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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
メリナード王国領でサバイバル!
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第090話~暗躍と進展~

今日もファッキンコールド_(:3」∠)_

 結果的に言えば、沼鉄鉱は材料として結構優秀なものであった。形成経緯からして、汚水槽から採取された沼鉄鉱は基本的に全て金属だからであろう。ただ、金属の質は良くないというか、簡易炉で溶かしてみると鉄リソースだけでなく銅や銀、金、鉛や亜鉛などのリソースも少量ながら得られるところを見る限り、普通に使うには色々と問題の有りそうな資源ではある。

 俺の場合は簡易炉が内部で各種リソースに変換してくれるから、個別に利用することができるんだけどね。俺にとっては多数の金属リソースを同時に得ることのできる都合の良い素材であった。


「鉄はこれで良さそうだ」

「それは良かったのです」


 沼鉄鉱の処理を開始し、リソースの貯まり具合を確認した俺の言葉にポイゾはニコリと微笑んだ。本人としてはちゃんと使えるかどうか少し不安であったらしい。


「色々な金属が混ざりあっているというのはわかっていたのです」

「なるほど。確かに普通にこれを鉄として使おうとすると大問題だろうな」


 不純物が多すぎてとてもではないが使い物にならないだろう。こういう低品質の鉱石も問題無く使えるのは俺の能力の強みのひとつなんだろうな。

 そうしていると、何かがパンパンに詰まった麻袋を持ったベスが帰ってきた。何やら重そうだな。


「ただいまー。持ってきたわよ、砥石」


 そう言ってベスは麻袋を石床の上に降ろし、その中から砥石らしきものや、どこから持ってきたのか革でできた馬の鞍、束になった革紐、清潔そうな布などを取り出し始める。


「凄いな。どこから調達してきたんだ?」

「聖王国軍の宿舎とか馬房、鍛冶工房からよ」

「盗んできたのか」

「取り返してきたと言って欲しいわね。先にこの城にあった全てを奪ったのはあいつらなんだから」


 二十年も経っているんだから砥石も鞍も聖王国軍が用意した品だと思うんだが……ま、まぁ必要なものだし細かいことは気にしないでおこう。うん。


「これでより上位の作業台が作れそうだ。ありがとうな、ベス」

「あまり頻繁には使えない手だから、それだけは覚えておいて」

「わかった」


 度々こんなことをしていれば警戒されるだろうしな。撹乱はできると思うけど。

 あー、でもこんな盗難事件があったらキュービは警戒しそうだな。俺の脱走はとっくにバレてるだろうし。


「誰にも見つからなかったのか?」

「見つかってないと思うわ。私達が見つかると大騒ぎになるし」

「なるほど」


 キュービがこの事件を把握しなければいいんだが……あいつは油断がならないからなぁ。把握されていると考えて行動したほうが良さそうだ。

 しかし、ベスは良い仕事をしてくれたな。砥石だけでなく皮革素材も調達してきてくれるとは……鞍はこのままじゃ使い途がないが、分解すれば素材になるからな。

 使い途と言えばアレだ。


「金とか今の所使い途がないんだよなぁ」

「ぴかぴかー」


 沼鉄鉱を溶かして抽出した金のリソースをインゴット化して取り出し、手のひらの上で弄ぶ。

 残念ながら、今の状況下では金は本当に何の役にも立たないなぁ。重いし柔らかいから、意外と銃の弾頭材料としては良い仕事をするのかもしれないが……まぁ趣味の領域だな。貴金属の弾丸とか。


「帝国の方では棒状に加工した金や銀を通貨として使っていると聞いたことがあるのです」

「そうね、帝国との国境付近では聖王国でもそこそこ出回ってるらしいわよ」

「へー。まぁそういうふうに加工するのはわけないけど、そうしたところで使い途がないよなぁ」

「ちかどうからー、まちにでて、こーすけがおかいものしてくればいいー?」

「そんなことできるわけ……いや、悪くないわね?」

「えっ」


 ライムの発言にベスがそんなことを言い始める。いやいや、危ないでしょ?


「私は反対なのです。コースケがそれなりの格好をしていけば確かにそうそう見つかって拘束されることはないと思うのです。でも、もし見つかって拘束されでもしたら終わりなのですよ」

「それはそうね。でも、ほとぼりが冷めてからなら大丈夫だと思うわよ。一週間……いえ、十日もすれば普通は死んだと思うでしょうし」

「ちょっと話が見えないんだが」

「せいおうこくのひとたちはー、わたしたちのことをこわがってるー」

「あいつら、私達三人のことを知性も理性もないスライムだと思ってるからね。コースケは独房から地下道に逃げたでしょう?」

「城の地下道には私達が居るということを彼らはよく知っているのですよ。そんな場所にそんなことを知らない囚人が逃れた。どう思うと思いますのです?」

「……あいつ死んだわって思うかな」

「なのです」


 ポイゾがコクリと頷く。ベスはその上で十日ほど置いてほとぼりを冷まし、確実に死んだと思われるであろう時間を置き、その上でしっかりと怪しまれないように変装をした上で街に出るのはアリかもしれないと言っているわけだ。


「でも、リスクはゼロではないのですよ」

「それはそうね。よほど欲しいものでもない限りは取るべき手段ではないと思うわ」

「そうだな。わざわざリスクを負うことはないな。でも、手段の一つとしては検討に値するし、準備だけは進めておくか」

「それがいいー?」


 そういうわけで、俺はメリネスブルグの街に進出するための準備も並行して行うことになった。

 相談の結果、俺の変装は東方の帝国と聖王国との紛争地帯からこちらにやってきた人間の傭兵か冒険者、という感じにすることにした。


「見た目は人間の男だから。一人旅をしても怪しまれないようにするとなると、それが一番でしょうね」

「カバーストーリーをちゃんと考えておいたほうが良いのです」

「そこそこ稼げたから士官先を探して諸国を回ってるとか?」

「そんな感じで良いんじゃない? 路銀が尽きかけて、記念にとっておいた帝国貨幣を換金するとかそういう感じで」

「そうするか」


 なお、カバーストーリーを考えている間ライムは一切発言をしなかった。俺の椅子になりながら……というか、俺を抱っこしたままスヤスヤとお昼寝をしていらっしゃったので。大きさとか形が変幻自在って凄いよな……なんだろう、この圧倒的母性に包まれてる感は。

 ライムが全体的に大きくなっていて、俺との対比がまるで子供と大人みたいになっているのもあるけど、間違って潰さないように配慮している点とか、守るという意思がなんとなく伝わってくる感があるというか。


「……」


 ベスとポイゾの二人がなんか怪しい視線をこちらに向けてきている気がする。気のせいだろうか。


「……今日はこれからどうするのです?」

「これからかぁ。うーん……」


・作業台アップグレード――:機械部品×10 鋼の板バネ×5 革紐×2

・簡易炉アップグレード――:動物の皮革×5 レンガ×50 砥石×3 機械部品×10


 粘土はあるし、レンガは作れる。ベスが皮革と砥石を調達してきてくれたから、簡易炉のアップグレードは問題なくできそうだな。簡易炉が鍛冶施設になれば鋼の板バネも作れるから、作業台も改良できるだろう。ただ、部品とか作るのに時間はかかるんだよな。


「今日はここに留まって作業を進めることにする。材料は揃ってるから、じっくりと作業台と簡易炉を改良するよ」

「そう。なら私達もここで複体の管理に力を入れましょうか」

「なのです。情報収集もするのですよ」


 二人はそう言うと、ライムと同じように目を閉じてじっとしはじめた。まるで寝ているみたいだが、これが複体の管理に力を注いでいる状態なのだろうか?

 邪魔することもないな。俺はライムの腕の中から抜け出し、簡易炉と作業台のクラフトメニューを開いた。まずはレンガと機械部品を量産しなきゃならないからな。


「とはいえ、暇だな」


 基本的にクラフト作業というのは手間がかからないものだ。必要数をクラフト予約して、あとは待つだけである。それを終えてしまったらやることがない。

 ステータス画面を眺めてみるが、最近は俺自身が直接戦闘をすることも無かったのでレベルも上がっていないし、アチーブメントも特に増えていなかった。またぞろ女性関係のアチーブメントが増えているかと思ったのだが、そういうことも無かったようだ。建築系のアチーブメントも増えてないし、新しく作った作業台も無いからな……くっ、付与作業台が作れず放置状態になっているのがもどかしい。

 そうしているうちに部品ができてきたので、早速簡易炉をアップグレードする。

 閃光が俺の目を焼いた。


「忘れてたァ!」

「ちょっ、な、何事!?」

「まぶしかったー」

「なんなのです?」


 油断していた俺はまともに閃光を浴びて目が眩んでしまった。声を聞く限り、三人もびっくりしたらしい。本当にすみません。


「簡易炉や作業台をアップグレードする時、すんごい光るんだよ。忘れてた」

「人騒がせな……目は大丈夫なの?」

「ほっとけば治るから大丈夫」


 前にも直視して目がぁー! ってなったけど治ったしな。実際に少しずつ眩んだ目が回復してきているし、大丈夫だろう。


「本格的な施設になったのです」


 ポイゾが鍛冶施設を見て興味深げな顔をしている。ポイゾはアイラと気が合いそうだな。


「んー……」


 ライムはまだ眠いらしく、俺の傍にもそもそと寄ってくると俺を再び抱っこしてスヤスヤしはじめた。


「抜け出せないんだが」

「危ないことするから心配になったんでしょ。おとなしく抱っこされてなさい」

「別に危なくないんだけど……」


 ちょっと光るだけなのに……まぁいいや。ギリギリ鍛冶施設も作業台も操作できる距離だし。このまま鋼の板バネと変装用の武具でも作っておこう。刃渡りのあまり長くない丈夫そうな剣と、木と鉄でできた円盾で良いだろう。鎧はどうするかな……鎖帷子と軽装鎧一式にしておくか。

 本当は俺だってみんな大好きバスタードソードとかツーハンデッドソードとか使ってみたいが、圧倒的に筋力が足りない。ショートソードを使うのが精一杯だ。というか、変装用だからね。実際に振るって戦うわけじゃないから、軽いに越したことはない。

 本気で戦うなら銃でも作るよ。弾丸の量産がキモだけど。弾丸と言えば、火薬も作らないといけないな……ということは調合台が必要で、それには大量のガラスが必要である。

 で、ガラスを作るには砂が居るんだよな……まぁ砂は土を分解すればいくらか採れるからなんとかなるな。インベントリにそこそこ入っているし、ガラスの材料になる砂にしておこう。

 ガラスはこれでいいとして、問題は厩肥だが……これは下水道がすぐそこにあるわけだし、採取できるんじゃないかな? あとでポイゾかベスに聞いてみるとしよう。

 なんとか設備が揃ってきたし、次は連絡を取る方法なり脱出プランなり撹乱計画なりを考えていくとするか。

 とはいえ、何にせよまずは連絡を取るところからだな。ゴーレム通信機か……問題はミスリルなんだよなぁ。純金とか銀でミスリル銅合金の代用にできないものかね? これも相談してみるか。魔法はさっぱりだからな。

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