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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
メリナード王国領でサバイバル!
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第072話~敵よりも増える仲間のほうが厄介だ(真顔)~

体調が悪くてあまり筆が進まなかった! 短いけど許して!_(:3」∠)_

 伐採を終えてガンマ砦に戻ると、またシルフィ達が集まって会議をしていた。大変そうだなぁ、と横目で見ながら通り過ぎようとしたらガシッと肩を掴まれる。


「コースケ、ちょっと意見を聞かせて欲しい」

「はい」


 スルーしようとしたのをシルフィに見られたらしい。その試みに失敗した俺はあえなくズルズルと引っ張られていく。ザミル女史と同行していた解放軍兵士は俺を笑顔で送り出しやがった。勝ったと思うなよ……。


「どうしたんだ、皆難しい顔をして」

「アルファ砦にな、難民……いや、義勇兵が集まってきた」

「聖王国の……ってわけじゃないよな」


 それなら最初に難民だなんて言わないだろう。


「うむ、主に獣人だが、旧メリナード王国の人間の兵も混じっている」

「それってあれか? オミット大荒野に行く行かないで別れたっていう?」

「そうだ」


 俺の言葉にダナンが首肯する。なるほど、人間が混じってるなら聖王国の動向も探れていただろうし、俺達が聖王国軍と戦闘を開始してからもうかなりの時間が経っている。色々と準備をして行動を起こしてもおかしくはないと思うが。


「どれくらいいるんだ?」

「一〇〇〇人だ」

「なんだって? もう一度言ってくれ」


 凄い数字が聞こえた気がする。


「一〇〇〇人だ」

「うっそだろお前」

「まともな兵力としては三〇〇ほどだがな。残り七〇〇は彼らの家族などの非戦闘員だ」

「参ったなオイ」


 確か本拠点の収容人数が一次工事を終わらせた時点で三〇〇〇人だったはずだから余裕で収容はできるはずだが、遠いんだよな……徒歩で一週間くらいかかる。


「メルティ、食料は足りるのか?」

「正直ちょっと厳しいですね。本拠点には備蓄がありますが、ここまで運んでくるのは難しいですし。早急に食料の生産拠点を作る必要があります。それも、最前線に近い位置に」

「本拠点は遠いもんな……」


 当初の予定ではオミット大荒野に引きこもる予定だったから、後方の本拠点で食料を作れば問題ないと思ってたんだよな。実際にはオミット大荒野から飛び出て活動しているので、俺達は補給線が伸び切ってしまっている状態だ。これは非常に良くない。


「オミット大荒野との領域境から少しオミット大荒野に入った辺りに拠点を作るか」

「そうする必要があるかと」

「幸い、オミット大荒野のメリナード王国側ではギズマは殆ど駆逐されている。危険は少ないはずだ」

「砦の補強どころじゃなくなったなぁ」


 いつだって想定外が起こるものだな。敵よりも突然大量に増える味方のほうが厄介だという現状。


「それにしてもなんというか、凄いタイミングだな。まるで誰かが手引きしたかのような……」

「キュービがな」

「キュービ? そういや最近見てなかったが」

「単身潜入して元メリナード王国軍の人間と接触してもらっていたのだ」

「単身潜入ってすげぇな」


 スパイか何かかな? スパイフォックス?


「とにかく、そういう状況でな。コースケの意見を聞かせてもらいたい」

「意見って言われてもな……まず、どういう方向の議論をしているんだ?」

「俺は義勇兵の戦力も加えて一気にアーリヒブルグを押さえるべきだと思っている」

「私は反対です。ただでさえ色々と手が回らない状況ですし、今は態勢を整えるべきだと思いましす」

「しかし、それでは聖王国にも態勢を整える時間を与えてしまう。敵の優位性は数だ。三つの砦を同時に攻められると厳しいぞ。防戦に回った途端に擦り潰されかねん」

「ですが――」


 ダナンとメルティが喧々諤々とやり合うのを眺めながらシルフィが困ったような笑みを浮かべる。


「さっきからこの調子でな、一向に方針が決まらんのだ」

「シルフィはどう考えているんだ?」

「そうだな。私はダナンの意見を採用しようと思っているのだが、コースケの意見も聞きたい」


 シルフィの言葉にダナンとメルティがグリンッと振り向き対称的な表情を浮かべる。ダナンは『流石姫様わかっておられる』とでも言いそうな顔で、メルティは『なんで私の意見が不採用なんですか!』とでも言いそうな顔だ。


「まずはこの地図を見て欲しい」

「この周辺の地図か。これが砦で、周辺の街や村に……この線は街道か?」

「そうだ。他にも小さな道はあるが、これは主に軍が移動可能な大きな街道を示しているものだな」

「……なるほど、本当に交通の要衝なんだな、アーリヒブルグは」


 地図を見る限り、アーリヒブルグさえ押さえてしまえば聖王国軍が南下することのできるルートは他に無くなる。アーリヒブルグさえ押さえてしまえばアーリヒブルグ以南の聖王国軍勢力を孤立させることができるとも言えるな。


「うん、そうなんだ。ここさえ押さえてしまえば聖王国は大兵力を投入して私達を圧倒するという戦略を取るのが難しくなる」

「こっちはアーリヒブルグをガッチリと守れば良いようになるわけか」

「その通りだ。結果的に防衛に割く戦力を少なくすることができるし、その分治安維持などに人員を回せるようになる」


 ダナンが拳を握りしめて力説する。対するメルティは少しうんざりとした表情だ。


「メルティは何が不満なんだ?」

「不満というか、落としたとしてその後の統治が心配なんですよ。アーリヒブルグを最短で落としたとしても、アーリヒブルグ以南にはまだまだ聖王国軍の兵がいるはずです。各地で騒乱を起こしたり、略奪行為を行なったり、最悪山賊化する可能性すらあります」

「それに関しては今後戦いを進めていけば常に付きまとう問題だろ。そんなことをすれば結果的に聖王国軍の評価は下がるし、それを討伐すればこっちの評判も上がるんじゃないか?」

「そう簡単に行けば良いんですけどね」


 メルティはそんなに上手くいくとは考えていないらしい。今までとは違う苦労があるのは確かだろうなぁ。今まではバカ正直に突っ込んでくるギズマにだけ気をつけていれば良かったわけだし。


「あまり心配することはないと思うけどな。上空から広範囲を偵察できるハーピィとゴーレム通信機があれば賊を狩り出すのは難しくないと思うし」

「うむ、私もそう思っている」


 俺の見解にダナンも同意する。山林に隠れていてもハーピィの目はなかなか誤魔化せるものではないし、ゴーレム通信機で相互に通信できる強力な部隊があれば賊を狩り出すのは難しいことではないように思う。


「力で解決できるようなことばかりじゃないんですよ……」


 この脳筋どもが、とでも言いたそうなジト目でメルティが俺とダナンを睨みつけてくる。ヒェッ……コワイ!


「ええと……コースケもダナンの方針に賛成ということでいいんだな?」

「お、おう……陣取りゲームでも交通の要衝を押さえるのは基本戦術だしな。内政を後回しにしてでも取れる時に分捕っておいたほうが後々楽になると思う」


 戦略シュミレーションゲームとかでも交通の要衝を押さえるのは基本中の基本だしな。相手の方が動員戦力が多いなら尚更だ。

 俺達は野戦よりも拠点防衛の方が圧倒的に得意だし、万一奇策でアーリヒブルグを迂回されてもハーピィの広域索敵能力とゴーレム通信機による情報伝達速度の差で各個撃破という戦術も採れる。


「今はその義勇兵達はどうしてるんだ?」

「アルファ砦に滞在中だ。戦力になる者はできるだけアルファ砦に残して、非戦闘員は護衛を付けて後送する予定だ」

「食い物とかは足りてるのか?」

「コースケが作った畑からの収穫もあるし、なんとかなるだろう。ベータ砦からも余剰の物資を送る予定だ」

「俺のインベントリにもまだまだ備蓄があるから、いざとなれば俺が走ればいいか」

「それよりもコースケには補給拠点を作ってもらいたいところだな。そうすれば遠い本拠点まで非戦闘員を歩かせずとも済む」

「それもそうか。明日から取り掛かろう」

「そうしてくれ。私とダナンはここに残ってアーリヒブルグの攻略部隊を編成する。コースケはアルファ砦に移動して生産拠点を作ってくれ」

「そっか……」 


 またシルフィと離れ離れか……仕方ないとはいえ寂しいな。


「アイラはそっちにつけるからな」

「ああ、怪我人や病人がいるかもしれないもんな」


 今度はどれくらいの期間離れることになるのだろうか? 街一つ落とすとなると長そうだよなぁ……うーん、寂しい。アイラやハーピィさんがいるから寂しくないということにはならないんだよな。彼女達のことは好きだけど、やっぱり俺にとってはシルフィが一番だし。


「……そんなに寂しそうな顔をするな。決意が揺るぐ」

「仕方ないだろ」

「あのー、お二人さん? そういうのはプライベートな時にやってくれるかしら?」

「ふふふ、羨ましいか?」

「……シルフィ? あまり調子に乗ってると――」


 ドヤ顔で胸を反らすシルフィにメルティが何か耳打ちをする。その途端、シルフィの顔に汗が浮かび始めた。なんだなんだ?


「良いのかしら?」

「それだけはやめてくれ!」

「どうしようかなー?」


 妙に焦った様子でシルフィがメルティに取り縋ってオロオロし始める。一体何なんだ!? すげぇ気になる!


「あー……会議はここまでだな。コースケ、明日に備えてゆっくり休めよ」

「おう」


 何か気まずげな様子でダナンがそそくさと会議室から出ていく。ダナンには何か聞こえたらしい。


「んー、あれが良いかな? それともあれが良いかしら?」

「悪かったからぁ!」


 あのシルフィが半泣きである。メルティ、一体どんな弱みを握っているんだ……やはり油断ならないな、メルティは。

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