと思っていたけど、インナ…
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