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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
メリナード王国領でサバイバル!
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第089話~異世界都市鉱山?~

「あー……」

「こーすけおはよー」

「おはよう」

「おはようなのです」


 目を覚ますとすぐにスライム三人娘に声をかけられる。また昨晩も変な夢を見た気がする……巨大化したスライム娘達につまみ上げられ、あーんもぐもぐされる夢だ。それも代わる代わるに。

 こんな夢を見たのも昨日スライム三人娘にねっとりとした視線で見つめられたせいだろう。睡眠は寝ている間に脳が行う情報整理だ、なんて説もあるしな。きっとあの視線と食べられそうなんて思ったのが夢に出てきたんだろう。


「しかし、やっぱり全裸でお世話になるのは恥ずかしいんだが……」

「そんなこと言ったら私達なんて常に全裸なんだけど」

「私達は服を着られないのです」

「おあいこー?」

「おあいことかそういう問題じゃない気がするんだけどなぁ」


 今日はベスが俺の服を洗ってくれていたらしい。受け取ると、ほんのり温かくて着心地が良い。ポイゾの時みたいに爽やかな匂いがするわけじゃないみたいだが、これはこれで……こういうところにも地味に個性が出るんだな。


「今日はー?」

「朝飯を食べたらポイゾの言ってた鉄の心当たりってのを当たってみたいな」

「わかったのです。案内するのですよ」

「私は砥石を調達してくるわ。ついでに何か使えそうなものがあったら持ってくるわね」

「ライムはおしごとがんばるー」


 ベスは調達、ライムはお仕事を頑張るらしい。お仕事ってなんだ? と思って聞いてみたら、地下道の巡回と王族達が眠っているエリアの警備、それに下水処理なのだという。この部屋に留まって複体の操作に精神を集中するらしい。


「想像がつかんが、大変なんだな」

「おしごといっぱいー?」

「ライムは働き者よね」

「私達三人の中で一番の働き者なのですよ」

「そうなのか」


 なんとなく一番遊び回っていそうなイメージなのだが、そうでもないらしい。

 朝食を済ませてポイゾと一緒に下水道を歩き始める。スライム娘達は今日も朝食はいらないと言っていた。理由を聞くと。


「いっぱいもらったからだいじょうぶー」

「そうね、十分ね」

「摂り過ぎは良くないのです」


 などということを言っていた。下水道の処理でも栄養を得ているらしいし、一日一回ギズマ肉を食べるだけで大丈夫ということなんだろうか?

 しかしそれにしてはベスが挙動不審な気がするし、ポイゾはなんかニヤニヤしてるっぽい気配を感じるんだよな。ライム? ライムはいつも心から楽しそうにニコニコしてて、ある意味一番感情が読みにくいんだよ。


「どうしたのです? なにか考え事なのですか?」

「いや、大したことじゃない。それより、目的地までは遠いのか?」

「そうでもないのです。歩いて三十分もかからないのですよ」

「そうか。それじゃ食後の運動がてら歩きますかね」

「はいなのです。外のお話を聞かせてほしいのです」

「いいぞ。じゃあ何から話すかな?」


 シルフィ達と一緒に行動して見聞きしたことやものについて話をしていく。ポイゾは落ち着いているような印象を受けるが、好奇心がかなり強いようだ。特に、元の世界――地球の話に強い興味を示した。


「コースケの話は興味深いのです。そういえば、コースケは最初に私達を見た時に全然驚いた様子を見せなかったのです。元の世界には精霊や魔物はいなかったのですよね? 何故なのですか?」

「ああ、それは架空の存在としてのスライムは存在していたのと、そんなスライムを擬人化したキャラクターが出てくる色んな作品があったからだな」

「きゃらくたー? さくひん? なのです?」

「うーん! なんと言ったら伝わるのかな!」


 この世界にも言い伝えや童話、寓話の類はあるだろう。物語という概念もあるのだろうか? と思って聞いてみるとあるらしい。なら話が早い。頑張って説明してみた。


「つまり、実際には存在しない物語上の架空の存在として私達みたいなものを見聞きしていたから、そういうものだと納得できたということなのですね」

「はい」


 五分以上にも及ぶ俺の的を射ない説明をポイゾは正確に読み取り、まとめてくれた。くっ、俺が元営業職だったらもっと適切に伝えられたのだろうか? どうやら俺は話術スキルが低いようである。


「でも、似たようなものはあくまで似たようなものなのですよ。実際には全然違うものだと思うのです」

「それはそうだな。スライム娘と一口に言っても色々なタイプがいたし。逆に、同じスライム娘っていうカテゴリの中にも複数のタイプがいたから、ポイゾ達を見ても『ああ、そういうタイプなのね』くらいにしか思わなかったのかもしれない」

「それはありえる話なのです」


 一口にスライム娘って言っても本当に色々なタイプがいるからね。コアのある無しとか、分裂できるタイプかどうかとか、喋るタイプとかそうじゃないタイプとか、擬態も形だけのパターンもあれば服装から何から完璧に擬態するようなタイプもいるし。

 そもそもスライム娘というか、スライム系みたいな壮大なカテゴリを形成している気がするな。うん。基本なんでもアリの強キャラだったりするし。そういう意味ではライム達をすんなりと受け容れられる土台はあったってことだよな。


「それにしても、普通の人間は自分とは違うものを恐れるものなのですよ?」

「そりゃ最初にライムを見た時は怖かったぞ。スライムって一口に言っても弱いタイプと強いタイプがいるし、好戦的なタイプだったらこの暗い地下道を逃げ回らなきゃならんところだったわけだしな。でも、第一声が『おいしー』だったからなぁ」

「……それはライムのファインプレーなのです」


 あれがベスやポイゾだったら無警戒にギズマ肉に食らいついて、おいしー! とはならなかっただろうからな。第一印象って本当に大事だよな。

 例えば、最初にライム達を見たのが聖王国の連中を挽肉に変えた姿とかだったら、俺もこんなに気を許せなかったと思うし。ライムの『おいしー』は俺の中でスライム娘達に対する警戒度を大きく下げる要因になっていると思う。


「つきましたのですよ」

「ここか?」


 ポイゾに案内された先にあったのは、広い空間だった。水が流れる音がする。なんだろう、この空間は。少し下水のような匂いがする。


「ここはお城の地下の下水道、その汚水槽のひとつなのです」

「汚水槽って割には水は綺麗に見えるが。少しだけ臭いはするけど」

「それは私達が頑張って汚水を浄化しているからなのですよ」

「なるほど」


 そんな会話をしていると、ポイゾが身体の一部を汚水槽の中に入れ始めた。光が届かないので、ポイゾの身体が汚水槽の中でどうなっているのかはわからないが、ポイゾは何かを探すような表情で首を傾げたりしている。


「何をやっているんだ?」

「さっきも言ったように、ここは汚水槽なのです。お城からは色々なものがこの下水に落ちてくるのですが、中には金属製のものとかも結構あるのです」

「なるほど?」

「私達はやろうとすれば金属も溶かせるのですが、少し面倒なのです。だから、汚水の流れに影響が出ない範囲で汚水槽にそういうものを溜めてあるのです。ある程度溜まったら、一気に消化するわけなのです」

「例のジャンク置き場と同じだな」

「なのです。特に、聖王国の連中がお城を占拠してからというものの、ゴミ捨てのマナーが悪いのです。なんでこんなものを? ってものが捨てられることがあるのですよ」

「例えば?」

「税金関係の書類とか、物品の納入書とかそういう怪しい書類から始まり、人間や亜人の死体とか色々なのです」

「うわぁ」


 色々な意味でヤバそうなものが捨てられていた。というかそんなもん下水に捨てるなよ……と戦慄していたらポイゾが何かを水中から引き上げてきた。


「なんだこれ」

「汚水槽の底に堆積した元々金属だったものなのです」

「えぇ……」


 それは茶褐色の石のような、そうでないような、名状し難い物体であった。ブロック状に成型されているのは、恐らくポイゾが水中でそうなるようにしたからなのだろう。


「これが素材になるのか……?」

「やってみるのです」

「そうだな、とにかくやってみるか」


 インベントリに入れると沼鉄鉱と表示された。沼……? いや、これは沼では無いだろう? 汚水槽だぞ? とはいえ鉄鉱と表示されるからには鉄鉱石の一種なんだろう。俺は寡聞にして知らないが……いや、そういえば沼とか池、泉なんかの底に鉄が沈んでることがあるとか聞いたことはあるな。

 絶対にこれとは違うプロセスで形成されるものだろうけど。そのようなものと思えば良いか……? まぁ、スライム娘が関わってる案件だし? 元の世界の常識とか条理を持ち出して考えるのはナンセンスだし?


「どうしたのです?」

「あ、ああ、すまん。使えそうな感じだから、どんどん採取してくれるか?」

「わかったのです。私にお任せなのですよ」


 ポイゾが鼻歌を歌いながら茶褐色の物体を次々と水揚げしてくる。海産物か何かかな?

 俺は黙々とその名状し難い沼鉄鉱のような何かをインベントリに収納していく。これ、鋳溶かす時に変な臭いとかしないだろうな……? 心配だ。

 作業自体は三十分ほどで終了した。なかなかの量が手に入ったが、この沼鉄鉱からどれくらいの鉄リソースが得られるかは未知数だ。


「これで全部か」

「必要とあらばあと三つ、同じような汚水槽があるのですよ。でもここよりも遠いのです」

「そうか。足りなさそうならそっちに足を伸ばすことも検討しよう」

「わかったのです。帰るのです?」

「そうだな。早速試してみたいしな」

「今度は何を作るのですか?」

「そうだなぁ、作業台とか鍛冶施設にアップグレードするための部品づくりかな。後は、武器も作りたいんだよなぁ……クロスボウは弦を手に入れるのが難しそうだし、俺一人分なら銃のほうが良いかな?」

「じゅう? なのです?」

「ああ、俺の世界の武器でな」


 寝床への帰り道もまたポイゾに元の世界の話をしながら帰る。武器については解放軍の話をした時に軽くは話したが、あまり詳しくは話さなかったからな。興味もあるようだし話すとするか。

 ポイゾは聞き上手なのか、話してて気持ち良いんだよな。

くさそうとか言ってはいけない_(:3」∠)_

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― 新着の感想 ―
都市鉱山みたいなもんですかね。 下水汚泥に含まれるレアメタルの回収!
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