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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の荒野でサバイバル!
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第048話~褐色エルフには黒ゴスが似合う(異論は認める)~

 さて、開発するモノは決まったのだが、実際に開発を進めるのは俺ではなく各魔道士や錬金術師、職人達である。俺の仕事はアイデア出しと、加工や調達の難しい素材や資材の調達、先行量産型のクラフトや、そもそもクラフトメニューに登録できるかどうかの確認役である。

 クラフトメニューに登録できるかどうかとはどういうことかというと、何かしらの重大な欠陥がある道具はアイテムクリエイションでクラフトメニューに登録できないということが実験によって判明した。逆手に取って考えると、新製品に関してはとりあえずクラフトメニューに登録できれば製品としては一定以上の水準があると判断できるということなのである。

 それがわかってから俺は新製品の検品役としての地位を獲得することとなった。職人からすれば喉から手が出るほど欲しい能力だよな、俺の能力って。

 で、まぁ話を戻すとアイデア出しが終わったら俺は暇である。ヒマヒマである。開発について意見を求められることはあるが、先程も言ったように実際の開発は職人任せだ。俺がアイテムクリエイションで開発したほうが勿論早い。圧倒的に早い。そして不具合もまずない。だが、俺が全てやるのはやはり色々と問題がある。

 なので、メリナード王国解放軍(最近そう呼称することになった)が使う装備に関しては、俺は手を出さないということに決めたのだ。

 そういうわけで、俺がアイテムクリエイションを使うのは基本的に俺個人が使用するものか、シルフィが使用するもの、個人的に依頼されたもの、アイテムクリエイション以外では作るのが難しいと思われるもの――つまり銃弾などだが。そういったものに限ることになった。

 今ではクロスボウの矢やバリスタの矢なども本拠点の鍛冶師が生産をしているし、食料や粉挽きも同様、クロスボウやバリスタ本体の製作にも入っていたりする。改良型クロスボウに関しては、肝心の鋼の板バネの制作に手間取っているみたいだけどな。

 話が戻っていないじゃないか! 一体どうなってるんだ!? いや、わかった。認めよう。そうさ、俺は現実逃避をしているんだ。それを素直に認めようじゃないか。


 え? なんで現実逃避しているのかって?


「何故ここに人間が!?」

「話がうますぎると思ったんだ! 一体俺達をこんなところに連れてきてどうするつもりだ!」

「えーん! えーん!」

「大丈夫、大丈夫よ。お父さんたちがいるから」


 阿鼻叫喚である。あれですね? もしかしなくても僕、聖王国の人間だと思われてますね? ほらほら、見てくださいよこのエルフの衣装。民族衣装っぽくてエルフ臭しません? あ、しない? ダメ? そうですか。


「何を騒いで……ってコースケさんじゃないですか。どうしたんです?」


 どうしたものかと困っていると、革鎧とクロスボウ、そして剣で武装した狼獣人の解放軍兵士が声をかけてきた。名前は知らないけど、第五部隊の一員だった人だな。


「いやぁ、俺人間じゃない? なんか聖王国の連中と勘違いされてるみたいで」

「ああ、なるほど。皆さん、落ち着いてください。この方はコースケさんと言って、我々の味方です。聖王国の人間ではなく、異世界からの稀人ですよ。この砦の立派な防壁も、宿舎も、畑も、そして私達の武器も全部コースケさんが一人で作ったんです」

「いやいや、全部ってわけじゃないけどね? 資材の調達は皆に手伝ってもらったわけだし」

「謙虚ですねぇ。ああ、あとこのコースケさんはシルフィエル姫殿下の恋人というか、伴侶でもあらせられます。我々に食べ物と武器と戦う術と安全な拠点、その全てを与えてくれた方でもありますから、何の心配もありませんよ。人格的にも謙虚で、親切で、とても優しい方です」

「そこまで持ち上げられると逆に辛い。俺はそんなにできた人間じゃないんだけど」


 ははは、またまたご冗談をとか言って彼女は全く取り合ってくれない。俺、そんな聖人君子みたいなスーパー功徳人じゃないんですけど。シルフィに惚れて、ただ彼女を助けているだけなんだぞ。

 しかし、俺を警戒していた解放民達はその説明でそれなりに安心したらしく、完全に警戒を解かないまでも敵対的な態度は収めてくれた。これで一安心だな。


「まぁ、その、なんだ。ご紹介に預かりましたコースケです。聖王国の人間どころかこの世界の人間ですら無いんで、アデル教とかクソ食らえなんでそこのところよろしく」


 俺のアデル教クソ食らえ発言に解放民達がどよめく。うん、つかみはオッケーだろう。


「それはそれとして、怪我人や病気の人はいないかな? 昔骨折とかして足や腕が悪くなっている人がいるなら、その人も診るよ。なに、お近づきの印みたいなものだからお代なんかは気にしなくて良い。その代わり、元気になったらその分他の人を助けてやってくれよ」

「コースケさんの治療は確かですよ。私も三年前にオミット大荒野を越えた時に足をやられて、それからずっと足を不自由にしてたんですけど、コースケさんにあっという間に治してもらったんですから」


 おお、この子は俺が添え木の不思議パワーで足を治した子の一人だったのか。なるほど、それで俺をこんなに持ち上げるんだな。それならなんとなくわかる。

 彼女の熱心なヨイショもあって、ポツポツと治療を求める解放民達が前に出てきた。それじゃあ、ということで椅子やハンモックスタンドをインベントリからポンポンと出して野戦病院じみた施設をでっち上げる。


「その白い服は何なんです?」

「医者と言えば白衣じゃない?」

「そうなんですか?」


 この世界では医者だからといって白衣を着るわけではないらしい。そうなのかー、と思いつつも椅子に座り、最初の患者を対面に置いた椅子に座らせる。どうやら子供が風邪気味であるようだ。


「歩いた疲れか、環境が変わったからか……とりあえずキュアディジースポーションと、スモールライフポーションを出しておこうか」


 というわけで、黄金色の液体が入った瓶と、赤い液体の入った小さな瓶を取り出して付き添いのお母さんに渡す。


「ささ、ぐぐーっと飲ませてあげてください。大丈夫、元宮廷魔道士や錬金術師のお墨付きの薬ですから。実際安全」


 急に高そうな薬を渡されてお母さんは困惑気味だったが、これで治るのならと思ったのか子供に二種のポーションを飲ませ始めた。キュアディジーズポーションは紅茶みたいな味で、ライフポーションは酸っぱい味である。あまり美味くはない。飲まされた子供も微妙な顔をしている。うん、わかるよ。


「あ……なんか身体があったかい」


 顔色の悪かった子供の顔に生気が戻り、目の輝きが増してきた。


「身体が温かく感じるのは効いてるってことだな。できるだけ安静にして、しっかりとご飯を食べるように。あと、今日は水浴びは控えてお湯で濡らした布で身体を拭いたほうがいいかもしれん。体を冷やさないように、でも清潔にな」

「はい!」

「ありがとうございます、ありがとうございます」


 お母さんが目に涙を溜めながら何度も頭を下げる。うん、医療の発展していないこの世界だとちょっとした風邪から子供が命を落とすなんてのも珍しくないみたいだからね。

 患者第一号の反応が良かったからか、様子を見ていた他の解放民達もポツポツと治療を求めて進み出てきた。


「身体が辛い人はそっちのハンモックに寝て待っててくれ」


 解放民をサクサクと治療していく。第五部隊の警護は完璧だったようで、移動中に怪我をした人はいなかったようだが、全体的に栄養状態が良くなさそうな感じで、その影響もあってか体調の悪い人が多かった。

 キュアディジーズポーションを投与しつつ、体力を消耗していそうな人にはライフポーションも投与する。それで大体は快復するようだ。

 足を悪くしている人も一人いたので、スプリントを使って治しておく。


「お、おお! 足が! 足が治った! ありがとう、先生!」

「ははは、先生なんて呼ばれるのは過分だけどな。俺の治療はちょっとしたズルみたいなもんだから、他の本当のお医者さんに同じレベルの治療をしろとか無茶は言うなよ」

「ああ、わかってるよ。こんな奇跡みたいな治療は聞いたことがない。錬金術師の魔法薬ってのはよく効くみたいだが、高いしな」

「せやろなぁ」


 錬金術師の魔法薬作りを見せてもらったことがあるが、アレは大変なものだ。俺には魔法を使うって感覚はよくわからんが、物凄い集中力を使って作業をしていたのはよくわかった。薬草を煎じるのにも、潰すのにも、薬液を抽出するのにも多大な労力をかけなければならないみたいだったからな。

 材料セットしてレンジでチンみたいな手間で最上級の回復薬を作り出す俺を見てアイラが拗ねるのもまぁ、わかる話だ。本当に申し訳ない。


「これで全員かな? 他にも体調を崩してたりって人がいるならここにいる間に申し出てくれ。あとはしっかり飯食って、身体を休めて、皆で助け合って行こうってとこだな。俺からは以上。解散」


 解散って言ってるだろ! こら、まとわりついてくるんじゃない! あ、でも小さいネコミミイヌミミにじゃれつかれるのは意外と悪くないかもしれない。へっへっへ、そっちがそう来るなら俺も耳をモフってやるぜ。俺様の美技に酔いな!


 ☆★☆


「はー、疲れた」


 治療を終えた後は解放民のちびっこ達と一緒に追いかけっこをしたりかくれんぼをしたりして遊んだ。いやぁ、童心に帰って遊ぶのも悪くないな。しかしあいつらのフィジカル強すぎない? 足めっちゃ早いしタフ過ぎるわ。

 あと、かくれんぼで臭いを追って見つけに来るのは卑怯だと思う。どこに隠れても速攻で見つかって何でだろう、と思ったら臭いを消さなきゃダメだよーとか言われて愕然としたわ。きっと奴らは将来良いハンターになるよ……。


「子供達は元気だものな」


 テーブルに突っ伏している俺を見てシルフィがクスクスと楽しげに笑う。うん、ニヤニヤ笑顔でなくこういった自然な笑みを浮かべるシルフィは本当に可愛いな。今晩も食べちゃうぞぉゲヘヘ。


「しかしあれだな、やっぱり環境は良くなかったみたいだな。子供はそうでもないけど、大人はかなり痩せてた」

「うん、そうみたいだな。だが、私達の元に来た以上はもう大丈夫だ。しっかりと食事をとって、力を取り戻してくれることだろう」

「男も多かったしな。サイクスの苦労はまだまだ続きそうだが」


 今回の開放民の中には未婚の男性もいた。いたのだが、結局一度は本拠点に後送して体を休めてもらうので、前線の男の数は変わらないのだ。サイクスの受難は続く。


「男性不足か……まぁ、深刻な問題ではあるな」


 シルフィも苦笑いを浮かべる。元々三百人ほどいたメリナード王国民の男女比率はおおよそ1:20くらいだったので、一人の男性が何人かの女性を娶るとしても色々と無理があった。今後も男性が増えてくれれば良いんだが。


「コースケは」

「ん?」

「コースケは、私以外の女性に興味はないのか?」


 シルフィが目線を合わせずにそんなことを言い始める。割と真面目な感じの雰囲気だなぁ。ここは正直に答えるべきだろう。


「アイラは可愛いし、メルティも見た目だけは美人だよな。ピルナ達は俺に純粋な好意をぶつけて来てくれるし、ゲルダはほんわかとした雰囲気が落ち着くし」

「シュメルとジャギラはどうなんだ?」

「その二人は俺に女としての好意を向けているわけじゃないんじゃないかと思うんだが」


 単に気の合う仲間とか、面白いものを提供してくれる相手としてしか見られてない気がする。


「皆可愛いし、美人だよな。でも、俺が好きなのはシルフィなんだよな。他の子に全く興味がないとか、好意を抱いていないって言ったら嘘になるけど、俺の一番はシルフィで、シルフィ以外を欲しいとは思ってないかな」


 もし出会う順番が違っていたら、違う運命もあったのかもしれないけどな。将来はどうかわからんが、少なくとも今は彼女達とどうこうするって時ではないと思う。


「私はあまり女らしくないだろう? 可愛げもないし」

「えっ?」

「えっ?」

「シルフィは何を言っているんだ……女らしさが無いとか可愛げがないとか、アイラとメルティが聞いたらキレると思うぞ」

「そ、そうか?」


 アイラは小柄で大平原だし、メルティは身体つきこそシルフィに迫るナイスバディだけど可愛げがないというかもう怖いからな。もっと深く付き合えばまた違うのかもしれないけど。

 その点、シルフィはもう俺好みのナイスバディだし、料理も上手だし、姫殿下の仮面を被っていない素の性格は滅茶苦茶可愛いし、非の打ち所がないだろう? 強くて頼りがいがあるのもグッドだぞ。男としてはどうかとも思うけど。思うけど!


「どうやら自覚していないようだな……では俺がその可愛らしさを最大限に引き出してやろう」

「な、何を……? や、やめろ! コースケ、だめ……っ!」

「ククク……女らしさが無いとか可愛げがないとか言えない身体にしてやるっ!」


 俺はシルフィに襲いかかった。それはもう野獣のように。抵抗するシルフィを宥めすかし、可愛い可愛いと褒めそやし、涙さえ浮かべて助けを乞うのを心を鬼にして振り切って俺のやるべきことを成し遂げた。


「ほら可愛い! よし、皆に見せに行こうぜ!!」

「無理! 無理ぃ! こんな姿を皆に見せるなんて無理ぃ!」


 俺の手によって黒いゴスロリ風のフリフリドレスを着せられたシルフィが俺の引っ張る力に抵抗しながらイヤイヤと首を振る。うん、凄い可愛い。凄い可愛いんだけど力が強くて引っ張ろうとしてもびくともしねぇ。


「メルティ! メルティー!」

「わー!? よ、呼ぶなぁ!」


 俺が大声で呼んだのが聞こえたのか、メルティが姿を現した。そしてその顔に『ニチャァ……』と擬音がつきそうな笑みを浮かべる。コワイ!


「あらあらあら……これはこれは。お似合いですわ、シルフィエル。これは是非皆に見てもらわないと」

「いやーっ!?」


 メルティが抵抗するシルフィを難なく外に連れ出していく。なんというワザマエ……シルフィの剛力をものともせずに連行するとかどうなってんの? やっぱりメルティが最強なんじゃないかな?

 その後、メルティによって広場に連れ出されたシルフィは最前線砦にいた全員に黒ゴス風のフリフリドレス姿を皆に寄って集って可愛い可愛い美しい綺麗流石姫様と言われまくった結果、心を閉ざして暫く部屋に引き篭もってしまった。


 なお夕飯時にはちゃんと出てきました。可愛い。

大いに認める。全てが正義だ_(:3」∠)_

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― 新着の感想 ―
OBJECTION! Colors like royal purple, navy blue or dark brown would compliment the skin color. Pure …
[一言] うむ、天岩戸は飯で開く。
[一言] 褐色エルフは銀髪とか白髪ならゴスロリ、金髪なら白ワンピースが最強だと思う。
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