第060話~思った以上の大戦果~
よーし、今日も18時投稿ギリギリセーフ!_(:3」∠)_(完全にアウト
やっと寝床から出てきたシルフィがピルナ達を含む女性数名に連行され、何かヒソヒソと話しているのを横目に俺は臨時宿泊施設を解体した。資源のリサイクルは大事だからね。
そのままにしとけって? いやいや、聖王国軍の斥候とかにシェルターの位置がバレるかもしれないからそれはちょっとね。
そうしている間に密会は終わったようで、シルフィの顔が耳まで真っ赤になっている。そしてシルフィと話していた女性達はどこか優しい視線をシルフィに送っていた。これは完全に聞き出されたやつですね、わかります。公開処刑かな?
「今回の件に関してはコースケさんは無罪ですね」
「無罪です」
「無罪で良いでしょう」
「む、無罪ですね」
そして俺は皆に口々に無罪判定された。やったぜ。シルフィは顔真っ赤にしてプルプルしてるけど。
「う、う、うがーっ!」
「うわーッ! 暴れシルフィだーッ!」
シルフィが暴れだしたので俺達は第一シェルター方面に逃げ出した。結果として遅れを取り戻せたのは良かったのかどうなのか。
「はぁ……はぁ……」
「ぜひー……ぜひー……」
「大丈夫か?」
「大丈夫ですか?」
第一シェルターに着いた時にピンピンしているのは俺とハーピィさん達だけだった。俺は強靭な心肺機能のおかげで、ハーピィさん達はそもそも空に逃げて悠々と飛んでたからね。
「コースケさん、タフですね」
「走るだけならな」
スキルを取得すればもっと早く、長く走れるようになるだろうな。生産系の拡充をしたら俊足とか強靭な心肺機能スキルを上げようかな? 俺の機動力上昇は今後色々と役に立ちそうだし。
そして第一シェルターでの夜。今日もまた臨時宿泊施設を建ててシルフィと二人きりなのだが……。
「……」
「シルフィ?」
「……」
今朝の失態に懲りたのか、俺と微妙に距離を取っていらっしゃる。無理に近づくとフシャーッ! と威嚇されるので、無理に近づくことはやめて長椅子の端と端に座ってお互いに様子見中である。まぁ、俺はボーッとしているように見せかけてスキルを吟味中なんだけども。
★熟練工――:クラフト時間が20%短縮される。
・解体工――:クラフトアイテムを解体する際の獲得素材料が10%増加。
・修理工――:アイテム修復時間を20%短縮、必要素材数を20%減少。
★大量生産者――:同一アイテムを十個以上作成する際、必要素材数を10%減少。
★伐採者――:植物系素材の取得量が20%増加。
★採掘者Ⅱ――:鉱物系素材の取得量が40%増加。
★解体人――:生体系素材の取得量が20%増加。
★創造者――:アイテムクリエイションの難易度が低下する。
★強靭な心肺機能――:スタミナの回復速度が20%上昇。
★俊足――:移動スピードが10%上昇。
・豪腕――:近接武器による攻撃力が20%上昇。
★優秀な射手――:射撃武器による攻撃力が20%上昇。
★鉄の皮膚――:被ダメージを20%減少。
・生存者――:体力が10%上昇、体力の回復速度が20%上昇。
・衛生兵――:回復アイテムの効果が20%上昇。
・爬虫類の胃袋――:空腹度の減少速度が20%減少。
・ラクダのこぶ――:乾き度の減少速度が20%減少。
さて、これが現在の取得可能なスキル一覧だ。取得済みのスキルには★がついているな。現状で必要無さそうなものは……爬虫類の胃袋とラクダのこぶは必要ないだろう。解体工も今の所必要ないな。修理工もいらないかな?
やはり強力なのは単純に取得リソースが増える伐採者、採掘者、解体人と、最近は同じものを多量に作ることが多いから大量生産者だろうか。創造者はスキルレベルが上げられないようだ。
戦闘面ではやはり優秀な射手一択だな。近接戦はしないぞ。組み合わせて考えるなら俊足と強靭な心肺機能も上げてアウトレンジ戦法を徹底するのが良いだろうな。
しかし、今使えるスキルポイントは10だから、スキルレベルをⅠからⅡに上げるとなると五つしか上げられない。伐採者、解体人、大量生産者は鉄板として、優秀な射手……いや、俺が戦うことは殆ど無さそうだし、攻撃力は武器で補うこともできる。ここは俊足と強靭な心肺機能を上げるか。
★熟練工――:クラフト時間が20%短縮される。
・解体工――:クラフトアイテムを解体する際の獲得素材料が10%増加。
・修理工――:アイテム修復時間を20%短縮、必要素材数を20%減少。
★大量生産者Ⅱ――:同一アイテムを10個以上作成する際、必要素材数を10%減少。100個以上の場合は20%減少。
★伐採者Ⅱ――:植物系素材の取得量が40%増加。
★採掘者Ⅱ――:鉱物系素材の取得量が40%増加。
★解体人Ⅱ――:生体系素材の取得量が40%増加。
★創造者――:アイテムクリエイションの難易度が低下する。
★強靭な心肺機能Ⅱ――:スタミナの回復速度が40%上昇。
★俊足Ⅱ――:移動スピードが20%上昇。
・豪腕――:近接武器による攻撃力が20%上昇。
★優秀な射手――:射撃武器による攻撃力が20%上昇。
★鉄の皮膚――:被ダメージを20%減少。
・生存者――:体力が10%上昇、体力の回復速度が20%上昇。
・衛生兵――:回復アイテムの効果が20%上昇。
・爬虫類の胃袋――:空腹度の減少速度が20%減少。
・ラクダのこぶ――:乾き度の減少速度が20%減少。
これでスキルポイントは0だ。生存者とか衛生兵とかも気になるけど、どっちも戦闘向けの技能だからなぁ。俺がシルフィ達と出会わず、ソロでサバイバルしていたらあっち方向に伸ばしていたかもしれない。
さて、スキルの取得は終わったけど。
「……」
シルフィは相変わらずそっぽを向いている、けどいつの間にか距離が詰まっている。俺がぼーっとしている間に距離を詰めてきたらしい。可愛いなぁもう。
☆★☆
可愛い可愛いシルフィを一生懸命宥めて仲良く夜を過ごし、翌日。
俺達は日が高いうちに最前線拠点へと戻ってくることができた。既に聖王国軍の兵を撃破したことはアイラを通じて皆に伝わっていたらしく、物凄い歓迎ぶりだ。
「よくぞご無事で」
最前線砦の指揮のために残っていたダナンが俺達を出迎える。アイラもすぐ横にいるな。
「ああ、コースケのお蔭でな。何か報告はあるか?」
「そうですね、色々とあります。食事を用意しますので、会議室でよろしいですか?」
「ああ、わかった。行くぞ」
「はいよ」
「わかったのである」
「はい」
シルフィに促され、俺とレオナール卿、そしてピルナも一緒に会議室へと向かう。その俺の横にアイラが並び、こっそりと俺の服の裾を掴んできた。視線を向けると、普段無表情なアイラが微かに笑みを浮かべる。
「どうしたの? コースケ」
「……なんでもない」
アイラのいじらしさと可愛らしさに悶えてしまったのだが、なんとか取り繕っておく。なんだこの可愛い生き物。
内心悶えながら会議室に着いた俺は先に席に着いていたシルフィの隣に座る。アイラは当然のように俺の横に座り、そしてその横にピルナが座った。ダナンとレオナール卿は反対側の席である。なんか席の座り方に偏りがある気がするが、気にしないでおこう。うん。
「さて、何から話すか。まずは戦果報告にしておくか」
「そうでありますな。ピルナ」
「はい。臨時砦に攻め寄せてきた五五〇〇名の聖王国軍ですが、コースケさんの仕掛けた罠によりその殆どが一晩でほぼ全滅しました。翌朝、自分の足で歩いて撤退していったのは一〇〇にも満たない数、七十二名だけでした」
「それ以外の者は?」
「跡形も無く吹き飛んだ者、死体の損傷が激しい者、深夜に現れたギズマに貪り食われた者などが多く、死体の数を数えることは難しい状態でした。いずれにせよ、徒歩で逃げた七十二名以上の生存者はいないと思います」
「成る程……ギズマの討伐を考えなければならないな」
「であるな。またぞろギズマが大発生しかねないのである」
「死体の処理は良いのか?」
「放っておけばギズマが綺麗に掃除してくれるだろう。問題はたらふく食ったギズマがまた大増殖しないかどうかだ」
「なるほど」
確かにまたギズマの大軍を迎撃するのは面倒だな。メリナード王国領で作戦行動を行なう解放部隊の邪魔にもなるし。
「ところで、今回壊滅させた五五〇〇人の損害ってのは、聖王国としてはどれくらいのダメージになるんだ?」
俺の質問にダナンとレオナール卿が相次いで答えた。
「三年前の時点でメリナード王国領に駐屯している聖王国軍の兵数は凡そ一二〇〇〇から一五〇〇〇程度の数だった。前回と今回の被害を合わせると、メリナード王国領に駐屯する兵数の約半分を撃破したことになると思う」
「現在の総兵数がわからないから、あくまでも推測である。だが、我輩達の反乱を潰した三年前よりも兵数が大幅に増えているということも無いと思うのである。このダメージはメリナード王国領の実効支配にも影響が出かねない損害であると思うのである」
「つまり、大ダメージ?」
「そうなるだろうな。本国から大規模な援軍でもこない限り、暫くは大軍で攻め寄せてくるということもできまい。我々の活動も相当やりやすくなるだろう」
なるほど。俺が思っていた以上の大戦果だというわけか。
「解放民達はどうなった?」
「大半は本拠点に移動しました。あちらで暫く体を休め、力を取り戻した者から様々な仕事をさせる予定です。希望者には訓練を施し、同志として戦場に立ってもらうことになるでしょう」
「そうか。大半と言ったな?」
「はい、一〇〇名ほどの兵役経験者や元冒険者がここに残り、兵として働くと申し出てきましたので。今は訓練中ですね。あとは足や腕に故障を抱えた者もここに留まらせています」
「なるほど。明日にでも早速治療しよう」
ダナンが俺に視線を向けてきたので、俺は頷いておく。恐らく俺に治療させるためにここに残したんだろう。俺にかかれば四肢を失ったりしていない限りはパパっと治せちゃうからね。
それにしても一〇〇名ほどの兵役経験者や元冒険者か……そう言えば武器を携えた男性兵士の姿がかなり多かったように思えるな。男不足もこれでいくらかマシになるだろう。
サイクスは干乾びてないだろうか? 心配だ。
「本拠点に移った者達については、メルティが上手く差配してくれるだろう。何かあればゴーレム通信機で連絡が来るはずだな?」
「ん、その筈。本拠点との通信は確立済み」
「一応明日にでも私も連絡してみるとしよう」
「そうしてやってください。メルティも姫殿下に会えず寂しがっているでしょうから」
「そうだな。私も暫く顔を合わせていないから、メルティとじっくりと言葉を交わすのも良いかもしれんな」
シルフィがそう言って微笑む。こういったシルフィの自然な笑みは、最初の方は見た人が呆けるくらいに驚かれたものだが、最近は皆も慣れてきたのか自然に受け入れられている。どんだけ自然に笑っていなかったんだね、君は。
「そういえば、コースケから面白そうな提案があるんだ。コースケ話してくれ」
「おお、いきなりだな。わかった」
まず、俺はゴーレム通信機を用いたラジオ放送の構想について話すことにした。本拠点に大出力の通信塔を建てて、専用の魔力波を放って廉価版の受信専用機で広く情報を伝えるという内容だ。俺が提供できるのはあくまでも発想だけなので、技術的な問題はアイラ達研究開発部に丸投げなわけだが。
「ん、技術的には難しくない。本拠点にある脈穴の魔力を使えば遠くまで魔力波を飛ばすのは余裕。中継器の開発も進んでいる」
「ふむ、良い考えであるな。解放民達を安心させ、心を癒やすという発想は素晴らしいことだと思うのである」
「そうだな、色々と使えそうだ」
ラジオ放送に関しては全員が好意的に受け入れてくれた。しかし、問題は次の提案である。
「俺が紙を量産して、木版でビラを大量に刷って主要な街にばらまくという情報戦を考えているんだ。そうすれば、メリナード王国の人達に俺達の活動を手っ取り早く拡散できるんじゃないか? 賛同者をオミット大荒野に誘導することもできると思うんだが」
という俺の提案に対する返答は以下の通りである。
「無理」
「効果は期待できないのであるな」
「無理だろうな」
一刀両断である。何故だ。
「悪くない案だと思うのだが……?」
シルフィも首を傾げている。俺も悪くないと思うんだけどな。その理由はアイラが説明してくれた。
「姫殿下、コースケ。文字を読める人は少ない」
「そうである。平民の大半は文字を読めないのである。しかも、この二十年でメリナード王国民の識字率は更に下がっているのである」
「属国民であるメリナード王国民が教育を受けられる場所が減ったからな」
異世界出身の俺は勿論のこと、王族としてもエルフの里の住人としても教育を受けることが当然であったシルフィにとってもこの世界の平民の識字率の低さというものは全くの考慮外であった。
「……ビラ撒き作戦は凍結だな」
「……そうだな」
ラジオ放送が受け入れられそうというだけでも御の字か……メリナード王国を解放したら教育問題にも対応していかなきゃならないな、うん。
違うんです、BO4のドン勝モードのせいなんです_(:3」∠)_(見苦しい言い訳




