表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
429/435

第428話~終わりの始まり~

今日は15時過ぎに起きました( ‘ᾥ’ )(大寝坊

 終わりというのは唐突にやってくるものである。


「いや、残念ながら当然の結果というかなんというか、まぁ妥当な結果なんじゃないかな?」

「それはそう」


 ヴァリャーグ帝国の外交官であるキリーロヴィチの言い分に素直に頷いておく。

 ここはメリネスブルグの王城。シルフィ達や俺が過ごしている奥の生活区画ではなく、城勤めの役人の職場や外部からの賓客をもてなしたりする執務区画とも言うべき区画の来賓室である。その来賓室で俺はキリーロヴィチと会談の場を設けていた。前線というか国境で聖王国への対処をしているレオナール卿からとある情報が入ったので、その情報を共有しようと思って彼を呼び出したのである。


「聖王国中央部で聖騎士団によるクーデターが発生。同時に、聖王国西部で亜人奴隷の大規模な反乱が発生。東部にもその兆しありと。結果、アドル教の教会騎士団と聖王国軍、聖騎士団と亜人奴隷達が入り乱れる破滅的な内戦に発展と」

「うちは何もやってないヨー」

「主犯だと思うんですけど」

「もとを正せば主犯は聖王国の聖王サマとアドル教のお偉いサマだろー?」

「それはごもっとも」


 俺の主張に同意したキリーロヴィチが苦笑いを浮かべてお茶を口に運ぶ。この前ドラゴニス山岳王国に行った時に運んできた最高級のドラゴニス茶だぞ。美味かろう? まぁ俺には緑茶っぽいなぁくらいにしか他の茶との違いがわからんのだが。

 ちなみに俺が言った主犯が聖王とアドル教のお偉い様という発言は、今回の事態を招いたのは聖王と教皇や枢機卿連中が行ったメリナード王国への侵攻や、人間至上主義に傾倒した教義を是として亜人への搾取と弾圧を行い続けた結果だという意味である。


「しかし、西部の亜人達が蜂起したのはアレとして、聖騎士団のクーデターってのは全く身に覚えが無いんだよな」


 東部の亜人達が蜂起する兆しを見せているのはヴァリャーグ帝国の差し金だろうが、ここは敢えてスルーしておく。


「聖騎士団は第一世代ですからね。母や父、それに自分達の扱いに不満があったのでしょう」

「第一世代?」

「えぇ。メリナード王国から連れ去られたエルフなどの魔力素養が高い亜人達と、聖王国人達とのね」


 キリーロヴィチの言葉を聞いて納得する。メリナード王国敗戦から二十年と少し。連れ去られた魔力素養の高い亜人達の子供が兵士として、騎士としての力を培うのには十分な時間だ。


「しかし、そんなに酷いのか?」

「酷いというレベルの話ではないですね。亜人としての特徴を幼いうちに『消す』のは当たり前。下手をすれば生まれてすぐにこうですよ」


 そう言ってキリーロヴィチは自分の人差し指の先で自分の首を撫でるような仕草をする。流石にそれは……気分が悪くなる話だな。


「中には敢えて母親や父親の目の前でそうして心を折るような連中もいるらしいです」

「胸糞が悪くなる話だなオイ……えぇ? マジでそんなことを? 手の込んだ自殺みたいなものじゃないか。懐柔したほうが後々を考えれば有用なんじゃ?」

「それはそうなんでしょうが、そういう『戦利品』を手に入れられる立場の聖王国人というのはほぼ例外なく『敬虔な』アドル教徒ですから」

「あぁ……なるほど」


 懐柔するどころか優しく接することすら教義に反するわけだ。あいつらの教義内容的に亜人は虐げれば虐げるだけ徳を積んだことになるからな。俺みたいな立場の人間からすると頭がおかしいんじゃないかと思うが、物心ついた時からそういうものなのだと教育されたらそれが普通だと思うんだろうなぁ。


「当然、そうなると聖騎士達も疎まれているというか蔑まれているわけだ」

「まぁ、そうですね。実際、戦闘能力は非常に高いんですよ。ただ、聖騎士なんて大層な名前をつけられていますが、前線の指揮官には疎まれているようですね。歴史も格式も無く『混ざりもの』だらけの聖騎士団が前線で力を振るうことは稀なわけです。手柄が取られるので」

「全然駄目じゃん」

「駄目なんですよ」


 そもそも魔力素養の高い強力な兵士を確保するためにメリナード王国を滅ぼして亜人奴隷を手に入れたのに、その成果が前線で疎まれて役に立たない上に自分達の首を取りに来たとか笑えないにも程がある。


「なんというか何もかもが裏目に出てるな。案外俺たちが何もしなくても近いうちに帝国との戦争で負けてたんじゃないのか?」

「いずれはそうなっていたでしょう。ですが、聖王国が急速に破滅への道を歩んだ原因はやはりメリナード王国……というかコースケ閣下の存在が大きいと思います」

「なんだ? いきなり持ち上げて。悪いがどんなに魅力的な提案をされても帝国に行くのは無理だぞ」

「それはわかっていますし、帝国は閣下に手を出す気はありませんよ」

「ほんとぉ?」


 苦笑いするキリーロヴィチを追及してみる。こう言ってるが、こいつは腹黒くて信用のならないやつだからな。見た目は爽やかで誠実そうなイケメンエルフだが。


「本当です。というか、帝国は基本的に稀人と敵対するようなことはしません。特別な理由がない限り」

「特別な理由ねぇ? 前にお世話になったけどな」


 前にお世話になったというのは勿論キュービの件である。俺をメリネスブルグまで拉致してくれやがったからな、あいつは。下手すりゃあそこで処刑されていてもおかしくなかったんだぞ。


「それこそ特別な理由があったからですよ。今という結果を引き寄せるために必要な行動だったわけです」

「胡散臭い話だなぁ……まぁこの世界じゃ予言やらお告げやらがあるのが当たり前なのかもしれんけど」


 前にキュービが弁明してたな。ヴァリャーグ帝国の予言者だか巫女だか聖女だかなんだったかが俺を拐ってメリネスブルグに連れて行くように言ったとかなんとか。俺にとっては迷惑な話だが、エレンはエレンでメリネスブルグで運命と出会うとかなんとかいうお告げがあったらしいし、ヴァリャーグ帝国の巫女だかなんだかへのお告げとエレンへのお告げはある程度の一貫性があるように思える。

 その結果俺達はメリナード王国を取り戻し、エレン達アドル教懐古派との融和が成ってこうして聖王国が破滅への道を転がり落ち始めた。前に俺に話しかけてきた時を止める謎の存在も聖王国を叩き潰すのが仕事みたいな雰囲気を醸し出していたし……何らかの大いなる意思というか、超自然的な存在が描いている壮大な絵図の一部になっているかのような妙な感覚だ。運命論とかあまり興味がないんだけどな。


「ヴァリャーグ帝国はこれ幸いと聖王国に攻勢をかけるのか?」

「それは私の口からはなんとも。そちらも同じでしょう?」

「まぁそれはそうね」


 とは言っても今の俺達に聖王国の領土を切り取るような余裕はない。メリナード王国の領地を治めるだけでも手が足りていないのに、この上更に住民が反抗的というか、メリナード王国に良い感情を持っている筈がない土地を奪って自分達の領土とするとか無理ゲーである。そんなことより内政に力を入れたほうがリターンが遥かに大きい。

 というか、土地なんぞ国内でも有り余っているのだ。場合によっては開拓や開発が進んでいる農地や鉱山を戦争で奪ったほうが効率が良いみたいなこともあるのかも知れないが、今のメリナード王国にはそんな選択肢を取る余裕も無ければ理由もない。開拓地も鉱山も俺にかかればいくらでもなんとでもなるからな。


「とにかく、情報は伝えたからな。東側の情報は本国でも手に入るだろうが、西側の情報やら何やらは貴重だろ?」

「それはそうなんですが、見返りに何を要求されるのか怖いですねぇ」

「今の所何も要求する予定はない。仲良くしようぜぇ?」

「そういうのが一番面倒なんですが」


 なんて酷い言い草だ。心からの善意で情報を伝えたのに。まぁ、こうなると今後暫く聖王国の矛先がこっちに向かってくることは無さそうだ。いよいよもって平和になりそうだな。国内は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
さて、主流派に面従腹背していたクローネ枢機卿はどうなったかね? 実はクーデターの黒幕か、それとも出遅れて主流派と一蓮托生か……
[気になる点] >いよいよもって平和になりそうだな。国内は。 国外は? [一言] さて久々に血生臭くなるのでしょうか?
[一言] 宗教としても下の下じゃねえかw 昔は豚食べると病気になりやすいから宗教として禁じた とかそういう理由すら見えねえ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ