第427話~実にくだらない諍い~
エルデンリングに手を出して案の定ご覧の有様ですよ_(:3」∠)_
役に立つかどうかは別として、色々とまだこの世界で作っていないものを作ってみた。まずは自転車だ。これは俺のクラフト能力で容易に作ることが出来た。鉄系の素材からクラフトすることができる機械部品とゴムの代わりになるスライム素材が大活躍である。ありとあらゆる樹脂、ポリマー系素材として使えてしまうスライム素材が万能過ぎる。
「助かるけど大雑把だよなぁ」
機械部品というのもかなり大雑把な中間素材だ。まぁ、俺の能力で作る中間素材は全部そんな感じなんで今更なんだけども。機械部品というクラフトアイテムをインベントリから取り出してみると、鉄っぽい歯車のマークがついた四角いキューブみたいなものなんだよな。これは機械部品そのものではなく、機械部品という概念みたいなものなんだろうか。クラフトで作る火薬とかも材料は黒色火薬っぽいのに普通に無煙火薬としても使えるんだよな……まぁ細かく考えるだけ無駄か。この能力の理不尽さというか不条理さというか常識の通じなさは今に始まったことじゃないし。
「うーん、素晴らしい出来だ」
カラカラと軽快に回る後輪を眺めながらニヤニヤする。クラフト能力を使えば高精度のボールベアリングも作り放題だ。これはいい仕事してますねぇ。
メリネスブルグの研究開発部にもゴーレム式の工作機械をそれなりの数導入したが、まだ完璧な精度のボールベアリングを作るのは難しいんだよな。
などと考えていると、外から扉をノックされた。
「はいよ、どうした?」
「そろそろお食事の時間なので、こちらに食事をお運びしてもよろしいでしょうか?」
ドアの向こうから聞こえたのはゲルダの声だった。
「えっ。いや、普通に食堂で食べようかと思うけど」
「ええと……その、お話し合いが難航しているようなので」
「あ、はい」
話し合いがまとまるまでは接触を最小限にしようという話であるらしい。
俺としてはそんな大事にしなくても良いから頻度と強度を下げてくれればそれで良いんだけどなぁ。愛が……愛が重すぎるんだよ。物理的に。とりあえず回復魔法とか薬を使うのをやめよう。あとメルティとハーピィさん達は自重してくれ。意外に俺に対する扱いが丁寧なシュメル達を見習って。
「それではそのようにお伝えしておきますねぇ」
「はい」
クラフト工房で獣人メイド達に食事を給仕されながら、ゲルダに事情聴取された。ゲルダ曰く、話し合いはかなり紛糾しているらしい。自分達だけで話し合っても埒が明かないということで、食事のついでに俺から事情聴取をするように指示されたのだそうだ。いずれにせよ皆仲良く、とは伝えておいたので致命的な関係悪化などは起こらないでくれると良いんだけれども。
☆★☆
クラフト工房で夜を明かして翌日。
寝室に戻らなかったのかって? なんか今日はクラフト工房に引きこもっていてくれという話だったので、軽く改装してベッドを設置したよ。俺の手にかかれば部屋の改装も拡張も思うがままだからね。特に、研究開発部と俺のクラフト部屋があるこの棟は城の裏手にあった近衛兵の演習場だった場所に俺自身が作ったものだから勝手も知ってるし。
で、話し合いというか情報共有というか会議の結果なのだが。
「薬物、魔法、奇跡類は使用禁止。メルティは暫くコースケとサシで致すのを禁止。ハーピー達には一度に最大三人までという人数制限を設ける」
この決定にメルティとハーピィさん達は当然不服を申し立てた。だが、それを却下したのはシルフィでもなく、グランデでもなく、シュメル達鬼娘であった。
「あんたらは加減ってもんを覚えるまでは自重しなァ」
「人間の男は脆いんすよ」
「魔神種のメルティさんは先達の教えがないから仕方ないとして、ハーピィは……だから貴方達は男に怖がられるのよ」
彼女達鬼人族は割とヒャッハー系というかなんというか、まぁ気に入った異性を連れ去ってお前がパパ(ママ)になるんだよ! みたいな文化を持つそれはもう恐ろしい種族であるらしいのだが、自分達の身体の強靭さと、他種族の身体の脆弱さを知っている。つまり、付き合い方を知っているのだ。結果として。
「とにかく駄目っす。面会謝絶っす。保護者同伴と人数制限が必須っす」
メルティとハーピィさん達はそれでも抵抗したが、話し合いの結果は変わらなかったという。面会謝絶はなんか違う気がするんだが、まぁベラの言うことだし突っ込み始めるとキリがないからやめておこう。
あと、セラフィータさんとドリアーダに割り振られた俺が所管していた仕事に関しては俺の手にある程度戻ってくることになった。ある程度、というのは工場や商業ギルドとのやりとりというか、実務に関しては引き続き二人に担当してもらうことになったのだ。立場的に俺は二人の上に立ってそれぞれが担当している事業をマネジメントしたり、新規事業の立ち上げを担うことになる。
「というわけで今回の沙汰は決着とする」
「ぶー」
「ぶーぶー」
「文句を言っても駄目だ。別に今後ずっとというわけではないから暫くは我慢してくれ」
メルティとハーピィさん達のブーイングを受けながらもシルフィはそう言って話し合いに決着を着けたという。まぁ、暫くは手探りでやっていくしか無いだろうな。俺ももう少し頑張って体力をつけて体質改善を……いや無理だな。死ぬ。
まぁ、こんなある意味でくだらない話題で一日じっくり話し合えるようになったってのは、それだけこの国にも余裕が出来てきたってことなのかもしれないな。その点は良いことなんだろうから歓迎することにしよう。




