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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の荒野でサバイバル!
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第044話~ブループリント機能~

地味に忙しくなってきて遅刻が……ゆるして!!_(:3」∠)_

 一〇〇人の人員とキュービ、シュメル以外の主要メンバーが揃ったということで、本格的な本拠点作りが始動した。いや、作るのは俺なんだけどね? この規模の拠点を人力で作ろうとしたら年単位で時間かかるし。


「いつまでもコースケにおんぶに抱っこではいられないが、最初の一歩だけは存分に力を奮ってもらいたい」

「まぁ、そうね」


 今後街づくりする時も全部俺がやるというのは勘弁願いたい。というか、それは色々とまずい。民の自立性とかそれ以前の問題で、無職を量産してしまうことになる。

 とりあえず一〇〇人ほどの人員を養うだけの食糧生産をしなければならないので、畑を作る。畑に関しては第一次拡張の時点では防壁の中に作る予定である。拠点内に食料を収穫できる畑を囲い込むことによって籠城がしやすくなるからな。水は無尽蔵に使えるし。

 当面の食料に関しては一〇〇人で担いで持ってきた分と、俺がインベントリに入れてある分で賄える。とは言っても余裕があるわけではないので、最初の収穫に関しては早いほうが良い。丸一日を畑仕事に費やすことになった。

 農地ブロックに俺が種を植えた後の世話は民達にお任せである。水やり、収穫、再植え付けとかは人海戦術でやってもらう。


「この面積の作物が三日で収穫可能……いやはや、末恐ろしいのであるな」

「コースケ殿が居ると兵站の概念が壊れますね」


 三日で全員が当分食えるだけの作物が収穫できて、その後も約一週間で同じように収穫ができるわけだからね。すぐに食料庫が溢れるんじゃないだろうか。


「これから人が増えれば消費量も跳ね上がります。計画的な食糧生産が必要です」


 収穫した食料の管理を一手に引き受けているメルティは真剣だ。彼女の差配次第で三百人もの民が餓えかねないのだから、その責任はとても重い。彼女に失敗は許されないのだ。ひもじいのは辛いからね。


「東方面異常なしでした。とくめぼしいものもないですね。明日以降はもう少し先まで足を伸ばしてみます」

「北方面には朽ちた建造物のようなものがいくつかありました。もしかしたら遺跡などがあるかもしれません」

「西方面、ここからでも見えますけどあの山の方面を見てきました。全体的に岩山っぽい感じで、もしかしたら鉱物資源が眠っているかもしれません。いくつか鉱石のサンプルを持ってきました」


 一〇〇人の民のうち、半数近くは戦闘能力のある人々だ。彼らは数人でパーティーを作り、周辺の探索をしている。水と食料は拠点で確保できるので探すのは主に鉱物系の資源や遺跡、その他価値のありそうなものである。


「価値の有りそうなものってなんだ?」


 探索班から上がってくる報告を精査しているシルフィとアイラに聞いてみる。俺? 俺はあれだよ。ちょっと休憩だ。サボりじゃないですよ?


「この辺りだと遺跡だな。荒野の下にはオミット王国の遺跡が眠っていることも多い。殆どは外れだが、稀に財宝などが見つかることがある」

「あとは、精霊力が乱れている影響で稀に精霊力が一つの地点に偏ることがある。そういった場所では特殊な鉱石が採れることがある」

「エルフの里との取引にも使えるし、後々のためにもそういった物資は確保しておくほうが良い。我々にも有用なものだからな」

「錬金術にも魔道具作りにも使える」

「なるほど」


 シルフィの言う後々のため、というのはエルフ以外との商取引を想定しているんだろうな。商人というのは逞しい連中だ。オミット大荒野に眠る資源や財宝、黒き森のエルフが作った品などが取引できるとなれば、俺達が聖王国と敵対しているとしても商売に来る奴が何人かはいるだろう。多分。


 そんな調子で約一ヶ月、俺は本拠点の建設を行なった。


「いやー、なんとかなるものだよな」

「お疲れ様だったな」


 防壁の上からシルフィと一緒に本拠点を見下ろしてしみじみと呟く。

 第一次計画時点での本拠点は500m×500mの防壁に覆われた城塞都市である。

 俺達の目の前には石造りの町――いや、街が出来上がっていた。主な材料は荒野で掘り返した石や岩、あとは砂利などを加工して作った石壁やコンクリートである。見るからに頑丈そうな建物が立ち並んでいるのだが、防壁の内部、その一角にはなかなかに広い畑も広がっている。そこでは何人ものメリナード王国民が額に汗して農作業をしていた。

 また、別の一角からは槌の音なども聞こえてくる。そちらに目を向ければ、いくつかの水車が回っている様子も見えた。あちらは所謂職人街である。あれが形になるまでは俺とアイラ、そして王国民の中に何名かいた魔道士や錬金術師、それに職人達が力を合わせる必要があった。この街には水も食料も安全もあったが、致命的なものが不足していたのだ。


「燃料問題が解決して本当に良かったよな……」

「黒き森から運ぶのにも限界というものがあるからな」


 黒き森からこの本拠点までの距離は徒歩で約三日。馬車とかを使えれば良いんだろうが、そんなものは俺達は持っていないし、黒き森のエルフも持っていない。そして道もない。よって担いでくるしかないのだが、これがまたしんどい。ギズマに襲われる危険もある。

 煮炊きをするのにも暖を取るのにも薪や木炭などの燃料は必須である。これがオミット大荒野ではまず手に入らない。辺り一面岩と土の荒野しかないからね。それを解決したのがアイラと魔道士、錬金術師の皆さんだった。




「煮炊きと暖を取るだけならなんとかできると思う」


 薪の輸送計画について話し合っている時、どちらかというと普段は黙っていることの多いアイラからそんな言葉が出てきた。


「この街は地脈の集結地点、つまり脈穴という場所にある。煮炊きをするくらいの魔力を地脈から捻出するくらいはわけない」

「地脈の魔力をか……しかし、そう簡単にできるものなのか? それはつまり、魔道具を各家庭に配備するということだろう?」

「コースケの協力があれば簡単。ミスリルと銀、あるいは銅の合金を作ってくれさえすれば温熱の魔道具を作るのはさほど手間がかからない。構造も単純。地脈から魔力を吸い上げるのも、既にある結界装置を利用すれば簡単。地上の数カ所に魔力の蓄積機を作って、そこから各施設に魔力を配分すれば良い。これもミスリルを加工すれば小さくても大容量のものが作れる。合金だと少し大きくなるけど、それでも精々小屋ひとつ分くらい」

「なるほど。コースケ?」

「合金にするならその割合と、その合金自体に固有名詞があるならそれを教えてくれれば作るのは難しくないと思う。魔法技術と俺のクラフト能力の融合ってのも興味のあるテーマなんだよな」

「それは確かに興味深い。コースケの能力を調べることにも繋がるし、そろそろ街の方の建設も一段落のはず。成功すれば住人に仕事を提供することにもなるし、研究を進めることを提案する」




 と、そういう経緯があってここ一ヶ月のうちの後半部分はアイラや他の魔道士、錬金術師や職人も巻き込んで色々な道具や加工機械などの開発に力を注いでいた。


「職人街に行ってみるか」

「そうだな」


 防壁を降りて職人街に向かう。今、職人街で作られているものは家庭用の温熱器、クロスボウの矢、刀剣類、農具、包丁や鍋、丸太を加工した板材、その他食器などの木工品と実に多岐にわたる。職人達は魔力式の炉で鉄鉱石から鉄を取り出し、加工し、また水車の動力で回る加工機械で様々な工作をしていた。


「水車も調子よく動いているようだな」

「うん、そのようだ」


 水車動力を使った加工機械はいくつかバリエーションがある。水車動力で動くノコギリ、切削加工を行なう旋盤、炉に風を送るふいご、鍛造用のハンマー、糸車、粉を挽く石臼など、実に様々なものが作られた。今この瞬間も新しい加工機械ができているかもしれない。

 ちなみに、俺の作業台も水車動力を用いてアップグレードすることは可能だった。しかし、水車動力を用いた作業台は残念ながら設置地点から動かすことができなかった。それでは色々と困るので、今は他の方法を模索中だ。

 これだけ多数の水車を運用できるのも無限水源のおかげである。無限水車動力のおかげでこの本拠点では俺が居なくともある程度の生産能力を有すことができている。一つ一つの加工は勿論俺がやったほうが早いものばかりだけど。

 しかし、燃料問題は温熱魔導器でなんとかなるけど、やはり資材としての木材調達をできるようにしないとまずいな。本拠点の外に植林でもすべきだろうか。農地ブロックを使えば多分物凄い速度で木が成長するだろうし。骨が豊富にあればなー、例のチートアイテムを試すところなんだけど。キズマの甲殻はアレには加工できなかったんだよね。


「食料、水、安全な寝床、生産能力と揃えばとりあえずは本拠点に関しては大丈夫そうだな」

「そうだな、コースケの能力に頼らずともなんとかやっていけそうだ。まだまだ足りないものは多いがな」

「本拠点が完成、となると次は前線基地か……俺の本領発揮だな」

「そうだな。そしてその次にはついに作戦開始だ」


 シルフィの瞳が鋭さを帯びる。シルフィにとってはまさにこれからが正念場だな。


 ☆★☆


 前線基地は本拠点から徒歩二日、オミット大荒野の中心部に作られることになった。ギズマによる襲撃なども度々起こったが、いくつもの中継拠点と本拠点を作った経験は前線拠点の設営に大いに生かされることになった。具体的にはこういう形で。


・中級ビルダー――建築ブロックを合計500000個設置する。※ブループリント機能をアンロック。


 最初はよくわからなかった。ブループリント機能ってなんじゃらほい? って感じだ。しかし初級ビルダーのアチーブメントの時点で左右対称モードもブロックまとめ置きが解禁された、ということを考えれば間違いなく建築系の手間を省く系の機能のはずだ。

 俺はメニューを隅から隅まで調べ、ブループリント機能というものが一体何なのか解明した。


「ははははは! これでもう拠点設置なんて怖くないっ!」


 ポンポンポン、とワンアクションで兵舎を設営し、10m単位で防壁を建て、構造が比較的複雑な城門もワンアクションで設置する。城壁を設置する際にも穴を掘る必要すら無く、それらの全てがワンアクションで実現する。

 つまり、ブループリント機能というのは建造物のテンプレート登録と、テンプレートからの設置を可能とする機能だったのである。要は建造物のコピー&ペースト機能のようなものだ。

 頻繁に建てる建造物をブループリントに登録しておけば、素材さえあれば好きな時に一瞬で設置できる。本拠点をまるごとブループリント化しておけば、素材さえあればいつでも好きな時に一瞬で本拠点をまるまんま設置できるのである。やろうと思えば。


「こうしてみると建造物設置って資材の消費がぱねぇっす」

「で、結局は掘ることになるのだな」

「はい」


 設置が楽になっても、結局の所資材は手掘りである。また、初めて作る建造物はやっぱり自分の手で作らなくてはならない。建材となる石や土は荒野の地面を掘ればいくらでも出てくる。堀も作りたいので、堀を作りがてら建材を補充する。

 いつもなら防壁を作る際に穴を掘り、その過程で建材も補充できるのだが、ブループリント機能を使って防壁を設置する場合穴を掘る必要がない。今回は穴を掘らずに設置したため、その分の建材が不足したのだ。


「壁の基礎に押しやられた土はどこに……?」


 アイラが土魔法で防壁の基礎を掘り返しながら頭を抱えていた。うん、掘るのは良いけどちゃんともどしておけよ、それ。

 最前線となる防衛拠点は一辺250m×250mと本拠点に次ぐ規模で、駐屯可能人数はおよそ一五〇〇人ほど。四隅の稜塁にはバリスタを各三基ずつ、二つある城門にも四基ずつ、防壁にも10mほどの間隔で設置できるようにしてあり、合計一一六基のバリスタが設置できるようにしてある。この全てが稼働した場合の総火力は推して知るべしだ。


「これで全然人が集まらなかったら張子の虎だよな」

「確かに、これだけの拠点となると三〇〇人では運用できんな」


 俺の言葉にシルフィが苦笑いする。バリスタの数だけでも最大一一六基なので、一つのバリスタに三人の人員を配置するとなれば、それだけでもう三〇〇人の人手では足りないということになる。今後の解放作戦で人手を確保できなければ折角の防衛拠点もその能力を存分に発揮することができないというわけだ。


「ここをまともに運用するなら、最低でも五〇〇人は欲しいな」

「そうだな……それだけの人数が集まってくれると良いのだが」

「シルフィが旗頭になるなら大丈夫だろう。なんてったってお姫様だもんな」

「……そうだと良いんだがな」


 地平線の先、メリナード王国領の方向にシルフィは厳しい視線を向ける。なんだか自信が感じられない物言いだな。どうにも、シルフィはメリナード王国の姫としての立場をあまり好んでないというか、そんな感じの雰囲気なんだよな。

 エルフの里にいたメリナード王国民はシルフィの事を姫殿下と呼ぶし敬意を持っている感じなんだけど、シルフィ自身はそういったものを向けられることに居心地の悪さを感じているような節がある。

 今まであまり気にしてこなかったが、いよいよ聖王国に喧嘩を売る時期も近づいていている。そろそろ一歩踏み込んで、その辺りの事情を聞いてみるべきかね。夕陽に照らされるシルフィの横顔を見ながらそう思う俺なのであった。

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合金の名称は一般名詞です。
[良い点] いいぞもっとやれ! [一言] ついにModアイテムまで到達か!
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