第061話~研究開発部にて~
ぐぬぬ、体調が悪くてあまり書き進められなかった……無念_(:3」∠)_(明日はがんばります
最前線拠点で一晩過ごし、翌日は朝から治療である。スーパードクターコースケタイムである。
「お、おぉぉ!? お、俺の足が真っ直ぐに!?」
「痛みの酷かった膝が!?」
「腱を切られて動かなくなっていた指が動く……!」
「これでまた戦える!」
添え木無双なんですけどね、ええ。布と木片でお手軽簡単に作れる添え木で骨折後予後不良の人とか、膝を砕かれて足を不自由にしてた人とか、腕の腱を切られて手が不自由になっていた人達が快癒していく。四肢を失ってさえいなければ俺の添え木は何でも直しちゃうからね。
「何度見ても不思議な力であるな」
念の為に護衛についてくれているレオナール卿が半ば呆れたような声を上げる。レオナール卿もこうやって俺に治療されたクチだものな。
最初は怪我を治すと言っても懐疑的な態度であった負傷者達も、二人三人と俺が怪我を治していくうちに尊敬の眼差しを向けてくるようになってきた。ははは、もっと敬うが良いぞ。
治療は一時間もかからずに完了し、治療場所となっていた広場では久々に自由に身体を動かせるようになった人々が走り回ったり、飛び跳ねたり、練習用の武器を振るったりして健康な肉体の素晴らしさを満喫し始めた。
「皆の顔が明るくなったな」
「元通りに身体を動かせるようになった時には吾輩も感動したのである。コースケの力は本来、こういうことに使うのが正道なのであろうな」
「そうなのかもな」
人を殺すためでなく、人を生かすために力を使うのがまぁ理想的ではあるんだろうな。とはいえ、生きるということは戦うということでもある。俺をこの世界に送り込んだ奴の思惑なんてわかりゃしないが、俺は俺なりにできることをやっていくしかないだろうな。
治療を終えた彼らのことはこの砦の指揮官であるダナンに引き継いで、次に俺が向かうのは研究開発部である。ゴーレム通信機の更なる可能性、ラジオ放送の実現や、魔力式の動力についても開発を進めなきゃならないからな。
「ん、ようこそ」
「おう、皆も久しぶり」
「お久しぶりです」
「久しぶりね」
「おひさー」
見回してみるが、サイクスの姿が無い。ま、まさか。
「……サイクスは?」
俺の言葉を聞いたアイラ以外の研究開発部員が俺から視線を逸らした。ちょっと?
「ちょっと体調を崩して寝込んでいる」
「慈悲の心が無さすぎない? 君達」
「あはは」
笑い事じゃないと思うんですけど。俺にもそういう未来が待ち受けているのだろうか? 怖いです……震えてきやがった。アイラは大丈夫だよな?
「ちゃんと薬を処方しておいたから大丈夫」
俺の視線をどう勘違いしたのか、そんなことを言い始める。薬の力で解決ってそれ本当に大丈夫なんだろうな? 腎虚で身体を壊すとか腹上死とか洒落にならんぞ。
「あー、ええと。サイクスのことは横に置いておこう。うん」
話が進まないからな。すまん、サイクス。お前は良いやつだったよ。
「それでええと、今はどんな案件が進んでいるんだ?」
「魔力波中継器の開発と、色々な機器のゴーレム動力化、魔法銃の開発、魔剣の量産化、脈穴の魔力の結晶化ですかね」
魔力中継器とゴーレム動力化はわかるが、後ろ三つは初耳だな。一応何かの参考になるかと思って研究開発部の面々には俺の銃の情報も公開したんだが、それを参考に魔法式の銃を独自に開発するとは恐れ入った。
「魔法銃はコースケの作ったボルトアクションライフルを参考にしてるんだ。魔法の力で弾丸を発射する方法を模索してるんだったね?」
「そうですね。魔法銃の発射機構に関しては火魔法式、風魔法式と複合式を試しているところです。何れの方式も圧力漏れが課題となっています」
そう言ってラミアの鍛冶師とネズミ獣人の魔法使いが銃の設計図を見せてくれる。うーん、確かにこれはボルトアクションライフルを参考にしているみたいだけど、これはボルトアクションライフルではなく、前装式の銃を参考にしたほうが良いんじゃないか?
「この方式ならより参考になりそうな銃があるから、数丁作って明日にでも納品する。どういうものかというとだな……」
と、俺が知っている限りでの前装式銃の仕組みを説明する。火薬を押し込めたりしなくてもよくて、ただ弾丸を薬室に押し込むだけならクロスボウと左程変わらない速度でリロードできるはずだ。そして銃身の最奥で魔法を炸裂させて発射すると。弾丸と銃身さえしっかり作ればガス漏れの心配は無いだろうから、あとは発射機構と銃身の強度だけが問題になるだろうな。
「なるほど、確かにこっちの方が単純ね」
「こちらの方式で再度考え直してみます」
今晩のうちに前装式ライフルと弾丸を作って明日にでも彼女達に預けるとしよう。次は魔剣の量産化についてか。
「魔剣の量産化と脈穴の魔力の結晶化はここではなく、本拠点で進めている計画ですね」
「脈穴の魔力は無尽蔵。それを利用して高品質の武器の生産や、色々な魔道具の動力に使える魔力結晶を抽出しようとしている」
「技術的には可能なのか?」
「脈穴の魔力を汲み上げて収集する機構は結界装置の解析で模倣ができるようになった。あとはそれを収束させて結晶化する機構を開発しているのと、既成品の鉄や鋼の武具に高出力の魔力を照射し続けることで魔鉄化、魔鋼化を促している。まだ実験段階でしかない」
「実現すれば色々と捗るのは間違いないですね。魔鉄や魔鋼の武具が量産できれば、それだけで解放軍全体の戦力が向上します」
魔鉄や魔鋼の武具は通常の鉄や鋼の武器に比べると丈夫で切れ味が落ちにくく、また防具であれば魔法に対する耐性が高かったりするらしい。ふーむ、そういうのは俺には無いも手伝えそうに無いな。
いや待てよ? 例のブロックでできた世界でサバイバルするゲームだと装備に色々な効果を付与できる要素があったりしたな? 幻想鍛冶師なんてアチーブメントもあったし、実は俺の能力自体は魔法的な要素に対応している可能性もあるな。何か魔力を帯びた素材や建材を用意することによって、そっち方面で俺の能力を発揮できるのでは?
今の所俺のクラフトメニューにはそれ系の作業台が見当たらないが、そういったものをインベントリに入れることによってクラフト登録される可能性は十分にある。
「ちょっと相談なんだが、魔力を帯びた素材を少数でいいから一通り揃えて俺に譲ってくれないか?」
「ん? どういうこと?」
「いや、ちょっとした思いつきなんだが」
と、今考えたことをアイラを含めて研究開発部の面々に相談してみる。
実際、俺の世界に存在していないはずのミスリルやその合金も俺の能力で扱えるわけだから、そういった魔法的なアイテムの作成に対応した作業台なんかも俺は作れる可能性があるし、作業台が作れるなら何か有用なものをクラフトできる可能性だってあるはずだ、と。
「興味深い」
「コースケさんの能力に関してはなんでもありみたいなところありますし、充分可能性はありますよね」
「やってみるだけやってみたらいいんじゃないかい? それで何か作れるようになるなら、私達もその製品から技術を盗めるかもしれないわけだし」
「ん、やってみたらいい。コースケの作る魔法の品には興味がある」
皆は俺の提案に乗り気なようだ。皆で手持ちの資材を揃えて明日持ち寄り、実験をすることになった。うーん、新しいクラフト台の可能性か。ちょっと楽しみだな。




